教育CSRって何?

【教育CSR】教育界と産業界とのコラボが、高校生を強くする

アサヒビールと日本環境教育フォーラムの「若武者育成塾」レポート

文:辰野 恭子/写真:北山 宏一 01.29.2015

教育界と産業界が協働し、次世代を担う若者を育てる活動が注目を集めている。アサヒビールと日本環境教育フォーラムが主催する「若武者育成塾」第9期の取り組みをレポートする。

たくましく成長した若武者が活動成果を発表

12月に開催された成果発表会は、高校生たちが再び一堂に会し、互いの活動成果を発表し合う晴れの舞台だ。夏合宿が始まった頃はまだあどけなさが残っていた高校生たちだったが、この発表会では自信とたくましさが緊張した表情の中にも見て取れた。どの高校も、「環境を守りたい」という熱意がこもった内容で、PDCAサイクルを回しながら、仲間とともに計画を一歩一歩前進させてきたことも伝わってきた。

最優秀賞に輝いた山形県立村山産業高等学校は、夏合宿で産業廃棄物不法投棄事件の舞台となった豊島を視察した際、人間のエゴが引き起こした環境破壊の大きさを目の当たりにし、解決するためには地域の理解が必要と痛感。その経験を生かし、アクションプランでは絶滅危惧種オキナグサを環境保全のシンボルに掲げ、周りの人々を巻き込みながら河川清掃活動や栽培体験などを行ってきた。

山形県立村山産業高等学校による発表の様子
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山形県立村山産業高等学校は最優秀賞に輝いた

優秀賞の大阪府立園芸高等学校は、夏合宿のアマモ観察から生物多様性保全について理解を深めた。最近虫嫌いの子どもが増えていることに着目し、伊丹空港等のバタフライガーデンでの調査研究を基に、地域の小学校へ出前授業を行った。

優秀賞の大阪府立園芸高等学校による成果発表の様子
大阪府立園芸高等学校は優秀賞を受賞した

審査委員長である日本環境教育フォーラム理事長の川嶋直氏は、「各校とも地域を巻き込むすばらしい取り組みだった」と称え、「卒塾生同士のつながりを大切にし、今後も活動を続けてほしい」とエールを送った。会場は大きな拍手に包まれ、高校生たちはその健闘を称え合った。

日本環境教育フォーラム理事長の川嶋直氏
参加各校はそれぞれ部門賞を受賞した

高校生の自主性を伸ばす教育CSR

高校生は、大学進学や就職を前に人生の方針を決め始める多感な年齢である。環境教育推進法の施行などにより、小学生や大学生向けの環境教育は普及しつつあるが、高校生を対象としたものは依然少ない。この年齢を対象とした若武者育成塾は、参加した高校生たちの進路にも大きな影響を与えている。

卒塾生の中には、環境についてより研究を深めたいと大学へ進学した者もいる。昨年の成果発表会では、小学校で出前授業を行ってきた高校生が、「教師になりたい」と夢を語り、教育大学に推薦合格したことを発表。祝福の拍手が沸き上がるという一幕もあった。

高校生たちが主役の「若武者育成塾」。そこにはいくつものドラマがある。その陰で社員たちは常にサポート役に徹し、決して前に出てくることはない。しかし、その姿勢は、教育現場で長年子どもたちと向き合い続けている教師たちも注目する。

「生徒たちがこの数カ月で見違えるほどたくましい顔になりました。文字通り“若武者”を育てる塾だと実感しました」と岐阜県立加茂農林高校教諭の大坪信弘氏。

また、大阪府立園芸高校の教諭の中村和幸氏は言う。「チームアシスタントから『先生は横でコーヒーでも飲んでいてください』と言われて、この塾の活動について一切何もしませんでしたが、成果発表会を聞いて驚きました。生徒たちがこれほどすばらしい活動をしていたとは。私たち先生は、つい『こうしなさい』、『ああしなさい』と指図し過ぎてしまいますが、社員の方たちはそうはしなかったようです。生徒の自主性を育むにはどうしたら良いか。改めて考えさせられました」

高校生の成長に刺激を受ける社員たち

一方、チームアシスタントとして参加した社員たちも晴れやかな表情を見せている。

岐阜県立岐阜農林高校のチームアシスタントを務めたアサヒフードアンドヘルスケアの宮田智氏は、生物研究の専門性を生かして高校生たちにアドバイスを送り続けた。その宮田氏も「高校生たちは地域の中で様々な年齢の、様々な職業の人たちを巻き込みながら、計画を実行へと移していった。それは、研究室で仕事をしている私にとって非常に刺激的だった」という。

また、今回で3回目の参加という鵜飼氏は、「子どもたちの成長する力には、いつも驚かされる。一からプランを立ち上げ、PDCAサイクルを回しながら、前へ前へと突き進んでいく。悩むより産むが易し。私たちにももっと何かできるはず」と力強く語る。

この塾での経験や出会いが、高校生たちだけでなく、そこに係った教師、社員たちの胸の中にも化学反応を起こし、新たなアクションへとつながっていくのかもしれない。今年は10年目という節目の年。どんなドラマが待っているか、大いに楽しみだ。

成果発表会を終えた塾生たち
辰野 恭子(たつの・きょうこ)
フリーランスコピーライター
岐阜県生まれ。日本女子大学食物学科卒業。食品関連の新聞社を経て、2000年 にフリーランスコピーライターとして独立。日経BP社の日経エコロジー、日経ビジネス、ecomom等の雑誌広告、企業PR誌等を中心に活動。企業CSR、環境、食関連の執筆が多い。エコ・ピープル。マイブームは竹林整備、自然エネルギー。
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