社員の健康管理を戦略的に実践することで、経営面でも大きな成果を生むことを目指す「健康経営」は、日本国内でも注目度が高くなり、経済産業省も健康経営のさまざまな取り組みを行っている。健康経営を考える上で、フィットネス製品はどのように企業で活用され、社員の健康管理に役立てられているのだろうか。ウエアラブル活動量計として累計6,000万台を販売し、日本国内でもシェアを急速に拡大している米国Fitbit社でシニアアドバイザーを務める熊谷 芳太郎氏に、米国でのフィットネス製品活用の最新動向や日本の活用事例などについて、話をうかがった。

健康経営で注目されるウエアラブル活動量計

少子高齢化などによって企業の労働力の確保が重要となっている中、企業全体で社員の健康管理を積極的に支援することによって、生産性向上や社員の創造性の向上、医療費削減を実現し、企業価値を向上させて、リスクマネジメントを図ることが注目されてきている。日本国内では、主に経済産業省が先頭に立って「健康経営」を実現させるための施策を行っており、2017年2月21日には、従業員などの健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に取り組んでいる企業24業種の24社を「健康経営銘柄2017」として選定。また、「健康経営優良法人認定制度」の17年度認定法人として大規模235法人、中小規模95法人を選定するほか、2020年までに優良な健康経営を実践する大規模法人500社以上の認定・公開を目指すことを「ホワイト500」という愛称で発表している。

健康経営に取り組むことで期待される効果(経済産業省の「健康経営銘柄2017レポート」より引用)

健康経営を実践する企業にとって、企業環境を整備することや健康づくりのための施策を立てることが必要になるが、そのためには、社員の健康状態を把握し、どのような環境整備や施策を行うのかを考えていく必要がある。そこで注目されるのが、ウエアラブル活動量計の存在だ。ウエアラブル活動量計は、ランニングやマラソンなどの健康ブームで個人が購入して利用しているイメージがあるが、法人向けの健康管理支援サービスやソリューションも登場してきており、健康経営を意識した企業の需要が増えてきているのだ。

数万台単位で企業に導入されるFitbit

米Fitbit シニアアドバイザー 熊谷芳太郎氏

ウエアラブル活動量計として世界トップシェアを誇るFitbitは、2007年に創業して以降、累計6,000万台を販売し、日本でも多くのユーザーが利用している。熊谷氏は「Fitbitは、安価な製品と高額で多機能なスマートウォッチの中間の製品です」と話す。

ウエアラブル活動量計として世界トップシェアを誇るFitbit。画像はfitbit flex 2

Fitbitの特長は、「アプリで楽しみながら使えること」で、ゲーム感覚で測定しながら利用できることだ。「ウエアラブル活動量計は、より健康でアクティブな生活を送れるように動機付けて、日常的に利用できることが重要です。できるだけ機能をシンプルにすることで広く受け入れられ、毎日使ってもらって歩いてもらい、アプリで楽しく測定結果がわかれば、次の日はもう少し歩いてみようということになり、結果的に健康になっていきます」と熊谷氏は話す。

Fitbitには女性がアクセサリー感覚でつけることができるタイプもあり、幅広い層に支持されている

また、米国では、大規模企業がFitbitを数万個単位で導入して社員に配布し、福利厚生の目的と健康づくりに役立てている事例が多いと熊谷氏は説明する。APIを公開することで、企業単位でデータを管理でき、社員1人ひとりの健康状態を管理・モニタできるアプリも提供しており、企業によっては部署間で健康状態を競っているケースもあるという。また、米国の大手スーパーでは、Fitbitを30万台導入しており、従業員の健康状態を管理している。

「企業の導入は、米国だけでなく、日本でも進んでいます。日本人は、アメリカ人に比べてやせている人が多く、比較的健康的ですが、今後は法人でまとめて購入する事例が増えていくと考えています」と話す熊谷氏は、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険が従業員にFitbitを貸与していることや、人材派遣のパソナがFitbitと連携して同社のスタッフや社員を対象にウォーキングコミュニティを立ち上げていること、今後も大きな導入を予定していることを明かしてくれた。

日常的に利用してもらうには電池が課題

Fitbitは、製品によって、歩数計や心拍計などが搭載されており、睡眠の質や量を測定できる機能も提供されている。「Fitbitを使っていて、心拍数が200まで上がってから突然40くらいまで下がってしまい、心配して病院に行ったおかげで助かったといったケースも多数あります。また、睡眠をどれだけとっているかや、しっかりと熟睡できているかを把握することも健康管理のために重要です。昔は、車を運転するときにシートベルトをしている人はほとんどいませんでしたが、現在は時代が変わって当たり前のようにシートベルトを締めています。同じように、将来的にはシートベルトを締めるように、当たり前にFitbitを腕に巻いているようになって、誰もが自然と健康に気を配るようになってほしいですね」と熊谷氏は話す。

毎日利用してほしいからこそ、Fitbitには質の高い電池を採用しているという

一方で、長く使ってもらうには少なくとも3日~5日間は継続して利用できることが重要となり、そのためには品質の高い電池が必要不可欠となると熊谷氏は説明する。Fitbitとしても、電池の持ちを長くするためにソフトウェアの開発に力を入れ、必要以上のディスプレイ表示を行わないようにしているが、コンパクトでデザイン性を損なわないような形状で、電池容量が大きなリチウムイオン電池は大きな課題となっていた。「電池が1日しか持たなければ、睡眠の質や時間を満足に測定できず、ユーザーも毎日付けようとはしなくなります。そこで我々が採用したのが、パナソニックのピン形リチウムイオン電池です。この形状と小ささのリチウムイオン電池は他にはないと考えて、他の電池を使うという選択肢はありませんでした。また、電池で事故が発生してしまうと、製品やブランドの信頼も失墜しかねませんが、信頼性や安全性の面でもこの電池を採用しています」と熊谷氏は話す。

fitbit flex2に搭載されているピン形リチウムイオン電池(CG-320A)は直径3.65mmのスリム形状で、ウエアラブル端末などの設計自由度向上に貢献するという