データが創る未来

データブローカーの落日

オープン ―― データの開放が企業や社会を変える(1)

2014.02.17東 富彦=国際社会経済研究所

「データ」はビッグデータ時代の新たな通貨となり、企業や政府、個人などが持つデータを掛け合わせることで新たなサービスを生み出している。地中深くの“油田”に蓄積されていたデータが一気に吹き出ることで何が起きようとしているのか。オープンデータ活用の専門家が、産業へのインパクトや社会の革新を連載を通して明らかにする。(日経ビッグデータ編集)

 ビッグデータ活用の先進国であると自他共に認める米国。日本よりも格段に自由に個人の情報が、コンピュータで処理できる「データ」としてやり取りされており、データブローカーと呼ばれる巨大なサービスベンダーも存在する。我々消費者のプロフィールや嗜好などのパーソナルデータを様々な手段で大量に収集し、民間企業や公的機関に販売しているのだ。

 データブローカーで世界最大級の企業が米アーカンソン州に本社を置くアクシオムである。創業は1969年と古く40年以上の実績を持つ。2013年3月期の年間売り上げは約11億ドル(約1100億円)にも上る。同社は1人当たりの平均で1500項目もの個人情報を集めてデータベース化しており、そのカバー率は米国人の実に96%にも達する。世界では約7億人にものぼる情報を保有しているという。データブローカーの顧客である企業はパーソナルデータを購入し、ターゲットとする消費者ごとにカテゴライズしたマーケティング戦略を立案したり、電子メールやダイレクトメール(DM)の送付に利用したりしている。

 極めて大量のデータを扱うビッグデータ時代が到来し、データブローカーの力が増すばかりと思えばそうでもない。アクシオムのスコット・ハウCEO(最高経営責任者)は2013年9月、「データは独占できない」(There is no monopoly on data)とその心境を吐露した*1。

*1 ハウCEOの発言はChief Marketer Networkの記事「Acxiom Aims to Break “Data Monopoly” With New System」による、以下同。

突然のパーソナルデータ公開

アクシオムが公開した「AboutTheData.com」のサイト

 2013年9月4日、アクシオムは突然「AboutTheData.com」というサイトを立ち上げたことを公表した。アクシオムが独占的に保有しているパーソナルデータを、消費者に対して公開するのが目的だ。消費者はアクシオムが集めて第三者に販売している、自分自身に関するデータを自由に閲覧できるようになった。もしプロフィールなどに間違いがあれば申し出て、データを修正してもらうことが可能だ。さらに消費者はアクシオムに対して自分のデータを収集しないよう要求する、いわゆる「オプトアウト」の申請もできる。

 データの巨人に方針転換を迫ったのはそれもデータだ。政府や団体が保有する情報をインターネットで無償公開する「オープンデータ」である。

 アクシオムの動きに先立つ2013年2月5日。米国政府はオバマ大統領直轄の政策プログラム「The Presidential Innovation Fellows」の第2ラウンドを実行すると発表した。同プログラムは斬新なアイディアと画期的な技術を組み合わせて政府を革新するのが目的で、オバマ大統領はオープンデータを推進する2つの活動の推進を宣言した。

 1つ目は「Open Data Initiatives」であり、オープンデータの活用を強力に推進する。従来、健康、エネルギー、教育、ファイナンス、治安、国際開発といった分野でのデータ活用を対象にしていたが、民間企業が保有するデータとの掛け合わせによる活用や、分析人材であるデータアナリストの育成などに取り組む。具体的には、データ分析を活用した効率的な学習、博物館向けデジタルツールの整備、オープンデータのポータルサイトである「Data.gov」の機能強化を進めるというものだ。

 2つ目が「MyData Initiatives」で、Open Data Initiativesと対でパーソナルデータの透明化を目的としたものだ。アクシオムなど民間のデータブローカーが所有するパーソナルデータに対する個人のアクセス権を確保する活動である。現在、医療データ(Blue Button)、エネルギーデータ(Green Button)、教育関係(学業記録、学生ローン、奨学金の履歴など)が対象だが、これを大幅に拡大していく方針だ。

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著者プロフィール

国際社会経済研究所 主幹研究員

東富彦

国際社会経済研究所 情報社会研究部・主幹研究員。オープンデータ普及促進のOpen Knowledge Foundation Japan設立に参画、企業情報公開の団体設立を計画中。

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