第三者による改ざんが極めて難しいブロックチェーンは、トレーサビリティの信頼を高め、情報に新たな価値を与えようとしている。しかし、ブロックチェーンの可能性はそれだけではない。分散型情報管理の特徴を生かすことで、様々なものの取引のプラットフォームにもなり得る。新たな経済をもたらすような、シェアリングサービスや個人間取引のプラットフォームへの活用が期待されている。


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ブロックチェーンは改ざんが極めて困難で高い信頼性を持つプラットフォームを、低廉なコストで構築できる。これによって、医療や農業などの分野では信頼性の高いトレーサビリティを実装した、新たなサービスやビジネスが生まれようとしている。インターネットが、個人でも全世界に向けて発言できるという新しい情報発信のプラットフォームを生み出したように、ブロックチェーンが生み出そうとしている新たなプラットフォームの可能性に注目が集まっているのだ。

ブロックチェーンが対改ざん性や高信頼性を保障できるのは、分散管理という情報の管理手法を利用しているからだ。分散管理は複数のコンピュータ(ノードと呼ばれる)のネットワークによって情報を管理するが、各ノード間はピア・ツー・ピアという1対1で情報のやり取りを行うシステムが構築されている。

そのピア・ツー・ピアのシステム上で実現する、スマートコントラクトのプラットフォームとして期待されているのが、「Ethereum(イーサリアム)」と呼ばれるブロックチェーンのアプリケーションだ。スマートコントラクトでは、取引を行う際に自動的に相手の認証が行われ、取引内容の履歴が全て公開・記録される。このため、虚偽情報によって金銭や物品がだまし取られるというリスクが極度に小さくなる。こうしたことから、シェアリングエコノミーやデジタルアセットなどの分野でも新たなサービスやビジネスが生まれようとしている。

誰でもどんなものでもシェアできるサービス

近年、新しいビジネスモデルとして登場したシェアリングエコノミー。個人でも簡単な登録だけで、自家用車や自宅住居を使ってタクシードライバーや宿泊施設のオーナーになれる。アルバイト感覚で収入が得られることから、既存のタクシー業界や旅行業界をはじめ、さまざまな分野に影響を与えている。

Ehtereumは、こうした仕組みの基盤になり得る。Uber TechnologiesやAirbnbといった事業者の一元管理を、ブロックチェーンによる分散管理に置き換えるわけだ。実際、米国のスタートアップ企業であるArcade Cityは、ブロックチェーンを使った配車サービス提供を目指している(図1)。2018年にサービスを開始する予定である。

既存のシェアリングサービス事業者は、資産や労力を提供するオーナーとそれを利用するユーザーの個人情報を厳重に管理し、料金の徴収と支払いなどのキャッシュフローも管理している。事業者はそれらの管理コストを、利用者から徴収する手数料で賄ってビジネスが成り立っている。この仕組みをブロックチェーンで置き換えれば、個人情報を一元管理する必要がなくなり、データ管理に関わるリソースや人件費のコストを大幅に抑えることができる。

ユーザーからオーナーへの支払いに仮想通貨を利用すれば、会計処理もさらに簡略化できる。これによって、手数料が大幅に引き下げられるだけでなく、シェアリングサービス自体を個人が事業化できる可能性もある。ドライバーの身元も簡単に確認できるので、予約していない通りすがりのタクシーでも安心して利用できるようになる。

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(図1)2018年から本格的なサービスの展開を予定している分散型ライドシェアサービス「Arcade City」
(Arcade Cityのホームページより引用)

少額決済によるエネルギーシェアリング

ブロックチェーンは、電力業界のビジネスにも影響を与える。電力取引のプラットフォームになり得るからだ。

従来の電力供給システムは発電所から家庭への一方通行だった。ただ最近は、家庭用の太陽光発電システム、コジェネレーション・システムなどによって、システムの下流にいる需要家が発電するケースが珍しくなくなり、電気の流れが双方向に変わりつつある。

家庭で消費できなかった太陽光発電の余剰電力は、再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度によって電力会社や新電力が買い取っている。ただ、この電力の売り買いの自由度を上げれば、電力会社に売る価格よりも高く売る、あるいは電力会社から家庭に供給される通常の電力よりも安く別の家庭に販売することができるようになる。

このような電力の取引が可能なプラットフォームの構築は、技術的には十分可能である。問題は、だれがそのプラットフォームを管理・運用するかだ。現状では、電力を買い取り、それを需要者に売る電力会社が、利用者から中間マージンを徴収しながら、取引の仕組みを管理・運用している。しかし太陽光のような分散型エネルギーの発電量は総じて小さく、少額決済が必要になるため、事業者が一元管理する事業モデルでは経済性の確保が難しい。そこで注目されるのがブロックチェーン技術を活用した分散型システム。家庭同士で直接電力を売買できる仕組みである。

米ニューヨーク市のブルックリン地区では、ブロックチェーン技術を活用して近隣住民の間で太陽光発電による電力の直接売買を行うプロジェクト「Brooklyn Microgrid」が進められている(図2)。太陽光発電設備を有する家庭が電力を生産するとスマートメーターがそれを検知し、「エナジークレジット」と呼ばれるトークンが発行される。近隣の需要家はこのトークンを買い取って電力を消費する。売買の記録はブロックチェーン上で自動的に処理・検証される。需要家は「電力価格が一定の電気料金以下になれば、自動的に電力を購入する」というように、あらかじめ条件を設定しておくこともできる。

(図2)Brooklyn Microgridではマイクログリッドを構築するためのワークショップが頻繁に開かれている
(Brooklyn Microgridのホームページより引用)