「限界自治体」を支える

 過疎の自治体が抱える最大の問題の1つが、高齢者の生活支援だ。ヤマト運輸が高知県大豊町で2012年に開始した「おおとよ宅配サービス」は、高齢者の買い物代行と安否確認をしながら地域の商店を活性化させ、新しい物流の需要を創出するという、一石三鳥のサービスだ。

 利用者は、電話やファクスで地元の商店に商品を注文する。ヤマトのドライバーが店で商品をピックアップし、利用者に届けて商品代金と宅配手数料を受け取る。自宅に訪問した際には、利用者に体調などをヒアリングし、異変があれば町役場か消防署へすぐに連絡する。

一石三鳥のサービス
■ 「おおとよ宅配サービス」の仕組み

 おおとよ宅配サービスは、毎月150件ほどの利用がある。そのうち、実際に異変を感じて通報したケースはこれまでに13件あり、いずれも事なきを得ている。

 大豊町は、65歳以上の高齢者が人口の50%以上を占める「限界自治体」だ。車の運転ができない高齢者も多く、タクシーで片道3000円程度を支払って町の中心部へ買い出しに出かけるケースもある。

 また、山間の広い面積におよそ85の小規模な集落が点在しており、民生委員も高齢化していることから、行政による高齢者の見守りにも限界があった。さらに、50年前には約2万2,000人だった人口が、現在は4000人にまで減少。町外にある大型スーパーとの競合もあり、地元商店の売り上げは低迷していた。

 こうした地域の課題の解決策を模索していた大豊町商工会が、宅配事業を手掛けるヤマト運輸に白羽の矢を立てた。

 高齢世帯が利用しやすいよう、1000円以上の商品購入を条件に、配送費は150円と通常の配送費の数分の1の値段に抑えた。その分、注文を受けた商店が配送費の一部を負担し、自治体も補助金を交付して配送費に充てている。

 9月からは高知県の別の自治体でも同種のサービスが始まる。ヤマト運輸営業戦略部の引地芳博地域・生活支援推進課長は、「ゆくゆくは補助金に頼らなくても利益が確保できるように、事業モデルの見直しも同時並行で進めている」と話す。

 ヤマトグループは、2019年に創業100周年を迎える。それを目指して2011年に、9カ年の長期経営計画「DAN-TOTSU(ダントツ)経営計画2019」を策定した。その中で、地域の経済や社会と共生し、「一番身近で親しまれる企業になること」を目標に掲げた。