外出先からオンラインで注文した商品を、その日のうちに帰宅途中の道路で受け取る。すぐに必要なものは、コンビニエンスストアに買いに行くのではなく、コンビニエンスストアの方から家に来てもらう。未来の生活では、欲しいものを素早く確実に手に入れる買い物手段が実現しそうだ。

買い物。私たちの日常で、絶対になくならないものの一つだろう。その買い物と、それに付随する宅配が、技術の進歩とともに大きく変わろうとしている。キーワードは自動運転だ。

ネットショッピングの浸透により、自宅にいながらさまざまな商品を購入することは、ごく当たり前の生活シーンとなった。その影響で、宅配で取り扱われる荷物の数は増え続け、2016年度は累計で約40億個に達した。この宅配件数の急増に伴って顕在化・深刻化してきたのが、宅配サービスの人手不足である。件数の増加に不在の際の再配達、再々配達が加わり、宅配業者・セールスドライバーの負担は一気に膨らんだ。荷物を受け取る顧客側も、商品の到着時刻に合わせて自宅に戻り、到着を待つという、ストレスを感じる日常を受け入れざるを得なくなっている。

一方で、買い物の観点では、地方のみならず都会でも、過疎化によって歩いて行ける範囲にスーパーがなく、車を使って買いに行かないと生鮮食品などが手に入らないという、買い物難民が社会的な課題になっている。

これらの課題解決につながる仕組みとして注目されているのが自動運転である。既に実用化に向けた試みが、国内外で行われている。

ラストワンマイルの宅配サービス

例えば英国では、オンラインで注文した食料品を玄関先まで届けるデリバリーサービスの実証実験が行われた。オックスフォード大学のスピンアウト企業で、通常の自動車を無人運転車にするソフトウエアを開発したOxboticaが、オンライン食料品販売業者Ocadoのインフラを使って実施した。

この実証実験は、TRL(英国交通研究所)が主体となったGATEway(Greenwich Automated Transport Environment)プロジェクトの一環。GATEwayプロジェクトは、ロンドンのグリニッジを拠点にして、自動走行車の市場導入を加速するための取り組みである。目指しているのは、ラストワンマイルのオンデマンド化だ。

Oxboticaが開発した自動運転ソフト「Selenium」は、まず人間のドライバーの運転を学習し、そのデータに基づいて自律運転を実現する。Oxboticaが今回の実験のために開発した自律自動運転車CargoPodは、後部に食料品の入った買い物袋を収納する8つのトランクを搭載してあり、一度に128kgの食料品を運べる(写真1)。

CargoPodが指定された住所に到着すると、食料品の発注者のスマートフォンに通知が届く。あとは発注者がCaegoPodの場所まで行き、トランクのボタンを押して注文した食料品を取り出す。実際には、英国でも現在のところ、無人の自動運転車を公道で走らせることはできないため、運転席には補助ドライバーが乗った状態でデリバリーした。


(写真1)Oxboticaのソフトウエアを搭載した自動運転車両「CargoPod」(Oxboticaのホームページから引用)

同様の取り組みは日本でも行われている。ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸が2017年4にスタートした「ロボネコヤマト」(写真2)プロジェクトだ。1年間、国家戦略特区である神奈川県藤沢市の一部エリアで実証実験を続ける。

実験では、冷蔵機能も持つ保管ボックスを車内に設置した専用EV(電気自動車)車両を使用し、2種類の宅配サービスを提供している。一つは、宅配便の荷物を、受け取り手が希望する時間帯に、希望する場所で受け取れるようにするオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」。配送時間帯を10分刻みで指定できる。駅の出口や道路上などで、依頼から最短40分で商品を受け取ることができるという。もう一つが、地元商店の商品をインターネット上で一括購入し、希望する時間帯、希望する場所に運ぶ買い物代行サービス「ロボネコストア」である。生鮮食品なども購入できる。高齢者などの買い物の利便性を高めるほか、過疎化する地元の商店街を活性化する効果も見込める。

ロボネコデリバリーでは、受け取り手に対して事前にバーコードをメールで送信しておく。ロボネヤマトの車両が到着する3分前に、登録してある電話番号宛に連絡。利用者はメールで受け取ったーコードをリーダーに読ませるか、暗証番号を入力するかして、保管ボックスから自身で荷物を取り出す。ロボネコストアのサービスは、専用のショッピングサイトで地元の加盟店の商品を注文するもので、そこから先の受け取り方はロボネコデリバリーと同じである。


(写真2)ロボネコヤマトの車両(左)とスマートフォンで配送場所を指定するアプリ(右)
(写真はロボネコヤマト提供)

ロボネコデリバリーの狙いの一つは、喫緊の課題となっている配送ドライバー不足の解消と雇用創出である。荷物は基本的に利用者が取り出すため、ロボネコヤマトのドライバーは荷物を玄関まで運んでいく必要がなく、配送ルートもシステムの指示通りに運行すればよい。車両も普通免許で運転できるもので、特に中型免許などは必要ない。このように、宅配ドライバーとしてのハードルを下げることで、主婦や学生でもコンビニエンスストアのアルバイト感覚でドライバーに応募できる環境を用意する。将来的にはレベル3の自動運転など運転支援技術の向上により、ペーパードライバーでも宅配ドライバーになれるかもしれない。

もう一つの狙いが、配送ルートを最適化するスケジューリングシステムの検証だ。集配を効率的に行うには、曜日や天候などによる周辺道路の混雑時間の予測が必要になる。また、EVの充電時間や生鮮食品の冷蔵庫での保管時間など、さまざまな要素を考慮しつつ、次々に入って来る購入注文や配送希望に迅速に対応するには、ディープラーニングなどの手法を使った人工知能(AI)による解析システムが必要になる(図1)。「将来の自動運転社会に適応するためのシステムの検証も重要な課題の一つ」(ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 ロボットロジスティクスグループ マネージャー 田中慎也氏)である。

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(図1)AIを活用した配送スケジューリングの高精度化のイメージ
実験で習得した各種データにより、集配要求予測アルゴリズムや配送計画アルゴリズムを開発する。(ロボネコヤマト発表資料より抜粋)