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パナソニックの喫緊の課題:クラウド技術をビジネスに取り込め!

『パナソニックの選択』の著者に聞く

2012年8月27日(月)

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 日本の家電産業は復活できるのか? クルマと並んで日本経済を支えてきた同産業の動向に注目が集まっている。中でも、その雄であるパナソニックから目が離せない。

 『パナソニックの選択――「環境で稼ぐ」業態転換の未来』をものしたフランシス・マキナニー氏に、同社の今後の展望について聞いた。
(聞き手は大野和基)

問:マキナニーさんは長い間、パナソニックのコンサルタントをしていらっしゃいます。

カナダのトロント大学で経済を修める。その後、経営コンサルタントとして活躍。日本企業向けにも多くのアドバイスをしてきた

マキナニー:1995年からですから、非常に長い期間アドバイスしていることになります。私は1993年に、『日本の弱点―アメリカはそれを見逃さない』という本を出しました。当時ニュージャージー州シコーカスに赴任していた、松下電器産業(現パナソニック)のカーク・ナカムラ(中村邦夫)氏がその本を読み、アメリカでの経営についてアドバイスを求めるため、部下を私の元に寄越したのです。

 中村氏は日本に帰ったあと社長になりました。私は彼が社長になってからもアドバイスをし続けました。そして現在、大坪文雄会長にもアドバイスしています。

 恐らく、わたしはパナソニックの中にいる多くの人よりも、パナソニックについて知っていると思います。「ガイジン」というユニークなポジションにあるので、非常に深く観察することができます。

パナソニックが経験した3つの転換期

問:パナソニックの、この15~20年における転換期をどこにあったと思いますか。

マキナニー:大きな転換期は4つあったと思います。一つはカーク・ナカムラ氏が社長の時。ポスト松下幸之助の時代(post-Konosuke Matsushita era)が終わり、グローバルな観点から会社を設計し直す大きなチャレンジをしました。これをモダン・パナソニック作りと呼びましょう。

 2つ目はカーク・ナカムラ氏が会社にもたらした物理的な改革です。世界中にある松下系企業の社名を「パナソニック」に変更。ブランドスローガンを「ideas for life」に統一しました。やることがあまりにも多く、全部は実現できませんでした。

 3つ目の大変化はグリーン革命への対応です。地球温暖化は人類の生存にかかわるものです。これに対応する製品やサービスの市場は、歴史上、最も大きなものになるでしょう。これは、会社全体の在り方をゼロから考え直す作業です。

 この3つが、過去に起きた転換と、今起きている転換です。4つ目は、今起きかかっている変化です。クラウド・コンピューティング時代の到来です。これが4つの転換の中で最大のものとなるでしょう。パナソニックがこれにどう適応するか、本当に大きなチャレンジになります。会社の将来を決定する要素になります。

クラウド・コンピューティングへの対応が喫緊の課題

問:今はまさに、クラウド・コンピューティングの揺籃期ですね。

マキナニー:その通りです。アップルが提供するiCloudの仕組みは間違いなくそうです。ただし、世界の中で、本当のクラウド・コンピューティングと私が呼べるものはまだまだ少ない状態です。

 企業は、クラウドで変貌する企業と変貌しない企業に二分されます。クラウドで変貌する企業は将来のクリエイターになりますが、変貌しない会社は、途中で挫折します。

 パナソニック、ソニー、韓国のサムスン、LGのようにクラウド志向になっていない企業は、これから非常に困難な時代に入る。クラウドに適応することが、今、非常に重要なことなのです。

問:日本のビジネス界はクラウドの力について過小評価していたと思いますか。

マキナニー:過小評価どころか、無視していたと思います。クラウドを真剣に考えている日本人に会ったことがありません。クラウドについて考えもしない人ばかりです。

電気自動車は有望分野

問:第3のグリーン革命に関連して、パナソニックは電気自動車に力を入れていますね。

マキナニー:2008~2009年からだったと思います。

 電気自動車の場合、一つ重要なことがあります。電気自動車はガソリン車より低い温度の状態で走ることができます。ガソリンを爆発させると非常に高温になりますから。電気自動車には、この必要がない。

 パナソニックは低温作動のスペシャリストなので、電気自動車に使える多くのものを作ることができます。例えばオーディオビジュアル、カーナビなどです。

 その他、モーターやエンジン、バッテリーなど、もっと大きな部品にもパナソニックは潜在的な力を持っています。米電気自動車ベンチャーのテスラ・モーターズと電気自動車用電池の分野で共同開発をしています。

経営陣の35~50%が女性になる

問:パナソニックの業績は依然として苦しい状態にあります。将来、好転すると考えますか。

マキナニー:好転するかどうかは誰にもわかりません。確実な将来というものはありませんから。パナソニックがこれから経験する再編や変化は、非常に急激で複雑なものになります。

問:雇用する従業員の質も変わりますか?

マキナニー:まず外国人のマネジャーがかなり増えるでしょう。非常に“非日本的”になります。

 それから、女性の登用が増えるでしょう。消費者の半分は女性です。いかにして女性に商品を売るかを男性が考え出すのは困難です。製品のデザインや製造において、女性というブレーン・パワーの50%を除外するのは、企業にとって自殺と同じです。パナソニックの経営陣のうち35~50%が女性になる時期がもうすぐ来るでしょう。むしろ、そうでなければなりません。

大野 和基(おおの・かずもと)
ジャーナリスト
大野 和基(おおの・かずもと) 1955年兵庫県西宮市生まれ。大阪府立北野高校卒。東京外語大英米学科卒業後、79年渡米。在米18年。米コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、ヘッジ・ファンドの帝王ジョージ・ソロスや元CIA長官、映画監督マイケル・ムーア、えひめ丸事件の乗客、北朝鮮に拉致された曽我ひとみさんの米国人夫ジェンキンス氏の家族など、要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。単独での海外現地取材が圧倒的に多く、年間フライト数は80回を越える。翻訳『外科の夜明け』(小学館)があり、2009年5月17日に書き下ろしで『代理出産―生殖ビジネスと命の尊厳』(集英社)を発売。

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