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影薄くなってるよニッポン~『パラダイス鎖国』
海部美知著(評:三浦天紗子)

アスキー新書、724円(税別)

  • 三浦 天紗子

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2008年5月13日(火)

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パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』海部美知著、アスキー新書、724円(税別)

 2006年11月、掃除機で有名なダイソンが、ジェットタオルを製品化したらしい。そう、日本のオフィスビルや商業施設のトイレで見かけるアレだ。ダイソンは「12秒で乾く高性能さ」を謳っているが、日本ではあのハンドドライヤーは10年以上前からある気がするし、いまや国産では3~4秒で乾かせる製品もあるほどだ。

 2005年にマドンナが12年ぶりに再来日した際、「日本の温かいトイレシートが懐かしかった」と発言したように、暖房機能付きのシャワートイレがここまで一般に普及しているのはおそらく日本だけ。テレビ機能付き携帯電話を始めとするワンセグは、アメリカではまだ有料で、サービスがスタートして日も浅い。切符自販機は世界各国にあるけれど、都心の駅に設置されているようなあれほどのハイテク機能付きはレアだろう。

 生活のあらゆる場面で、「日本ってなんて便利な国……」と感嘆したくなるアイテム揃い。食事はおいしく、おしゃれなモノにあふれ、サービスはよい。そんな豊かさ、住みやすさ(=パラダイス)の中で、日本はかつてのような外国への憧れや興味を失い、閉じていく社会(=鎖国)へとシフトしていると著者は言う。

 海外への関心が薄れるのが意識だけに留まるならいいが、現実には日本企業のビジネス戦略までが内弁慶化している。

 現在日本は、アメリカ同様、国内消費が大きいため、非常にドメスティックな過当競争がある。それに集中して資金や人材を投入するので、海外市場を拡大する余力もなくなっている。そもそも日本の企業は変化が遅く、そのくせ「次世代ビジネスはこれだ!」などと衆目の一致する分野が生まれれば、こぞってエネルギーをつぎ込むため、飽和も早い。

 その事象と連動するように、ジャパンマネーが驚異だったのは昔の話。GDPではいまなお世界2位の経済規模を持つ大国でありながら、世界市場、とりわけアメリカでは日本の存在感が確実に薄れつつあることを、著者は指摘する。

 もともと日本は、「〈果てしなき生産性向上〉によりコストを下げること」、そして「高品質高性能のプレミアムを付けて売る〈ジャパン・ブランド〉のグローバル化」という二つの戦略で勝負してきた。

 ところが、自動車ではそのスタイルを維持しているものの、これまで日本優位だった半導体、デジタルカメラ、薄型テレビをはじめ、冷蔵庫やエアコンといった白物家電などは転落の兆しが見られるという。世界での競争力と販売網を失い、ビジネスがますます国内に引きこもってしまう「パラダイス鎖国」によって、日本のブランド価値はますます低迷しかねない。

鎖国化で「日本」というブランドが消滅する

 その端的な例として挙がっているのが、携帯電話だ。

 90年代半ばまでは、日本は技術力、サービス、端末シェアなどすべてが世界のトップ。しかし、巨大なマーケットを持つアメリカは97年当時まだアナログだった。アメリカはいくつかある世界標準のデジタル通信方式からどれかを選ぶ道をたどるのだが、この混乱期に日本はアメリカ市場に見切りをつけた。

 それはちょうど日本のデジタル化の進化とJフォンの新規参入で、国内のビジネスチャンスの波と重なっていた。ソニー、日立、東芝など数多のメーカーが本腰を入れ、ビジネスは湧いた。

 2001年には第三世代ケータイサービス(FOMA)が世界に先駆けてスタートし、独自の通信方式で孤立していた状況ではなくなった。そこで世界をリードする携帯技術力で日本の携帯電話が売れるようになるはずだった……のだが、あにはからんや、すでに世界市場を手放していた日本には海外への販売ルートがなかったのだ。

 それは同時に、日本の携帯電話の端末デザインや機能があまりに進んでいるため、海外のメーカーはほとんど入り込めない市場を作り出していた。

 個々の国内メーカーはパイの奪い合いで苦しいが、加入者ベース、金額ベースで見ると、内需だけでもそこそこ豊かな市場がある。これが典型的なパラダイス鎖国現象だ。

〈パラダイス鎖国状態が続くと、これまで築いてきたジャパン・ブランドが消滅し、長期的に生活水準の低下を招く危険がある〉

〈いまの日本なら、新しいものを作り出すための途中の無駄やコストを負担する余裕がある。その余裕すら失ってしまう前に、新しいものを作り出すための一歩を踏み出すべきなのだ〉

 このままで行けば日本は行き詰まる。閉塞のスパイラルに入って抜け出せなくなる前に、ゆるやかな開国をせよとポジティヴな提言を掲げたのが本書だ。

コメント3件コメント/レビュー

本文と直接関係がないかもしれませんが、日本が「パラダイム鎖国」となって携帯電話や白物家電などが世界で売れない状況となって2つの人間が現れたような気がします。1つは、世界と闘う姿勢を強く出す人が出てきたこと。もう1つは、家電の世界的シェアの危機的現実を見ずに、クールジャパンや国内の技術のすごさしか見ない人が出てきたこと。で、問題なのは後者が圧倒的に後者が多いことと思います。(2008/05/21)

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いただいたコメント

本文と直接関係がないかもしれませんが、日本が「パラダイム鎖国」となって携帯電話や白物家電などが世界で売れない状況となって2つの人間が現れたような気がします。1つは、世界と闘う姿勢を強く出す人が出てきたこと。もう1つは、家電の世界的シェアの危機的現実を見ずに、クールジャパンや国内の技術のすごさしか見ない人が出てきたこと。で、問題なのは後者が圧倒的に後者が多いことと思います。(2008/05/21)

処方箋にはある程度賛同したものの、原因は少し違うのではと思った次第。日本人、しかも在米のという環境にある著者なので、そこにばかり目がいったのでしょうが、例えばフランスは中央集権志向が強い国なのに、世界を市場と考えて行動するということもあります。韓国の各財閥もそうですね。中途半端に大きな国内市場という要因は賛成ですが、心理的な理由としては、広く言われる日本人の非主体的志向(めだかが他の個体の動きだけを追おうとするところから、めだか主義なんて名づけた人もいましたね)が主要因で、あともう一つあるとしたら“ジャパンアズナンバー1症候群”なのかなと思ってしまいます。同質性・集団的に他者の真似をするというところは同じなのに、高度経済成長期やそれ以前には、洪水的な輸出だとか、なんでも真似するなどと揶揄されながら、対米を含む世界各国へ輸出をしよう・世界市場に挑戦しようという気持ちだけはあったはずです。実際にしていたし。それがなぜなくなったか。下手にジャパンアズナンバー1なんて、しかも憧れの米国人から聞いてしまった現在高年齢になっている層が、慢心してしまったからでは?下の人間がいくら考えても上が動かない・あるいは世界をみた指示を出さないというところが一番大きいのでしょうから。(2008/05/13)

海外で日々のタフネスに耐えつつ日本を憂いている日本人が、いざ帰国した時に目にするのはしかし呑気にも、豊かに、平和に、幸せそうに暮らしている日本人の面々。当方も米国在住であり、その拍子抜け感、漠然としたイライラ感はよくわかります。それを「パラダイス鎖国」とは言いえて妙。ただし本書の内容はありきたりな憂国論と自己啓発論に留まっているようであり、残念。そして厄介なのは、この「パラダイス鎖国」が大部分の日本人にとっては最も心地よい状況であって、しかしのままではこの「パラダイス鎖国」、今のままではそう永くは維持できそうもないというのがジレンマなんですよねえ。(2008/05/13)

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