ビッグデータ活用の幅を広げ、未来を豊かに

技術的にはまず、センサーや通信デバイスのさらなる低電力化技術がポイントになる。低消費電力化のために半導体素子サイズをより小型化したり、低電力作動のための素材やロジック開発などデバイス技術の一層の発展が求められる。また、ワイヤレス通信のためのデバイスの小型化省電力化もきわめて重要な技術だ。

例えばモノワイヤレスが開発した通信モジュール「トワイライト」シリーズは、1円玉より小さなサイズで2.3~3.6Vで駆動し、2.4GHz無線通信機として見通し1kmの通信距離がある。同社ではこのモジュールと振動発電モジュールを組み合わせた無線タグ開発キットを昨年10月末に発売している。

IoTのノードが個々に扱うデータ量はそれほど多くないが、機器には超低電力であると同時にノード数を増やすために超低価格も求められる。これまで求められてきた大容量データを高速処理する通信デバイスとは、開発や製造の根底から異なるテクノロジーが必要なのである。

もちろん、デバイスだけでなく、IoTで扱うビッグデータをどう生かすか、その考え方、言い換えればビジネスモデルが重要なことは間違いない。「モノの情報を単にネットワークにつなぐだけではMtoM(Machine to Machine)にすぎない。IoTとしての機能を発揮するには、情報から付加価値を生み出すビジネスモデルを構築する必要がある」(音力発電の速水浩平代表取締役)。

ただ、EHが実用的になれば、得られるデータの種類が増え、ビジネスモデルにも広がりが生まれる。例えば歩行の振動で発電する「発電床」を開発している音力発電は、このデバイスを利用してフェンス乗り越えやベランダ侵入を感知する防犯センサーシステムを提供しようとしている(図1)。目指しているのは、この防犯情報を地域ぐるみでシェアし、解析することで、犯罪予測などより高度な地域防犯を実現することである。

(図1)発電床を使ったシステム
音力発電が開発。そこで得た情報をビッグデータ解析することで、地域ぐるみでの防犯に役立てられる。

これら防犯や安全、省エネなどのセンサーネットワークは、多数の情報を集約して解析を行うことによって、単なる警報機や通報装置、監視装置としての機能だけではなく、都市管理高度化という未来社会のための重要な役割を持ち得る。つまり社会のインフラとして構築してこそ大きな機能を発揮できる。これに伴って例えばセンサー込みでの建設であれば保険的に有利になるような配慮や、政策面からのインセンティブ付与も必要になりそうだ。

本格的なIoTは、EHの高度化と普及とによってはじめて可能になる。そしてIoTがもたらす利便性や安全性また省エネルギー性は、より快適で持続可能性の高い社会の実現につながる。そのような社会認識が高まるか否かが、今後のEH発展のカギを握っている。

EHのデバイス技術と原理は幅広く、熱、振動、光など、刈り取る元となるエネルギーと、刈り取り方は様々だ。後編では、注目度の高いEH技術と、その未来像について、さらに詳しく紹介する。