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CSR(企業の社会的責任)の視点から銀行を選ぶ~「フェア・ファイナンス・ガイド」1周年

(2015/11/11)

CSRの視点から銀行を選ぶ~「フェア・ファイナンス・ガイド」1周年

 昨年12月、国内の大手金融機関の投融資方針について“社会性”を格付けするウェブサイト「Fair Finance Guide(フェア・ファイナンス・ガイド)」日本版がオープンしました。

 オープン1周年を前に、先週、関係者が集う記念セミナーが開催されました。金融機関を社会性という切り口で調査・格付けし、ウェブサイトで公開する試みは、社会を変えていきそうでしょうか?

♪「気候変動」、「自然環境」、「人権」、「労働」などテーマに各100点満点で得点表示

 フェア・ファイナンス・ガイドの発祥はオランダ。現在ではオランダと日本、フランス、スウェーデン、ベルギー、インドネシア、ブラジルの合計7カ国で展開しています。構築、運営は各国のNGOが行い、日本版は、NGO3団体(A SEED JAPAN、「環境・持続社会」研究センター、アジア太平洋資料センター)が共同で立ち上げ、運営にあたっています。

 金融の分野で格付けといえば、企業業績や財務状況を分析して、その企業の信用力をはかりますが、フェア・ファイナンス・ガイドの調査は「気候変動」、「自然環境」、「人権」、「労働」などの観点で、その銀行がどのような投資・融資をしているか、を見ていきます)。15テーマ、のべ273項目のスコアで格付けしていて、満点はそれぞれ100点。銀行名が並び、スコアはカラフルな色で分けられているので、評価は一目瞭然です。7カ国で同じ調査をしているので、国別での比較をすることもできます。

 世界中でさまざまな環境問題、人権問題が起きています。現場で食い止めようとしても、結局、もとを断たないと問題は解決しません。ではどこから歯止めをかけていけばいいか? その解決の一つが「お金の流れ」です。資金があるからこそ企業は、武器の製造も、自然破壊を招く乱開発も行えるのです。お金の出どころの一つが、投資や融資を行う銀行です。

 銀行は私たちが預けたお金を企業などに融資して、ビジネスを行っています。目先の利益だけで考えれば、お金をきちんと返してくれそうな相手なら、軍需産業でも、環境破壊につながりそうな開発に対してもOKということになってしまいます。担当者は個人としては心を痛めながらも、お金を融資するしかない場合もありそうです。

 しかし、そうしたことが発表されれば世間でのイメージダウンも気になりますし、「そもそもCSR(企業の社会的責任)的にも問題ではないか」と、内部からも「投資基準をもっと考えよう」という動きも生まれてくるでしょう。自主規制が生まれれば、社会問題を引き起こす資金の流れを徐々にストップしていくことも可能になります。

♪大手銀行が再生可能エネルギー企業への投融資額は、化石燃料関連企業の約1/10

 その一例を紹介しましょう。先週11月5日、7カ国の「フェア・ファイナンス・ガイド・インターナショナル」がリリースを発信しました。世界の75銀行を対象に、2009~2014年の化石燃料関連企業及び再生可能エネルギー関連企業への投融資額を調査し、その結果の報告書がまとまったのです。

 世界75銀行の中で、規模の多い上位25行の合計額で見ると、石炭採掘や石油元売りなどの化石燃料関連企業への投融資は9310億ドル(約111兆7200億円)。一方、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー関連企業への投融資はその約1/10程度の金額にとどまっています。

 日本の場合、国内大手金融6グループが化石燃料関連企業に投資や融資を行った合計金額は1246億ドル(約15兆円)。それに対して、再生可能エネルギー関連企業に対する金額は約168億ドル(約2兆円)。およそ8倍の差があることは、翌6日に、大手新聞社が記事として取り上げました。

 両者への投融資額に大きな差があることの捉え方は、私たちの仕事や立場、専門知識によって異なるでしょう。でも「世界でみても、再生可能エネルギーの投資には、化石燃料企業に比べて1/10くらいのお金しか回っていないんだって」という事実は大きなインパクトがありますし、印象にも強く残ります。それが「もっと何とかしなければ」という方向に、私たちの意識を変えていくのです。

 これが銀行1行だけの話では「ほかの銀行はどうなの?」日本国内だけの比較でも「外国はどうなの?」となってしまします。複数国の銀行を同じ基準で格付けする、世界の銀行について同じ基準で調べた調査結果を共同発表する・・・。誰にとっても比べやすい形で公開することに、大きな意味がありそうです。

♪若手を中心に変化する意識。「日本の銀行は変わりつつある」

「大手銀行がかつて、大企業による大規模プロジェクトへの融資を重視してきたことは否めません。でも今の若手は本当にピュアで、金融機関としての社会的な責任を重く自覚していると感じます。銀行は内部から大きく変わっていますよ」と語るのは、大手銀行に勤務して長年に渡って国際金融、コーポレート・ファイナンス、海外戦略策定にあたり、フェア・ファイナンス・ガイドの立ち上げも応援してきた古屋力・東洋学園大学教授(グローバル・コミュニケーション学部 国際社会専攻長兼地球環境コース長)。

 日本版の構築、運営にあたるNGOの1つ「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 「持続可能な援助とプログラム」コーディネーターの田辺有輝さんは「日本では大手7銀行のスコアを付けているのですが、スコアが低かったある銀行が人権配慮方針を改定して点数を改善させました。ほかにも改善に取り組んでいる銀行が増えています。サイト上の他の国と比べるとわかるように、日本の銀行にはまだ改善すべき点は多いのですが、スコアを公開し、担当者とNGOが話し合うことで、少しずつ成果は上がっています」と1年を振り返りました。

 フェア・ファイナンス・ガイドのウェブサイトには「あなたの意見、感想を直接銀行に届けよう」として「『いいね!』もっとよくしていこう」「『よくない!』改善してください」「口座を変える(別の銀行に移す)」といった、率直な意見を担当者に届ける機能があります。

「私たちは、『自分一人が意見を言っても、何も変わらないだろう』と、はじめからあきらめてしまいがちです。でも銀行の担当者はとてもていねいに内容を読んでいます。日本版へのメッセージはまだ約100件と、他国に比べて少ないのが残念ですが、個人の声もきちんと伝わっていることを知ってもらえればと思います。要望があれば、ぜひメッセージを送ってください」(田辺さん)

 銀行選びは「家の近所に支店があるから」「手数料が安いから」といった利便性重視になりがち。でも少しずつ「預けたお金がフェアに使われるから、この銀行を選びました」という価値観が定着していってほしい――が関係者の願いです。2年目を迎える「フェア・ファイナンス・ガイド日本版」に今後、どんな展開があるのか楽しみですね。

Fair Finance Guide(フェア・ファイナンス・ガイド)」日本版 http://fairfinance.jp/
A SEED JAPAN  http://www.aseed.org/
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)http://www.jacses.org/
アジア太平洋資料センター(PARC)http://www.parc-jp.org/
********阿部祐子(あべ・ゆうこ)プロフィール

ecomomエディター、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。知っておくと暮らしに役立つ、生活とお金まわりの情報をご紹介します。

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