団塊の世代が後期高齢者となる2025年。地域包括ケアシステムでは、施設での介護が在宅介護へと変わっていく。一方で、介護業界は慢性的な人手不足にあえいでいる。だからこそミライの介護には、テクノロジーを駆使した省力化・効率化や、“認知症にならない”予防策が欠かせない。

超高齢化社会に向かう日本。介護のあり方は大きな課題である。専用施設などで介護士などが世話をする従来型の介護は限界を迎え、新たな介護システムが必要になる。カギを握るのは、他の多くの分野と同様、人工知能(AI)などの先進技術を駆使することによる介護モデルのシフトだ。

実際、その方向性は既に見えてきている。各地で整備が進む地域包括ケアシステムでは、自宅でのケアを想定するようになってきている。政府も自立支援型の介護を推進する方針で、「未来投資戦略2017」では「自立支援に軸足を置いた介護」を2025年のあるべき姿としている。

AIがケアプランを作成、ギリギリの介護現場を救う

未来投資戦略には次のような記述がある。

背景にあるのは、約800万人と言われる団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者を迎える「2025年問題」だ。必然的に要介護者の増加が見込まれる中、現状でさえ人手不足に悩み、ギリギリの状態でケアに当たる介護事業者にとってこの未来像は決して絵空事ではない。使えるテクノロジーはどんどん取り込んでいかないと、介護現場で破綻をきたすことが目に見えているからだ。

この「AIを活用したケアプラン」に、実際に取り組んでいるのがシーディーアイである。2017年4月に設立され、長く介護サービスに携わってきた岡本茂雄氏がCEOに就任。産業革新機構、セントケア・ホールディング、日揮などが15億円を共同出資している。

ケアプランは要介護者の状態や要望に基づいた介護サービス利⽤計画。重度化予防や自立支援の手引きといえる。シーディーアイは、基準が統一されている要介護認定項目のほか、ADL(日常生活動作)、IADL(手段的日常生活動作)といったデータに着目。これまでに蓄積してきた、これらの膨大な“介護の経験値”データをAIに読み込ませ、ケアプラン作成に役立てる(写真1)。さらに同社では現場のケアマネージャーらが学習データを入力し、「AIを育てていく」(岡本氏)ことにしている。これにより、将来的には予後予測(自立後の見通し)も加味したプランを作成したいとする。

(写真1)AIケアプランは現場ケアマネージャーが教育する仕組み(日経BPセミナー「医療×AI」の未来のシーディーアイ講演資料より)

シーディーアイとは別の手立てでの介護支援もある。ヘルスケアマーケット・ジャパンの、非常勤のホームヘルパーを対象とした人材マッチングサービス「ユアマネージャー」がそれだ。最寄り駅や自宅近くで空いた時間を活用して働きたいという要望を持つ人たちと非介護者を、Webアプリを通してマッチングする(写真2)。代表取締役の坪井俊憲氏は「現在の介護業務は、必要以上に拘束時間が長いケースがあるなど、業務効率が良くない。ユアマネージャーは、訪問介護したい人たちのマネージメントを我々が代行するイメージのサービス」と語る。自身が介護職員として働いた経験から思いついたアイデアだ。

(写真2)訪問介護ヘルパーを最適な場所・時間にマッチングさせるユアマネージャー。Web管理で効率化を実現(同社の公式ビデオより)

もう一つ、介護の作業負荷を軽減することも、自立介護の支援と言えよう。それを実践しているのが神奈川県である。県内30の介護施設にロボットスーツを試験導入し、負担軽減に一役買ったことを明らかにした。

介護職員は要介護者を抱えて移動することが多く、腰への負担が大きい。そこで神奈川県ではCYBERDYNE(サイバーダイン)の「ロボットスーツHAL 介護支援用(腰タイプ)」を導入した(写真3)。約8割に当たる23施設において、前年度と比較して離職率が下がった。HALは体を動かすときに脳から筋肉へ送られる“生体電位信号”を読み取るため、自分の動くイメージ通りにサポートしてくれる。こうした操作の簡便さも、多忙な現場のニーズに即している。

(写真3)職員の腰への負担を減らすロボットスーツHAL 介護支援用(腰タイプ)

高度なテクノロジーを駆使し、既に省力化を実現している介護施設もある。青森県むつ市の特別養護老人ホーム「みちのく荘」では、深刻な人材不足と介護の質低下の課題を解決するため、介護現場におけるICT化・IoT化を早くから進めてきた(写真4)。

iPadやiPod touchなどモバイル機器を用いて、施設利用者の状況をリアルタイムで共有。利用者に寄り添いながら記録入力ができるため、時間軽減や見守りのリスク回避など業務効率化を実現した。

(写真4)総合的に介護現場のICT化を進める青森・みちのく荘の取り組み(未来投資会議の発表資料より)

そのほかには、利用者の持ち上げ負担をなくすための天井走行リフト、赤外線センサーを用いた居室の予測型見守りシステム、電気使用状況を遠隔で確認する在宅見守りシステム、ネット回線を生かしたインカムでのやり取りなど。ベトナムのフエ医科・薬科大学と提携し、外国人の介護人材育成にも力を入れる。