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誤解するのはもったいない。iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)人気を考える

(2017/03/22)

 今年1月から制度が一部変更され、すべての現役世代が加入できるようになったiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)。厚生労働省によると、1月だけで加入者は8%増え、全体で33万人を超えました。人気の大きな理由は、掛け金から運用、受給時までに渡る、手厚い税制優遇でしょう。

 しかし類似の制度との混同や内容の誤解など、少し残念な場合も見られます。今回は、iDeCoの有利な点と、質問いただくことの多い留意点をまとめてみます。

*記事中の金額を訂正しました(2017年3月23日午前)。記事末に説明を載せています。

♪税制優遇メリット1:掛け金が全額、所得から差し引ける

 まず、「iDeCoってそもそも何だったっけ」という方は、こちらからご覧ください。

iDeCo(イデコ)/個人型確定拠出年金 厚生労働省ホームページ

 iDeCoは、基礎年金である「国民年金」、会社員や公務員が加入して国民年金に上乗せされる「厚生年金」のさらに上に、自分で積み立てる私的年金です。

 生命保険会社の個人年金保険にも税の優遇はありますが、iDeCoはそれと比べても公的年金に近い、大きな税の優遇があります。

  まず、掛け金が全額、所得控除されます。iDeCoは、専業主婦なら月額2万3000円(年額27万6000円)まで、確定給付年金、厚生年金基金などの企業年金のある会社員なら月額1万2000円(年額14万4000円)まで、自営業者なら月額6万8000円(国民年金基金との合計で、年間81万6000円)までというように、掛け金の上限が決まっています。

 この掛け金は、所得税・住民税の計算をする際に、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得額から差し引けます。所得税税率は5〜45%と所得によって異なり、住民税の所得割は一律10%ですが、税金のかかる「元」である課税所得の金額が小さくなる、所得控除は大きいものです。

 もし「絶対に投資は嫌だ」という人がいたら、iDeCoは定期預金も選べますので、節税効果を得るために全額を定期預金として積み立てる方法もあるでしょう。

♪税制優遇メリット2:通常20.315%の税金が非課税

 定期預金の利息、投資信託(投信)や株式の配当金や売却益などからは、税金が引かれています。具体的には、所得税、住民税、期間限定の復興特別所得税合わせて20.315%です。10万円の売却益や配当があっても2万315円が徴収され、手取りは7万9685円になってしまいます。

 iDeCoでは専用口座を開設し、指図した投信、定期預金などを毎月定期的に買い増していきます。老後資金のため、60歳になるまで引き出せないという「縛り」がありますが、それだけの長期に渡り、相場が上がったときも下がったときも、積み立てて(買い続けて)いくイメージです。

 内訳は商品ラインナップの中から変更でき、相場全体が上がって、利益が出たら売ることもできます。配当金が口座に入金されることもあります。このときの税金がすべて非課税ということです。

 投資資金は口座の中で再投資していくしかありませんので「非課税の効果で、配当や売却益がさらに投資を生む」という循環を作りやすくしています。

♪税制優遇メリット3:受給時は控除の対象

 受給年齢に到達したときは、退職金のように一時金で受給したいときは「退職所得控除」、年金として少しずつ受給したいときは「公的年金等控除」の対象となるため、ここでも所得控除が受けられます。

 どの方法で受け取るのが有利かは人によって異なるので、年齢が近くなったら、状況に合わせてプランニングするのがいいでしょう。

 また、必ず60歳から受給しなければならないわけではなく、受け取り方法は70歳になるまでに決めればOKです。そのときに相場全体が下がるような状態になった場合、様子を見る方法もあるでしょう。

よくある質問1:NISA(ニーサ)とはどう使い分けるの?

 愛称を付けて親しみやすくしよう、という試みはいいことですが「耳慣れないカタカナの制度」ということで、混同が多いのは、致し方ないような気もします。

 もし筆者が、「NISA(少額投資非課税制度)とiDeCoってどう使い分けるの?」と子育て世代の友人に聞かれたとしたら、お伝えしたいポイントは下記です。

 iDeCoは「老後資金」という大きな目的があるため原則60歳まで資金が引き出せない、申し込みの際に「いくら拠出します」と決めるなど「いろいろな縛りが多い」イメージ。しかし、掛け金の所得控除まであるのはiDeCoだけ。所得が多くなりがちな働きざかりの家庭の場合、一般的には所得控除を目的にiDeCoを優先して資産配分してもいいのではと考えます。

 一方、NISAの非課税期間は5年なので、比較的近い将来に向けての投資向きといえるでしょう。専用口座を開いたまま放置している人も多いといわれるように、年間1人120万円(成人のNISAの場合。ジュニアNISAは年間80万円までですが、こちらには引き出しの制限期間あり)の枠は、使っても使わなくても自由。

 この自由さは、iDeCoとよいコンビです。臨時収入や、今は使わないお金など、イレギュラーなお金の運用先としても、NISA口座は使えると思います。

 価値が変動する金融商品を、すべて住宅や教育資金に充てるのはリスキーですが、その一部を、iDeCoの場合と同じように毎月一定額ずつ積み立てで投資していく方法もあるでしょう。

 来年からは、「1人年額40万円まで、非課税期間20年」という長期のNISAがラインナップに加わり、通常のNISAと選択できる予定です。

よくある質問2:結局、運用の腕次第なんですよね?

 新聞や雑誌には文字数の制限がありますので、表現がどうしてもシャープになります。iDeCoは「自ら選んだ金融商品の運用成績によって将来の受取額が変わる年金」などとなり、高度なスキルを必要とされているイメージです。

 では実際、どんな「運用」をするのでしょう。

 筆者は、某ネット証券でiDeCoの口座を開いています。最初にしたことは、「日本株」「先進国株」「先進国債券」などに分類された投信(ファンド、という呼び方もします)の運用方針などの目論見書を読み、投資したいものを選んで、「この投信には、月々の積み立て資金の●%」というように、画面の円グラフで自分のポートフォリオを完成させることでした。それを送信して、「運用指図」終了です。

 例えば日本の東証一部上場銘柄の代表的な225銘柄の値動きを示す指標「日経225」に連動する投信を1万円買い付ければ、その金額が225銘柄に分散されているイメージです。投信の本質は、この「分散」にあります。

 予想外のことが起きて大混乱に陥る経験は、私たちも昨年、イギリスのEU離脱、アメリカ大統領選で実感したばかりです。少し前には震災などの災害もありました。そうした事態に備えるため、投資には、あらゆる「分散」が必要だといわれています。

 リスク(変動)や、リスクを超えた不確実性に対応できるように、できるだけ多くのものに投資をしておくと、一部にダメージがあってもどこかが助けてくれることがあります。仕組みそのものが分散している投信を持ち、さらには、ジャンルの違うものに投資している投信を何本も持つことで、さらにリスクの分散を図ります。

 月々積み立てていくことは「期間の分散」になります。経済は波のようなものですから、例えば40歳から60歳までの、240カ月(20年)の中には相場が暴落する「リーマンショック」も、株価が右肩上がりになる「アベノミクス」のようなこともあるでしょう。

 月1万円ずつ、iDeCoで自動的に株価に連動した投信を積み立てているとき、前者のときは相場が暴落していますから、多くの口数が買えます。後者は相場が上がっていますから買うことができる口数は少なくなりますが、相場に連動して資産総額が大きくプラスになっていれば、とりあえず売却して利益確定する方法もあるかもしれません。

 それが「運用」のイメージになるかと思います。少し具体的になったでしょうか。

 「分散」は、ざっくりとであれば「日本株式」「世界株式(先進国・新興国)」「日本債券」「世界債券(先進国・新興国)」、そこに「不動産」を加えるか、加えないか、といったところでしょうか。1本の中にバランス配分を考えた「バランス型」投信もあります。

 勉強は必要ですが、高度な専門性は必要ありません。証券各社が無料で開催している「セミナー」をいくつか回れば、イメージはつかめると思います。また報道によれば、今月末には厚生労働省と国民年金基金連合会による、資産運用体験のスマートフォン向けアプリも配布開始されるとのことです。

よくある質問3:どこで口座を作っても同じですよね?

 「税の優遇」は、コスト軽減、と置き換えることができます。長期の投資をはじめるにあたり、敏感になっておきたいのはコストです。

 具体的には、証券会社にiDeCoの口座を開く際の口座管理手数料、投信の購入手数料、運用の際に資産残高に対してかかる信託報酬といったものです。これはNISAでの金融機関の選択でも同じです。

 いろいろな名前は付いていても、要はすべて「コスト」ですから、長年に渡ってそれを払う価値があるか、チェックしましょう。諸経費を抑えることができるネット証券は、コスト安をセールスポイントにしている場合が多いようです。

♪「大儲けor大損」ではなく、結構地味なコツコツ投資

 国として一定の規模があり、日本円で経済が回っている環境の中では気づきにくいものですが、外国為替市場を見ればわかるように、日本円の価値も変動しています。また日本円の預貯金しか持っていない場合、日本国債の50%弱を持っているのは民間銀行ですので、間接的に国債に投資していることになります。

 見てきたように、「分散」はリスクや不確実性に備える手段ということも認識しておく必要があるでしょう。

 投資というと、なぜか「大儲けするか、投資資金を全額失うか」というゼロサムゲームのイメージが付いていたりもします。ドラマや映画のストーリーとしてはそのほうが好かれるのはわかりますが、実際の投資は、1つの銘柄に全額投資するといったギャンブル的なものではなく、投信を定期的に買うといった、iDeCoのようなコツコツ型の仕組みも多いのです。

 20年で240カ月、10年でも120カ月。地味ですが、「時間」が味方になることにも、気づかれたと思います。このようにさまざまな視点から検証し、自分に合った投資の手段を探していきましょう。

<訂正のお知らせ>

2017年3月23日午前に記事を訂正しました。当初、

まず、掛け金が全額、所得控除されます。iDeCoは、専業主婦なら月額2万3000円(年額27万円)まで、企業型確定拠出型年金のある会社員なら月額5万5000円(年額66万円)まで、自営業者なら月額6万8000円(国民年金基金との合計、年間81万6000円)までというように、掛け金の上限が決まっています。

としていましたが、下記赤字のように訂正しております。お詫びいたします。

まず、掛け金が全額、所得控除されます。iDeCoは、専業主婦なら月額2万3000円(年額27万6000円)まで、確定給付年金、厚生年金基金などの企業年金のある会社員なら月額1万2000円(年額14万4000円)まで、自営業者なら月額6万8000円(国民年金基金との合計、年間81万6000円)までというように、掛け金の上限が決まっています。

********阿部祐子(あべ・ゆうこ)プロフィール

ecomomエディター、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。知っておくと暮らしに役立つ、生活とお金まわりの情報をご紹介します。

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