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「キャベツ畑の毛虫」は殺すべき?

「マクロス・フロンティア」河森正治監督・2

  • 渡辺由美子

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[1/3ページ]

2009年7月7日(火)

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――「ヒットの方法論めいたものが固まるほど、モノは売れなくなっていく」「その突破のカギは、ダメ、ムダを含めた多様性にある」というお話を、「マクロス・フロンティア」でヒットを飛ばした河森正治監督にうかがっています。

 では、「多様性」というやや曖昧な言葉をもうすこし具体的に、とお聞きしたところ、河森監督は「20年前に自然農の考え方に触れ、実際にそれを見たことで、近代以降の思考への疑問が生まれた」と話し始めました。作品に出てくるアイテムや扱うテーマよりもっと広い、思考の枠組みからの見直しを、監督の言う「多様性」は指しているようです。

前回から読む)

―― 私は、自分では自然農の考え方に接したことがないのですけれど、『奇跡のリンゴ』()はとても面白く読みました。

※『奇跡のリンゴ
(石川拓治著、幻冬舎)

青森県のリンゴ農家木村秋則氏が、農薬を使わないリンゴ栽培に挑んだドキュメント。NHK「ザ・プロフェッショナル」でも紹介され大きな話題を呼んだ。氏は試行錯誤の結果、雑草や虫の除去をやめ、9年をかけてひとつの生態系を畑の中に作り上げることに成功する

河森 近代以降の考え方って、「人間が何でも制御する」方向にいきましたよね。日本でも、明治以降ずっと欧米のそうした流れの中にいる。農業にしても、今の作物はすごく手をかけて作られていますよね。たくさんの肥料をやって農薬を散布して。でも、その手間をかけなくても作物は育つんです。昔はそんなことをせずに、作物は育っていた。

 じゃあどうして手間をかけるのかというと、自然のままに育てると、多くの場合対面積当たりの生産量は70~80%ぐらい、2、3割は落ちるんですよね。

―― その3割を増やすために近代農法は発達したと。

河森 そうですね。今の近代農法は、その2、3割を上げるために、見合わないくらいものすごい手間をかけている、というのが、自然農の考え方というわけです。

 だから日本の農業を自然農に転換しろとか、大それたことを言いたいんじゃないですよ。あまり真剣な目で言うと引かれちゃうんで、組織作りや商売に考え方を広げる上での、ひとつの仮説として聞いてくださいね。

「もっともっと」という欲望に、手間が見合わなくなってきた

河森正治(かわもり しょうじ)
1960年、富山県生まれ。アニメーション監督、メカデザイナー。慶應義塾大学工学部在学中からデザインの仕事をはじめ、スタジオぬえに入社。82年のテレビアニメ「超時空要塞マクロス」で戦闘機がロボットに完全変形する“バルキリー”のデザインを手掛け、84年、映画「超時空要塞マクロス愛・おぼえていますか」で初監督を務める。95年にアニメーション制作会社サテライトの設立に参加。同社にて、「地球少女アルジュナ」(2001年 TV)、「マクロスゼロ」(02年OVA)、「創聖のアクエリオン」(05年TV/07年劇場版)、「マクロス・フロンティア」(08年TV)、「バスカッシュ」(09年TV)などを手がける。現在、劇場版「マクロスF」を製作中。SONYの「AIBO(ERS-220)」や日産のCMに登場した「パワード・スーツ デュアリス」のデザインも手掛けている(写真:星山 善一 以下同)

河森 近代文明は、とにかく手間をかけて収量を増やそうとする。「もっともっと」という欲望を、テクノロジーでどんどん拡大していったものですよね。「もっと」というのは、それも大事な人間の有り様だと思うんですが、別のところがどんどん切り捨てられていった歴史でもあると思うんです。

―― といいますと。

 最大の生産量や成果を求めるには、それまでのものを壊して、一から作り替えるほうが手っ取り早い。近代というのは、極端に言えば、1回全部壊してから、新しく同じ機能を持つものを作り上げる文明ですよね。下手をすると、今までその場所でうまく機能していたものを、一旦、機能しなくしてから、何とかうまくいくための装置を作ったりしている。

―― 農薬をまいて、虫の功罪の影響をナシにしてから、そこで改めて耕す農業をやるみたいな。都市の再開発もそうかもしれませんね。いちど更地にしてからショッピングモールと超高層オフィスビルを建てる。

河森 国際史もそうです。自分たちのルールとは違うやりかたで生きている地域を、「未開」の土地として、植民地にして、現地で培われてきた文化や生態系を破壊して、別の“効率が良いと思われる”自分たちのルールを入れる。すると、そこの土地の文化に合わないので、しばらくするといろんな不具合が現れる。

・・・話がどんどん大きくなっちゃってますね。

―― 大変面白いです。その、近代文明が切り捨てていったところが、今の日本や世界の「弱さ」に繋がっている、と?

コメント4件コメント/レビュー

コメントが非常にニッチ化していて、なるほど感を増幅させてくれました。主旨はよくわかるが、たぶん、「近代」以外の別の価値観を得るときに、一つの大きな障害がある。「自分や自分の近親者の理不尽な死に耐えることができるのか?」ということだ。多様性も必要だろうし、生き物としての強さの獲得も必要だろう。しかし、上記のテーゼに対する応えが出せない限り、「近代」を否定するのは難しい。生き生きとした子供たちは、理不尽な死が隣り合わせの世界で生きている。今の創作物の世界が、そんな問題を考えるはるか前の地点で立ち止まっているのは、お話しの通りだと思う。そこを乗り越えるための試みであったことには、納得感があった。(2009/07/16)

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コメントが非常にニッチ化していて、なるほど感を増幅させてくれました。主旨はよくわかるが、たぶん、「近代」以外の別の価値観を得るときに、一つの大きな障害がある。「自分や自分の近親者の理不尽な死に耐えることができるのか?」ということだ。多様性も必要だろうし、生き物としての強さの獲得も必要だろう。しかし、上記のテーゼに対する応えが出せない限り、「近代」を否定するのは難しい。生き生きとした子供たちは、理不尽な死が隣り合わせの世界で生きている。今の創作物の世界が、そんな問題を考えるはるか前の地点で立ち止まっているのは、お話しの通りだと思う。そこを乗り越えるための試みであったことには、納得感があった。(2009/07/16)

自然農、大いに結構ですがなかなか難しいですよね。だって野菜は人間が品種改良したもので、もはや自然から外れてしまっていますから。大根など元から地域で自生しているものはほっといても行けるのですが…苦戦中です(2009/07/07)

畑作は世界中至る所で行われている訳であるが、普通は畜産方式で、キャベツ畑にはキャベツだけ、というように、単一の作物を植えるのが普通である。その方が効率(生産性)がいいからである。ところが、アフリカでは、スイカの苗の隣にサトウキビが生えている、というように、一つの畑に複数の種類の植物を一緒に植えるそうだ(混栽と言うらしい)。畜産方式では一度害虫が発生すると一網打尽にやられてしまうが、混栽だと1種類の害虫が複数の種類の植物に害を与えることは少ないため、害虫で全滅、という事態になりにくいらしい(自給自足には適している)。なるほど多様性は減災には効果的でだが、効率性は悪い。次回の記事は多様性と効率性の両立がテーマのようなので、どのような話が聞けるのか、期待しています。(2009/07/07)

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