統計・分析を極める

【連載第1回】ニューラルネットの歩んだ道、ディープラーニングの登場で全てが変わった

ディープラーニングのビジネス活用を探る(1)

2015.04.21大野健太=Preferred Networks

ディープラーニングのビジネスへの活用の可能性を探る。初回はディープラーニングの登場がどんな意味で大事件だったのかを解説する。

常識を覆すアプローチ法

 精度の高さだけではなく、それを達成した方法も衝撃的だった。通常、機械学習で何らかの課題を解かせようとするとき、入力データにアルゴリズムを適用する前に「特徴抽出」と呼ばれる操作を施す。特徴抽出とは動画像や文章などの膨大で非定型な入力データから予測に効くと思われる特徴を取り出す作業である。精度を上げるには入力データの性質や課題の内容を反映した特徴抽出の方法が肝となる。そのため、問題ごとに特徴抽出方法を人間が選択するのが常識であり、入力データや課題に応じた特徴抽出の手法やノウハウが開発されてきた。

 ところが、ディープラーニングでは特徴抽出がアルゴリズムに組み込まれ、抽出すべき特徴の選択自体も機械に学習させる。例えばヒントン教授らのSupervisionでは入力画像には最低限の前処理のみを行い、各ピクセルの画素値をそのままニューラルネットに与えていた。

 下の図は画像認識を行うニューラルネットの学習結果を可視化したものである。入力に近い層では線や円などの単純な図形を抽出し、出力に近い層ではそれらを組み合わせた複雑な図形を認識する様子が見て取れる。人手が必要と思われた特徴抽出を自動化し、その上で認識精度を向上させたディープラーニングの登場は従来の手法を覆す大事件だった。

ニューラルネットが抽出した特徴の可視化
顔認識を行うニューラルネットの学習結果の可視化。入力に近い層では線や円など単純な図形を、真ん中の層では顔のパーツを、出力に近い層ではパーツを組み合わせて顔全体を抽出している様子が分かる。
(Honglak Lee, Roger Grosse, Rajesh Ranganath, and Andrew Y. Ngによる”Unsupervised Learning of Hierarchical Representations with Convolutional Deep Belief Networks”(http://web.eecs.umich.edu/~honglak/cacm2011-researchHighlights-convDBN.pdf)から許可を得て引用)

実用化は既に始まっている

 現在のところ、ディープラーニングの応用は特定の課題を精度よく解くことに向けられている。3つの方向性が顕著だ。1つ目は自社が提供するサービスの精度を高めること。米アップルの音声認識システム「Siri」、グーグルやバイドゥの画像検索エンジンなどが典型例である。

 2つ目はデータ解析のシステムやサービスの事業者にディープラーニング技術を提供する形態である。自然言語処理と画像認識へのディープラーニング応用で知られるリチャード・ソッチャー氏が立ち上げた米メタマインドや、2013年のILSVRCで優勝した技術を基にマシュー・ジラー氏が立ち上げた米クラリファイ(Clarifai)はこの例である。

 3つ目はディープラーニングを始めとする機械学習ベースのデータ解析インフラを提供する事業者である。我々Preferred Networksはこの方向性に近い。

大野 健太| Kenta OONO
2011年東京大学大学院数理科学研究科修士課程修了。同年Preferred Infrastructureに入社。2014年からPreferred Networksに移り、ディープラーニング関連の研究開発に従事。

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