by 大日本印刷

「あたりまえ」を集めたビッグデータが、人工知能をさらに賢くする

ビッグデータで「未来のあたりまえを作る。」(3)

2014.07.23

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「未来のあたりまえ」とは、まだかたちになっていないけれど、いつの日か生活やビジネス、社会の課題解決に必要となるものやサービスのこと。本稿では、人間の創造的な思考活動をビッグデータの活用により助ける、人工知能への挑戦を紹介する。

常識とコンピュータ

 今やコンピュータはチェスや将棋、クイズなどで人間を打ち負かすほどの性能を備えている。その一方で、子どもでさえできるような思考や判断を行う能力はいまだに備えていない。例えば、人間は「沖縄でサーフィン」という言葉から「雲一つない快晴の海」「真っ黒に日焼けしたサーファー」といったイメージを、即座に連想することができる。しかし、コンピュータにはこうした作業は難しいのが現状だ。

 この課題を解決する一つの手段として、コンピュータに「コモンセンス知識」を持たせる方法が考えられている。コモンセンス知識とは、私たち人間が暗黙のうちに共有している広く膨大な知識のことであり、無自覚に共通認識している周辺知識も含まれる(※1)。例えば、「モノは落ちる(だが逆はない)」「食べないとお腹が減る」「子は親より若い」「生き物は毎年ひとつずつ歳をとる」といった、人がわざわざ表現しない類いの知識のことで、これは「一般常識」と言い換えることもできる。

■コモンセンス知識は互いに結び付いた言葉によって、大規模な「意味ネットワーク」を形成する。

 我々人間は、無意識のうちに膨大な量のコモンセンス知識を、日常生活の中で自然と会得し共有している。人間に近い思考をする人工知能を実現するためには、コンピュータ上にコモンセンス知識の巨大なデータベースを構築する必要がある。ビッグデータを扱う技術と組み合わせれば、人工知能の思考精度を向上させる土台となる。

 言葉の意味が相互に結びつきコモンセンス知識が形成されることと、人工知能の特性を踏まえ、日本ユニシス(※2)は2010年から、電通とMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボと協力して、コンピュータにコモンセンス知識を与えるプロジェクト「空気が読めるコンピュータをつくろう」を推進している。適切な時に適切な知識と言葉を使って、人間のように空気が読めるコンピュータを実現することが目的だ。

 前述の通り、コモンセンス知識は人間にとってはあたりまえすぎるものであるため、体系立てて文書化されているわけではない。そこで本プロジェクトでは、コモンセンス知識を集合知と捉え、そのデータベースの構築を、たくさんの人の力を借りて行う方法を用いた。 Webコンテンツを公開して、不特定多数のユーザーにコモンセンス知識を入力してもらう「クラウドソーシング」方式である。

 本プロジェクトの活動の一つとして「ナージャとなぞなぞ」というWebサイトを開設した。ナージャはロシアからやってきた3歳の女の子という設定で、ナージャが出す5つのヒントを元に、Webサイトの訪問者がプレーヤーとなって彼女が考えている言葉を当てる連想ゲームになっている。

 ヒントは計5つが順に提示されるようになっており、プレーヤーは正解するまで回答を繰り返す。その際のプレーヤーの回答が、コモンセンス知識にビッグデータのように蓄積されていく仕組みである。蓄積されたデータはそのままヒントとして再利用される。また、プレーヤーが答えとヒントの結びつきが不適切だと感じた場合、その指摘をデータベースに反映することもできる。

■「ナージャとなぞなぞ」 http://nadya.jp/

 プロジェクトのそのほかの活動として、facebook上で遊べる検定コンテンツ「日本人検定」も展開している。こちらは、20の質問に答えると、全回答者の回答と比較して、自分の「日本人レベル」が算出される。すでに回答した友人がいる場合、その友人の答えを教えてくれる機能もついている。

 本プロジェクトでは、まずは100万件のコモンセンス知識を蓄積することを目標とし、現在までに約90万件のコモンセンス知識を獲得している。

コンピュータはツールからパートナーへ

 DNPと日本ユニシスは、「空気が読めるコンピュータをつくろう」プロジェクトの取り組みで得た知見とビッグデータを活用し、共同で「未来の知的創造ワークスタイル」の研究プロジェクトを進めている。この研究プロジェクトでは、ビジネスシーンにおけるブレーンストーミング(ブレスト)を、コンピュータを用いて人間が発想することをサポートするのが目的だ。

 ブレストは、ある一定量までアイディアを出したり、いつも同じメンバーで行ったりするときに、発想が停滞する傾向がある。そうした際に、それまでの居室の様々な情報をモニタリングしたコンピュータ(ブレスト支援システム)が、そこから連想・類推される言葉や画像を提示する。それをヒントとしてブレスト参加者に新たな気づきを与え、発想を支援することを狙っている。

 現状はノートPCなどのデバイスから専用サイトにアクセスして利用する仕組みだが、将来的にはミーティング室のデスクや壁にシステムが組み込まれ、部屋そのものが会議をサポートできるよう目指す。

 我々が使っている現在のコンピュータは、必要な情報を記録しておき、人間の指示を忠実に実行する「ツール」と言える。これまで紹介した取り組みはコンピュータを、人間の発想や思案をサポートしてくれる「パートナー」に変えていくことに他ならない。

 そのためには、日々大量に自動的に収集されるビッグデータの一方で、「ナージャとなぞなぞ」のように、普段意識に上らないような人間のコモンセンス知識の獲得は欠かせない。それは、少なくない労力と時間が必要な作業だが、新しいビッグデータの解析手法につながる可能性を秘めていると言えるのではないだろうか。

※1 UNISYS TECHNOLOGY REVIEW 第107 号,FEB. 2011「日本でのコモンセンス知識獲得を目的とした Web ゲームの開発と評価」より引用
※2 日本ユニシスとDNPは、2012年8月9日に発表した業務提携に基づき、新規市場拡大を実現する事業基盤を両社連携して強化すべく、取り組みを推進している。

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DNP大日本印刷は、最先端の印刷技術と情報技術を保有する世界最大規模の総合印刷会社です。「未来のあたりまえを作る。」というコンセプトのもと、企業や生活者、社会の課題を解決する新しい製品やサービスの開発に努めています。
生活者の価値観が多様化し、日々膨大な情報が蓄積されている現在、彼らの姿を正しく把握することは、もはや一企業でできる範囲を超えているといっても過言ではありません。
DNPはそうした企業のパートナーとして”ロジック&エモーション”で生活者と企業をつなぐビッグデータ時代の新しいコミュニケーションデザインを提供します。

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