今や日本人の2人に1人がかかると言われる“がん”。治癒率を高めるには、早期発見の確率を高める必要がある。そこで注目されるのが、高度に発達した画像解析技術。鍵を握るのは人工知能(AI)だ。画像解析にディープラーニング(深層学習)を組み合わせ、従来の医師の目視による画像診断では見つけ出せなかったがんの兆候を検出する。既に日ベンチャー企業が先鞭をつけており、決して遠い先の話ではなくなっている。

がんは、いまだ決定的な治療法がない。死亡率は約30%と高く、完治するためには早期発見が必須とされる。このため各研究機関・病院では「いかにして早くがんを突き止めるか」の研究が盛んに進められている。そうした中で生まれた画期的な早期診断方法には、がん細胞が分泌するマイクロRNA(リボ核酸)に着目した血液診断や、犬並みと言われる線虫の嗅覚を生かした尿診断などがある。

一方で、従来と同じ画像診断をベースに、発見の精度を高めようという動きもある。主流はディープラーニング(深層学習)を用いた画像解析だ。

2017年1月には米スタンフォード大学の研究グループが、皮膚がんの診断にAIを活用した(写真1)。米グーグルが開発したアルゴリズムを応用し、ネットから約13万件の皮膚病変の画像を収集し、「メラノーマ(悪性黒色腫)」「良性腫瘍」などをディープラーニングで学習させた。その結果、皮膚科医と同等の精度で皮膚がんを診断できたという。

(写真1)米スタンフォード大学の研究では、AIによる画像診断が皮膚科医並みであることが証明された。 写真は皮膚科医による皮膚スキャンの様子(出典:米スタンフォード大学)

ディープラーニングを用いたがんの画像診断分野では先駆的なベンチャー企業、米エンライティック(Enlitic)は、2014年にAIによる医療用画像診断に着手した。X線、CT(コンピュータ断層検査)、MRI(核磁気共鳴画像法)などの画像データを読み込み、がんをはじめとする悪性腫瘍を検知するソリューションを提供する。解析精度は放射線科医の検出率を約5割も上回るとされ、北米放射線学会の会合でデモを行うなど専門家からも注視されつつある。

米国医学研究所の推計によると、全米では年間1200万件の誤診があるとされる。エンライティックのディープラーニング技術なら、1枚のX線写真で、面積にして0.01%ほどにしかならない微小な腫瘍でも発見可能だという。同社CEOのSally Daub氏が「AI/ディープラーニングによる診断支援は21世紀のヘルスケアだ」とコメントするように、医用画像診断の世界でAIによる手法が比重を増していくことは想像に難くない。