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時間が味方。コツコツ貯める「仕組み」で長期投資を

(2017/04/18)

 2018年1月からNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)に「1人年間40万円まで、期間は20年」の積み立て型が登場します。金融庁から、対象となる金融商品の指針などが発表になりましたが、初心者が投資の入り口として利用するのに適した制度になりそうです。

 もしかしたら100歳まで生きるかもしれない私たちが、長生きという「時間」を活かして無理なく資産形成をするにはどうしたらいいのか、おさらいしてみます。

♪年間40万円分の投資の売却益や配当が非課税に

 2014年1月から制度開始となったNISA。当初は1人につき毎年、年間の投資資金100万円だった非課税枠がその後120万円になり、2016年1月からは未成年者を対象とした、年間1人80万円までの非課税枠があるジュニアNISAも登場しました。

 「非課税枠」というのは、証券会社などの金融機関にNISA口座を開いて、その口座の中で株式や投資信託の売買を行った場合、売却益や配当金に対して通常かかる20.315%の税金(所得税、住民税と、2037年までは復興特別所得税が加算)が非課税になるものです。非課税の期間は5年となっています。

NISA特設ウェブサイト(金融庁)※現在の内容

 来年2018年1月からは、成人向けのNISAの新しい選択肢として、年間40万円までの非課税枠がある「積み立て型」のNISAが加わることになりました。

 通常のNISAに比べて、非課税で運用できる金額は3分の1ですが、積み立て型の場合、非課税で運用できる期間は20年です。

 例えば2018年に35歳の人が積み立て型NISAをはじめた場合、その年のNISA口座の投資資金は55歳まで、翌年はじめた分は56歳まで、翌々年の分は57歳まで、というふうに、20年の非課税枠は毎年スタートするイメージです。ちなみに「40万円」はあくまでも非課税の上限ですので、40万円フルで使っても、全く使わなくても自由です。

 20.315%の税金は大きいですから、非課税で運用できるNISAは資産形成にはありがたい制度です。しかし、現在の5年というのは長いようであっというまに過ぎてしまうものです。

 金融の、いわゆるマーケットは波のように上下する傾向にあるものですが、確率論でいえば、5年といった中期よりは、20年という長期のほうが、落ち込む時期はあっても、通してみれば、上下のばらつき(金融でいう、いわゆるリスク)は、なだらかになります。

 投資に「絶対」はありませんが、比べてみると投資期間が長いほうが、よりわずらわされることが少なく、忙しい人や初心者向きのスタイルといえると思います。

 非課税額は3分の1ですが、期間は4倍。来年登場の積み立てNISAは、そんな理由から、意外に使えるかもしれません。

♪長期投資の足かせになる「手数料」を抑制

 もう1つ注目しておきたいのが、冒頭でも触れた、金融庁による対象商品です。

 積み立て型のNISAでは、その名のとおり、またNISAに比べて少額な非課税枠からも推測できるように投資信託を一定額ずつ買いつけていく投資スタイルが多くなりそうですが、金融庁は選べる金融商品について指針を出しました。

 積み立て型のNISAとして運用できる金融商品には、長期運用に適した内容であるかといったことや、手数料の上限も結構厳しい条件がついています。

 資産運用というと「何を選んでいいのかわからない」という声をよく聞きますが、積み立て型のNISAのラインナップに入っているのは長期運用に適した金融商品、という線引きはできるかもしれません(もちろん、投資する前には「目論見書(もくろみしょ)」などを読んで納得することが大切ですが)。

♪いわゆる「回転売買」を防ぐために

 近年、金融庁は金融機関に対して、「顧客本位の業務運営」を促しています。それには理由があります。

 金融機関にとって、金融商品を売る際の手数料は重要な収入です。例えば投資信託は「投資信託運用会社」で作られ、金融機関が販売し、投資家のお金は「信託銀行」が保管します。分散させることで、どこか1つが破たんしても、投資家の資産は守られる仕組みになっています。しかし、それぞれがビジネスとして手数料を稼ぐ必要も出てきます。

 たとえば金融機関の窓口で投資信託をすすめられたとします。窓口の担当者はその投資信託を売るだけの立場です。もちろん複雑な説明をするのは大変な仕事ですが、かつては、100万円分の投資信託に、3万円の販売手数料がかかるといったことは珍しくありませんでした。

 ちなみに、人件費などのコストが抑えられるネット証券では、販売手数料を割安にしたり、中にはノーロード(販売手数料無料)の投資信託も増えてきています。中身は同じでありながら、どこで買うかによって販売手数料が異なるのは現在も変わらないようです。

 一部の金融機関では「回転売買(かいてんばいばい)」という言葉も聞かれました。投資信託を買ってもらった顧客に対して、「これからはこの投資信託のほうがおすすめ」といったふうに、持っている投資信託を売るようにすすめ、どんどん新しい金融商品を買ってもらうことです。顧客が乗り換えるごとに、金融機関には販売手数料が入ってきます。

 販売手数料といった初期コストを和らげるためにも、投資信託の資産運用は、基本的には長期で行うべきものです。しかし、望まない営業攻勢をかけて顧客に「回転売買」させるスタイルは、投資の基本から考えて疑問を抱かざるを得ませんし、投資にマイナスのイメージを持つ人を生んでも仕方ありません。

 こうしたビジネスの姿勢は、短期的には儲かるかもしれませんが、長期的には誰のためにもなりません。そこで近年、金融庁が金融機関に対して「顧客本位の業務運営」というくぎを刺しているというわけです。

♪NISAやiDeCoなど、制度の中に長期投資の本質が

 30代でも40代でも50代でも、人生100年にはまだまだ時間があります。現役として働いているなら、月3000円、5000円でも、収入の中から時間をかけて積み立てていけば、まとまった金額になります。

 華やかなネーミングで難しそうな金融商品は数多くありますし、趣味として新しい金融商品や、大きな変動幅を狙う投資を楽しむのはいいと思います。しかし、お金のことがちょっと苦手で、「将来のために、少しまとまったお金があるといいな」ということであるなら、今回触れたNISAや、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)など国の制度をよく見てみましょう。

 これらは、これからいろいろ厳しくなるであろう国の社会保障制度を、1人ひとりがなんとか補完してほしいというものですから、制度そのもの中に、長期投資の本質が見出せると思います。それが投資リテラシーにもつながると感じます。

 加えて「金融機関はどこも同じ、ではない」をふまえて、手数料やサービスに納得できる会社に口座を開く、さらにがんばって非課税口座にも申し込む。ここまでできれば「仕組み」は万全です。

 時間は味方。長期投資の扉をたたいてみてはいかがでしょう。明日からでなく今日からです!

********阿部祐子(あべ・ゆうこ)プロフィール

ecomomエディター、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。知っておくと暮らしに役立つ、生活とお金まわりの情報をご紹介します。

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