聞き手/藤田香 構成・文/蔦林幸子

住友林業は中国市場での事業を拡大している。設計から設備、空調まで環境配慮型の住宅を提案し、木造住宅の需要掘り起こしにも意欲を燃やす。銅山経営のための木々の調達・管理から始まった同社の歴史は320年以上にわたる森林保全の歴史でもある。バイオマス発電で電力を賄うなど、森林資源を生かす新しい取り組みも進める。目指すは「世界一の“森林会社”」だ。

──6月に中国・北京で開催された国際環境見本市「日中グリーンエキスポ2011」に、住友林業も参加していました。中国市場の手応えはいかがですか。

矢野 龍
矢野 龍(やの りゅう) 住友林業 代表取締役会長
1940年旧満州(中国東北部)生まれ。63年に北九州大学外国語学部卒業後、住友林業に入社。10年間の米国シアトル駐在を経験。88年に取締役海外第一部長。専務取締役営業本部長、住宅本部長を経て、99年4月に代表取締役社長。2010年4月から現職。日本木造住宅産業協会会長も務める。
写真/中島正之

矢野龍氏(以下敬称略) 中国政府はこの10年間で、環境に対する施策を真剣に考え始めました。住宅や建築関連、不動産開発の分野においても「環境配慮型」が非常に重視されるようになってきています。

 当社が中国のデベロッパーにプレゼンテーションするときも、日本の環境配慮型の技術を前面に押し出すと、中国側も魅力だと感じて入札に参加させてもらえます。設計から設備、空調、水回り、さらには屋上緑化や外構緑化まで、総合的な環境配慮型を提案します。

 消費者の環境意識も高まっていますね。高層マンションなどを建てる場合、中国では事前にギャラリーを作って展示しますが、そこで日本の環境技術を取り入れていることを訴えると、非常にプレミアムがつきます。例えば空調設備、洗浄トイレなどは人気があります。

 特に若い世代は急速に本物志向が進んでいるため、日本の環境技術が大きなセールスポイントになっています。お婿さんの条件がマンションを購入しておくことだそうです。

 ただし、木造建築については、まだこれからですね。これまでは日本のような3000万円前後の戸建て木造住宅のニーズがありませんでした。

 最近ようやく、廉価な環境配慮型の木造住宅への興味が強くなってきたところです。木はCO2を吸収・固定するので「木造住宅は環境に優しい」という認知が高まっているんです。「木造住宅を作るということは、街に森を作ることだ」と訴求すると、非常に興味を持ってもらえます。

6月に北京で開催された日中グリーンエキスポに出展。木材に関係する垂直統合型の事業展開を紹介した

写真/藤田香