Topics

2020年に1000円!?「最低賃金」アップで暮らしは変わる?

(2015/12/08)

 11月26日、政府は「一億総活躍社会」に向けた緊急対策を発表しました。計100万人分の保育・介護施設の整備のほか、働く私たちの目を引くのは「最低賃金を毎年3%程度ずつ引き上げ、2020年頃に1000円にする」という金額を掲げての目標です。
最低賃金という言葉はニュースなどでよく聞きます。賃金が上がるのは嬉しいことですが、喜んでいるだけで大丈夫? まず「最低賃金って何?」から見ていきましょう。

♪月給の場合、「月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」

 国は、最低賃金法という法律にもとづいて賃金の最低額(最低賃金)を決めています。最低賃金には都道府県ごとの「地域別最低賃金」と、それより高い最低賃金を定めることが必要とされる産業についての「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
10月から適用されている2015年度の「地域別最低賃金」の全国平均は798円。前年度に比べて18円アップになりました。最も高いのは東京都で907円、最も低い鳥取、高知、宮崎、沖縄では693円となっています。
ちなみに、一時期「最低賃金で働く人の手取り額よりも、生活保護の給付金額のほうが多い」ことが問題になりましたが、昨年度に解消しています。

 最低賃金よりも安い金額で契約していたらどうなるのでしょう? その場合は最低賃金で契約したとみなされ、労働者には差額を払ってもらう権利があります。また地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合、使用者には罰金が科せられます。
 正社員のほか、パート、アルバイト、臨時、嘱託、など、いろいろな雇用形態、呼び名がありますが、すべての労働者に地域別最低賃金が適用されます。このように、私たち労働者は最低賃金制度によって守られているといえます。

 気になる計算方法ですが、時給の場合は最もシンプルで、

時間給≧最低賃金額(時間額)

 となります。では月給の場合はといいますと

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 です。自分の給与で確かめてみるときの注意点ですが、まず、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金で、残業代やボーナスは含まれません。その分は計算から外しましょう。
派遣労働者の場合は、派遣先の最低賃金が適用されます。例えば、千葉県の派遣会社で派遣登録して東京都の企業に派遣されている人なら、東京都の最低賃金が適用されます。

♪最低賃金を毎年3%程度ずつアップ、2020年頃には1000円に!?

 全国平均で798円の「地域別最低賃金」が年3%ずつアップすると、2020年代の前半には1000円を超えます。政府の目標は、全国平均で1000円を超えることです。
賃金は通常、経営側と労働者側が話し合って決めます。最低賃金の水準についても、労使それぞれの代表が厚生労働省の「中央最低賃金審議会」で議論を重ねて目安を決め、地方の審議会が地域ごとの最低賃金を話し合うという流れになっています。アベノミクス以降、政府は賃金を上げるように促していますが、これは異例のことです。

労働者の権利を守るのは大切なことですし、賃金が上がるのは嬉しいことですが、もし自分が雇う側だったら? それほどもうかっていないのに人件費だけが上がってしまったら、人を雇いたくても雇えない状態になってしまいます。売り上げもアップしていく、というバランスが大切です。
賃金が上がれば、人々は預貯金だけでなくお金を使うようになる、同じく「緊急対策」でも掲げた「省エネルギー性能に優れた住宅・建築物、次世代型自動車」なども買いやすくなるし、高い目標である「名目国内総生産(GDP)600兆円」にも近づける、といった、今の政府が描く「強い経済実現」に結びついていきます。小規模な企業も含め、全体が少しずつ潤い、賃金も無理なく上げられる状態を作っていかなければならないでしょう。

♪大きな波を理解して、個人レベルでも「経済成長」に備える

 日銀が2013年1月に定めた「消費者物価の前年比上昇率2%」とする物価安定の目標をはじめ、賃金アップも「長く続いたデフレから脱却して、経済成長していく」流れの一つです。賃金もアップし、物価もアップする、金利もいずれ上がっていく、という状況のなかで、個人にできることは、世の中の変化に対応していくことでしょう。
 別の機会に触れますが、政策の一つとして女性活用も進むなか、働きたい女性にとってはチャンスですし、自宅に現金をしまっておく「たんす預金」では実質的な資産が目減りしてしまう現状をふまえ、非課税制度を利用した資産運用の勉強をはじめてもいいでしょう。
 「一億総活躍社会の実現」に向けた政府の緊急対策は、わかりやすい言葉で書かれ、インターネットでも検索できます。新年からの生活を考えるのにぴったりな年末年始を前に、自分のキャリアプラン、マネープランと照らし合わせながら把握しておくのもおすすめです。

・・・・
厚生労働省「最低賃金」特設サイト ※2016年3月31日までの期間限定
http://pc.saiteichingin.info/

********阿部祐子(あべ・ゆうこ)プロフィール

ecomomエディター、ファイナンシャル・プランナー(CFP)。知っておくと暮らしに役立つ、生活とお金まわりの情報をご紹介します。

▲ページTOPへ