ケーススタディ

「iBeacon」で人流を把握し売り時逃がさない、パルコやAOKIが試す

特集|リアルタイムIoTに挑む【中編】

2014.08.07市嶋 洋平、多田 和市

販売・マーケティング 運用・サポート 公共 顧客接点拡大・強化 公共課題解決 流通 リスク回避 売り上げ増 センサー その他行動ログ

これまでGPSや無線LANでは実現が難しかった、店舗内でのIoTを実現するためのハードルが一気に下がった。契機は米アップルが昨年秋にiPhone向けに投入した新OS「iOS7」に「iBeacon」の機能を搭載したことである。パルコやAOKI、日本航空などがぞくぞくと実験に乗り出している。

※本記事は特集「リアルタイムIoTに挑む」(前編)リアルタイムな津波予測をカーナビ画面に、ホンダと東北大の共同プロジェクトの続きです。

【店舗×IoT】壁や棚、商品が位置を教える「iBeacon」の活用始まる

 「いらっしゃいませ。いまショップAでは、あなたがお気に入りに登録している商品が1時間限定で特売を行っています。クーポンを発行し、お店までご案内しましょうか?」

 スマホを持って大型のショッピングモールに入ると、このようなメッセージが画面に表示され、その商品の棚までナビゲーションしてもらう。こうしたIoT活用が流通の現場で始まろうとしている。

iBeaconを活用して、顧客などの動きを把握する主な取り組み

 これまでGPSや無線LANでは実現が難しかった、店舗内でのIoTを実現するためのハードルが一気に下がった。契機は米アップルが昨年秋にiPhone向けに投入した新OS「iOS7」に「iBeacon」の機能を搭載したことである。

 iBeaconを活用することで、「Bluetooth Low Energy」と呼ぶ仕様に対応した小型のセンサーと通信して、センサーに割り振ったIDをやり取りする。そのIDを受け取ったスマホが対応するアプリを起動して、ネット経由でクーポンを受け取ったり、利用者へのナビゲーションを行ったりする。GPSは店舗など屋内に入ると測位が難しい。無線LANは電波が遠くまで届くので正確な位置が把握しづらい、アクセスポイントを設置する必要があるといった課題がある。

商業施設に400個のセンサー

 7月末、名古屋市にあるパルコ名古屋店の約30のフロアに300~400個のiBeaconセンサーが取り付けられた。

パルコ店内の柱に設置されたiBeacon(中央部)

 ショッピングセンターのITサービスを支援するパルコ・シティ、IT企業のエンプライズが試すのは、南・西・東の3館合わせて約30フロアを、入り口から特定の店までナビゲートできるかどうかだ。

 スマホアプリがiBeaconの情報を受信して位置を認識。センター側でセンサーのIDと場所をひも付けておくことで、スマホの位置を割り出す。その際にセンサーとの距離は「極めて近い」「1m以内」「1m以上」の3段階で判定できる。

 今回、別の実験としてiBeaconで取得したデータを基に人流の解析をする。これは分析したうえで後日活用するものだが「将来的には、人流をリアルタイムに分析し、集客やキャンペーンなどの施策を打つようになるだろう」(パルコ・シティ開発本部R&D部の岡田泰宏部長)。

購入可能性のある顧客“呼び止め”

 紳士服専門大手のAOKIは顧客の呼び止めにiBeaconを活用する。10月から、都内の大型店3カ所でiBeaconを使った販促を開始する。スマホにAOKIの無料アプリをダウンロードした会員が来店した際、即時にクーポンを発行する。

 AOKIには、(1)都心店、(2)郊外店、(3)大型店があるが、都心店の多くは、購入率が低い。iBeaconをこの課題を解く一つのカギとする考えだ。都心店は、見るだけの来店客が多い。競合店も立地が近いことが多く、熾烈な戦いを強いられている。

 こうしたなかでiBeaconを使うのは「その場での購入に直接結びつくクーポンなどの施策」(AOKIホールディングス情報システム本部企画開発部長の日下康幸執行役員)を目指しているからだ。

 例えば、「今から15分以内に購入すればXX%引き」といったクーポンを入り口で配ったり、会員のプロフィルから推奨したい商品に近づいた際に割引クーポンを発行するといった取り組みである。

 当初、1店舗で5~7個のiBeaconを設置して効果を検証。効果が確認できれば、AOKIと若者向けビジネス衣料品店「ORIHICA」の全店(約670店)に仕組みを導入していく。

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著者プロフィール

日経ビッグデータ

多田和市

日経ビジネス記者・副編集長、日経情報ストラテジー編集長、日経ビジネス編集委員、日経BPビジョナリー経営研究所上席研究員などを経て、2014年1月から日経ビッグデータ記者。

シリコンバレー支局

市嶋 洋平

日経コンピュータ、日経コミュニケーション、日経新聞などを経て、2012年11月にビッグデータ・プロジェクトを立ち上げた。企業のデータ活用促進やデータサイエンティストの人材育成などに取り組む。

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