データが創る未来

人工知能が一人ひとりの好みの小説を書く日

2015.06.01松原 仁=公立はこだて未来大学教授 人工知能学会会長

今年、人工知能と人間の共同作品となるショートショートを作り、文学賞に応募する。5年後の2020年には、ほぼ人工知能だけでショートショートを書けるようになる。

 人工知能にSF作家の星新一のようなショートショートを書かせる「きまぐれ人工知能プロジェクト『作家ですのよ』」が始まったのが、約2年前。方法論すらなかった状況から、自然言語処理の技術を活用するいくつかの方法論を編み出した。

 今年9月には、日本経済新聞社主催の第3回「星新一賞」に応募する。現段階では、人工知能と人間による共同作品という位置づけになる。

 長い文章を違和感なく生成できないのが技術的な課題だ。2020年ごろには、6000字から8000字ぐらい、つまり長めのショートショートなら人工知能だけで書けるようにしたい。2030年になると長い小説を書けるようになり、それこそ芥川賞や直木賞の受賞は夢ではないと考えている。

 その時点では、人工知能が一人ひとりの好みに合った小説を書いてくれるようになるはずだ。好きな小説をいくつか教えてもらい、その小説を読み込ませる。人工知能がその人の好みを把握して、そのテイストに合う小説を書き上げるのだ。

1000以上の星新一作品を活用

 星新一の次女である星マリナさんの協力を仰ぎ、1000以上の星新一作品を使わせていただいている。いくつかの方法論を編み出し、並行して試している段階だ。最終的にどの方法論になるかは、まだ分からない。

 ショートショートを書くうえでポイントになるのは、アイデアだ。ここが大事であり、一番難しい。1つの方法として、星新一のショートショートを分析して、パターンを作っている。宇宙人系や薬系など、オチの内容などによって分けている。

 そこから先、文章にするのも難しい。いくつかのパターンごとにまずは作ってみる。次に、それぞれで使っている単語を、他の単語に置き換えたものをたくさん作る。するとその中から面白いものが出てくる可能性がある。単語をどれに変えるかルールを決めている。明らかにおかしいものは除く。いまは人間が評価しているが、将来は評価関数を活用して選び出すようにしたい。

 検討中の作り方に、星新一の小説をいわば「ログデータ」とすることがある。利用傾向値が高い単語や形容詞をネタとして抽出。その後「起承転結」をイベントととらえ、ネタに対する大量のパターンを構造化してデータベース化する。それらのデータベースに対して機械学習をかけて箇条書き文章を少しずつ作る。この箇条書きの機械学習がストーリーを作るパターンを生み出す。機械学習の良しあしを評価する手段として、別に研究している星新一らしさである評価関数で判断しようと検討中だ。

 いくつかの方法論を編み出せたので、自然言語処理の研究者を確保すべき段階に入った。もっとも、今の人工知能は、ユーモアなどを理解しているわけではない。人工知能に面白さを理解させるやり方では時間がかかってしまうので、まずは既存の小説を変形することで、結果的に面白い小説にすることを目指している。次のステップでは、人工知能に面白さを理解させたい。

星新一の作品から生成した文の例(高橋、松原 2014)

松原 仁 | Hitoshi MATSUBARA
1986年に東京大学大学院情報工学専門博士課程修了。現在、公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科教授および人工知能学会会長を務める

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