企業における「健康経営」が盛り上がりを見せている。社員の健康増進や健康管理を経営課題としてとらえ、ヘルスケアに投資して生産性向上を図る新たな経営手法だ。今後は、経済的・社会的な実績と同様に、社員の健康に対する意識が企業価値を大きく左右するようになっていく。そのための支援を事業とするサービスも出てきた。健康が大きなビジネスになる時代は、すぐそこに迫ってきている。

2015年頃からよく耳にするようになった「健康経営」。火付け役となったのは、2015年から経済産業省(経産省)が東京証券取引所(東証)と共同で公表している「健康経営銘柄」だろう。健康経営銘柄は、戦略的に健康経営を実践する全国の上場企業が対象で、誰もが名前を知る有名企業がずらりと並ぶ(表1)。第1回の2015年には22社、第2回は25社を選出。現在は第3回となる「健康経営銘柄2017」を選定中だ。

企業名 業種 備考
住友林業 建設業 初選定
ネクスト サービス業 初選定
アサヒグループホールディングス 食料品 連続選定
ローソン 小売業 連続選定
ワコールホールディングス 繊維製品 初選定
花王 化学 連続選定
塩野義製薬 医薬品 初選定
テルモ 精密機器 連続選定
コニカミノルタ 電気機器 連続選定
東燃ゼネラル石油 石油・石炭製品 連続選定
ブリヂストン ゴム製品 連続選定
TOTO ガラス・土石製品 連続選定
神戸製鋼所 鉄鋼 連続選定
リンナイ 金属製品 初選定
川崎重工業 輸送用機器 連続選定
IHI 機械 初選定
トッパン・フォームズ その他製品 初選定
伊藤忠商事 卸売業 初選定
リコーリース その他金融業 初選定
大和証券グループ本社 証券・商品先物取引業 連続選定
東京海上ホールディングス 保険業 初選定
フジ住宅 不動産業 初選定
東京急行電鉄 陸運業 連続選定
日本航空 空運業 連続選定
SCSK 情報・通信業 連続選定
(表1) 健康経営銘柄2016に選定された25社。上場企業から原則1業種1社を選ぶ

当初、東証ではブランド株の乱立から1回限りの実施と考えていたそうだが、第1回公表後の大きな反響を見て継続を決めた。健康経営銘柄の旗振り役を務める経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課課長の江崎禎英氏は、ある健康経営関連のセミナーで「いざ公表してみたら、銘柄指定された企業はホワイト企業の代表のようになった」とその裏側を語った。

健康経営銘柄は、表面的には日本再興戦略でうたわれている「国民の健康寿命の延伸」に対する取り組みの一環だが、このブランドを冠された企業は大きな恩恵を受けた。過去の選定企業の声を見ると、投資家のみならず就活中の学生にも好評で、企業のイメージアップにつながっているとの意見も数多くある(図1)。「説明会では満員どころか立ち見が出るほどの盛況ぶりだ」(江崎氏)。

(図1)健康経営銘柄に選定された企業の声。経産省が公開した資料より

こうした経緯もあって、経産省では健康経営銘柄2017の選定に合わせ、「健康経営優良法人(ホワイト500)」と名付けた新制度を導入する。対象を上場企業以外に拡大し、2020年までに500社の企業を認定する計画である。

楽しく続けるための戦略的な“仕掛け”が重要

健康経営を実践するには “戦略的”な取り組みが欠かせない。ここで、健康経営に取り組む代表的な企業の例を見てみよう。

1885年(明治18年)創業、通信ケーブルや自動車関連部品、電子部品の製造などを手がけるフジクラは健康経営の先駆的存在だ。同社は2009年から社員の健康増進を社内の重点テーマに掲げ、さまざまな健康活動を行ってきた。2014年には対外的にも「フジクラグループ健康経営宣言」を発表し、“社員が活き活きと仕事をする”ことをテーマに健康経営に取り組む(写真1)。

(写真1)2014年に発表した「フジクラグループ健康経営宣言」(神奈川県主催の「CHOフォーラム」講演より)

健康活動で重要なのは、何よりも持続的な活動であることだ。同社では楽しんで参加してもらうこと、参加することで社員同士のコミュニケーションを活性化させることを念頭に置き、歩数計を携行した歩数イベント、自転車通勤、ノルディックウォーキングなどを実施。例えば歩数イベントでは歩数計のカウントを見ながら、東海道を旅している気分が味わえる「東海道五十三次編」を設定するなど、毎日続けたくなるような仕掛けを施した。

一方、詳細な健康データ分析に基づいて、全社員を健康な層から高いリスクを抱える層まで4グループに分類し、状態に応じた健康支援策を行うなど、きめの細かい健康管理体制を敷く。こうして同社は、社員の健康意識を高めることに成功した。