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【ニュース&トレンド】: 2016年7月号

世界18億人のムスリム市場開拓に動く着物業界

グローバル展開

2016年7月15日(金)

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(左)ツカモトコーポレーションがドバイで開催された「アラビアン・トラベル・マーケット」に出品したアバヤとヒジャブの中で人気の高かった4着。大輪の花で埋め尽くしたり金箔をプリントするなど豪華絢爛で派手な柄に人気が集まった (右)ふく紗はジャカルタで開かれた「インドネシア・ファッション・ウィーク」に出品。ファッションショーでは10点以上のアバヤ、ヒジャブがランウェイに登場。特に淡いピンク地に桜の小柄をあしらったアバヤは大人気だった

 ツカモトコーポレーション(以下、ツカモト)やふく紗、加地金襴といった着物関連の企業が、海外展開としてイスラム教徒(ムスリム)市場を開拓しようと動き始めている。

 ツカモトは、2016年4月下旬にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた中東最大の旅行博「アラビアン・トラベル・マーケット」にブースを出店。振り袖用着物の生地を、ムスリムの女性が外出時に顔と手の先以外を覆う「アバヤ」や髪を隠すときに身に付ける「ヒジャブ」に仕立てて展示した。中東では黒色の生地が使われる例が多いが、着物で作ったアバヤやヒジャブは花柄や金箔があしらわれ、派手な外観になった。ブースでは女性客を中心に「これは何?」「いくら?」「一緒に写真を撮らせて」と注目を集めたという。扇谷英二・経営企画部長は、「アバヤは丈はくるぶしまで、袖は両手が隠れる長さで、ふくよかな方もやせた方も同じ服を着ることができる。まさに着物と同じ。着物とアバヤはたいへん親和性が高い」と話す。

 アラビアン・トラベル・マーケットを機に現地ブティックとの商談も進んでおり、今秋をめどに販売する計画。まず富裕層向けを狙い、日本円換算で5万~10万円と現地のアバヤの価格としては高級品に相当する商品を投入する。このほか安価なポリエステル製も検討中。9月に同国で開催される米ヴォーグ誌主催のファッションショーへの出品も決まるなど注目度は高いようだ。

 中東だけでなく、7月にマレーシアのクアラルンプールでも11日間の期間限定で出店したり、インドネシアでも8月末にファッションショーを開催する計画。両国とも販売時期は未定だが、インドネシア向けには現地の平均的な価格に併せ、アバヤの場合は日本円換算で5万円以下の価格帯を考えているという。

 「中東ではまだ黒色のアバヤが中心だが、同じムスリムでも南アジアや東南アジアの方が、着物のカラフルな色や柄が受け入れられやすいようだ。今後はカナダなど北米のムスリム市場にも手を伸ばしていきたい」(扇谷部長)。

 着物の生地を使った婦人衣料品や小物を製造販売するふく紗(愛媛県松山市)は3月、インドネシアのジャカルタで開かれた同国最大のファッションの祭典「インドネシア・ファッション・ウィーク」に参加し、オリジナルのアバヤやヒジャブを展示した。「2億5000万人の9割がムスリムである上、親日的な国民性で着物地が受け入れられやすいと考えた」と伊東信二・社長はインドネシアを狙った理由を話す。

 ファッションショーでは若干、派手目ながらも日本の伝統的な柄の生地を多く持ち込んだ。中でも小柄な桜柄が人気を集めたという。展示ブースには一般客のほか現地の同業のファッションメーカー、百貨店、モール、小売店などの経営者、ネット通販業者などが押し寄せ大盛況だったという。今後、精査してビジネスパートナーを選択したいという。本格参入に向け、最初に富裕層をターゲットとした絹地の高級アバヤのブランドを確立する。価格は日本円換算で10万円前後を想定している。

 「高級品のほかに別ブランドで、現地の生活レベルに応じて(日本円換算で)2万円台のアバヤのカジュアルブランドも立ち上げ、富裕層向けと一般向けの2ブランドで展開する。ヒジャブでは着物地以外の和素材の商品も開発していく予定だ」(伊東社長)。