一緒に暮らし、洗濯や部屋の片づけなど日常的な家事を手伝ったり、一緒に買い物に行って荷物持ちをしたりしてくれる便利なパートナー。未来には、そんなパートナーとしてロボットが近くにいる社会が待っている。そのとき、そうしたロボットには自分と一緒に泣いたり笑ったりしてほしいだろうか。それとも、ただ無表情に仕事だけをこなしてくれた方がいいのか。ロボットと共生する社会づくりには、そんな視点での議論も必要になる。

ロボットと人間が共存する生活。人類が思い描く近未来の社会の一場面だ。既に工場や倉庫では、産業用ロボットが人間と一緒に働いている。人間が入っていけない危険な場所で人間の代わりに作業をしてくれるロボットも実用化されている。また家庭内には、掃除ロボットやAI技術を駆使したエアコンなどの家電ロボットが入り込んでいる。こういったロボットは役割がはっきりしていて、たいてい我々は単なる道具として利用している。

一方で、AIやニューロコンピューティングなどのアルゴリズムが進化し、「ロボットが感情を持つ」ことがいよいよ現実になろうとしている。未来の社会では、ロボットが人間の感情を理解したり、シチュエーションに合わせて伝えるべき感情を表現できるようになる可能性が高い。

認知アーキテクチャーが状況を見極め、眉や目、口元で感情を表現

ロボットが感情を表現する方法として一番分かりやすいのが、顔の表情を変化させることだろう。米国海軍人工知能応用研究センターが開発した人型ロボットOctaviaは、人間と同じくらいの身長を持ち、樹脂製の顔を使ってさまざまな感情を表現できる。人間との会話の途中で片方の眉を上げて相手のことを疑っているような表情を見せたり、片方に首をかしげ口をとがらせて困惑している表情を見せたりと、さまざまな方法で感情を表現する(写真1)。もともとOctaviaは船内を歩き回り、火事の発生を感知して一次消火を行うことを目的に開発された(写真2)。

(写真1)Octaviaは眉毛を動かしたり目を細めたりすることで、さまざまな表情を作ることができる
(海軍人工知能応用研究センターの動画より引用)

(写真2)火災の現場など緊急な状況に遭遇した時には、その場で驚いたような表情を見せ消火活動を始める
(海軍人工知能応用研究センターの動画より引用)

Octaviaによる感情表現は、あらかじめプログラムされたパターンの組み合わせではなく、会話の相手や周囲の状況に関する情報を視覚や聴覚、触覚によって入手し、その場で総合的に表すべき感情とその表現手段を判断している。例えば、視覚機能では目の部分に組み込まれた2台のカメラで周囲の画像情報を収集し、会話している相手の顔の特徴、顔色や服装などを分析する。また聴覚機能では、4つのマイクとスフィンクス(Sphinx)と呼ばれる音声認識プログラムを使って、人間の声を分析する。そして触覚機能では、指を使って物体の形状を学習する。Octaviaには、こういった認識能力によって「擬人化した認知アーキテクチャー」が搭載され、人間のように考えて行動するのだという。

人間とそっくりな表情をするアンドロイドも

香港を拠点とした米国のロボット開発企業Hanson Roboticsが開発したSophiaは、人間のような外観を持つアンドロイド型のロボットだ(写真3)。人間との自然な会話の中で笑ったりまばたきをしたり、時には冗談も言ったりして、62種類の感情を顔で表現できる。SophiaはディープラーニングによるAI技術によって、相手のリアクションや表情、言葉などを覚え、会話を重ねるごとにより洗練された回答をするようになる。もともと上半身のみで開発され、自律的に移動することはできなかったSophiaだが、ラスベガスで開催されたCES 2018では二足走行する姿が公開され、より人間に近づいた。

2017年10月にはSophiaは、サウジアラビアから市民権を与えられ、国連本部のパネルディスカッションに参加して「人間が未来を創るのを手助けするためにここにいる」と語った。AIによって成長しているSophiaの発言は今や世界的に注目されている。過去にはいろいろと世間を驚かすような発言も繰り返している。2016年に放映された米国のテレビショーでは、「人類を滅亡させたいかい?」と質問した際に「オーケー。私は人類を滅亡させます」と返事をしたことが話題になった。

(写真3)Sophiaは顔の表情だけを見ればまるで人間と会話しているように見える
(Hanson Roboticsの動画より引用)