日本イノベーター大賞2011
日経BP社は2011年「第10回日本イノベーター大賞」の受賞者を決定しました。
日本イノベーター大賞は、日本の産業界で活躍する独創的な人材にスポットを当てることにより、日本に活力を与えようと2002年に日経BP社が創設した賞で、今年が10回目となります。
地球温暖化問題を含め、環境、エネルギー問題は待ったなしの解決を求められています。こうした中、人口減少、少子高齢に直面する日本が今後も力強く、持続的成長を実現していくためには、将来を支える新技術や新しいビジネスモデルの誕生が期待されています。春以降、世界に通じる新しい価値を創り上げたことによって、今の日本に活気をもたらした人を幅広い分野の中からノミネートし、このほど選考委員会を開いた結果、4名の方に賞を差し上げることに決定しました。
なお、表彰式は12月2日(金)午後5時から、グランドプリンスホテル高輪(東京都港区)で行います。


1両も脱線することなく安全神話を守った東北・上越新幹線。激しい揺れに負けず高さ世界一を達成した東京スカイツリー――。東日本大震災で日本の安全技術の高さを実証したこの2つの建造物には、ある共通の部品が使われています。大阪府東大阪市に本社を置くハードロック工業の「ハードロックナット」です。
通常のナットと異なり、どんなに強烈な振動でも緩まないのが特徴です。同社の若林克彦社長が「くさび」の原理を応用し38年前に開発しました。今では世界中でその安全性が評価され、英国やドイツ、台湾の高速鉄道をはじめ、橋梁や大型ビルなど様々な建築物に採用されています。
若林社長は、自ら開発した独自部品によって「メード・イン・ジャパン」の実力を改めて世界に知らしめたとして、2011年日本イノベーター大賞に選ばれました。
ニックネームは「東大阪のエジソン」。幼少の頃から発明に目覚め、それまで世の中にない様々な新商品を開発してきました。
見本市で緩みにくい「戻り止めナット」を見かけたことをきっかけに、「絶対に緩まないナット」の開発を志したのは27歳の時です。
ナットの形状や仕組みを徹底的に工夫。ついに、ナットとボルトの間にくさびを打ち込んだのと同じ緩み止め効果の実現に成功したのは40歳の時でした。
「鉄道、高速道路、橋梁、鉄塔…。ナットが絶対に緩んではいけない建造物がある限り、我が社の商品は今後もお役に立てると思っている」。若林社長はこう話しています。


「2位じゃダメなんでしょうか」。2009年11月、民主党政権の事業仕分けで蓮舫参院議員にこう指摘され、理化学研究所と富士通の「次世代スーパーコンピュータプロジェクト」は一躍有名になりました。
“蓮舫発言”から約1年半。理研と富士通が開発したスパコン「京(けい)」は今年6月、毎秒8162兆回と2位の中国に3倍以上の差をつけて演算速度世界一を記録。2004年の「地球シミュレーター」以来、約7年ぶりに日本のスパコンが世界一に返り咲きました。富士通 常務理事の井上愛一郎氏は、富士通側の開発責任者として、チーム作りなどで重要な役割を果たしました。
東京大学工学部を卒業後、機械エンジニアとして働いていた井上氏は「もともとコンピューターは好きではなかった」と言います。26歳で転職した富士通では当初、メーンフレームという言葉の意味さえ知らなかったそうです。
そんな井上氏がプロセッサー開発にのめり込むようになったのは、上司の力によるものでした。自由と責任を与えられ、「自分の力のすべてをプロセッサーの開発にぶつけられた」と井上氏は振り返ります。
同じ経験を積んでもらおうと、井上氏は京の開発に当たり新入社員を含む若手技術者らを積極的に登用しました。京の開発に携わった技術者は富士通側だけで延べ1000人。井上氏という新たなリーダーの下に集まったこうした若い力も、演算速度世界一という偉業の大きな原動力となりました。


世界では「食の不均衡」が深刻化しています。発展途上国の人々が飢餓に苦しむ一方で、先進国では生活習慣病や肥満に悩む人が急増中です。
この2つの問題を解決するため設立されたのがNPO法人(特定非営利活動法人)である「TABLE FOR TWO International(TFT)」です。2011年日本イノベーター大賞優秀賞に選ばれた小暮真久氏は、2007年にTFTの立ち上げに参加し、現在は代表理事を務めています。
具体的な方法はこうです。まず、企業の社員食堂や学校の食堂、レストランなどでTFTのガイドラインに沿ったメニューを提供してもらいます。その代金には寄付金20円が上乗せされており、アフリカの子供たちの給食費に充てられます。20円は開発途上国の1食分の給食費に相当するため、TFTメニューを1食食べた人は、自動的に発展途上国に1食を寄付したことになります。
TFTのメニューとして提供するのは、通常よりカロリーを控えたヘルシーな料理です。「カロリーが730kcal程度であること」「栄養バランスが適正であること」「野菜が多めであること」の3つの基準を満たす必要があります。TFTメニューを先進国の人々が食べれば、飢えに苦しむ発展途上国の人々を助けるのと同時に、自分の健康増進にもつながる、というわけです。
現在、TFTプログラムには国内から450を超える団体が参加。アフリカへ提供した給食は2007年から4年間で累計1200万食に達する見通しです。その活動は日本から世界へと広がり、米国や台湾など、世界5カ国・地域へ活動の輪は広がっています。


2011年、なでしこジャパンの快進撃は、東日本大震災で悲嘆に暮れる日本に希望の光をもたらしました。日本サッカー界初の世界制覇となる女子ワールドカップの優勝に続き、2012年にロンドンで開催されるオリンピックの出場権も獲得。日本中の期待に応えました。
日本イノベーター大賞の選考委員会は「快挙の原因は、ピッチ上で躍動した選手のみならず、彼女たちを率いた佐々木則夫監督のリーダーシップ、チーム作りにある」と判断。佐々木氏に特別賞の授与を決めました。
「佐々木氏のマネジメント力、女性活用術は企業経営にも通じる。特に優れているのは共感力。選手の声を聞いて共感する能力は、市場と共感しなければいけない企業にも必要不可欠だ」。審査員の1人で、佐々木氏の手腕を高く評価したバンダイの松永真理取締役はこう強調します。
現在の大宮アルディージャの前身であるNTT関東サッカー部でプレーし、1981年には社会人大会で全国優勝を経験。33歳で現役を退き、指導者になりました。2006年1月からサッカー女子日本代表のコーチに就任し、2007年12月から監督を務めます。
佐々木氏が監督となって以来、チームは世界一への階段を1段ずつ上っていきました。2008年に東アジア選手権を3戦全勝で優勝し、同年の中国・北京オリンピックではメダルを逃すも4位と健闘。そして今年、世界の頂に立ちました。
なでしこの活躍と佐々木監督のマネジメントには、日本人がより強くなるためのヒントが隠されています。
【選考委員長】小宮山 宏 三菱総合研究所理事長 |
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【選考委員】
敬称略、順不同 |
日経BP社日経ビジネス
「日本イノベーター大賞」係
〒108-8646 東京都港区白金1-17-3

(担当:鈴木、白壁)




