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「小さい男の子が、真ん中でもじもじ股間をおさえながら、歌っているのがいい」

「かもめ児童合唱団」【前編】

  • 朝山 実

バックナンバー

[2/3ページ]

2009年9月17日(木)

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 商店街の通りの真ん中で、3、4歳児から小学生くらいまでの子供たちが寄り集まった写真がまず目をひいた。シャボン玉を追うように空を見上げたみんなの表情から、楽しさが伝わってくる。キャッチコピーは、「三浦半島最南端の太陽の子供たち」だ。

「みんなで歌うのって気持ちよくないですか?」

 “最南端”という響きにどうも、わたしは弱い。南であれ北であれサイハテというものにそわそわする習性がある。おまけに、“太陽の子供たち”というフレーズが弾んでいた。

 「三浦半島の先にね、白秋の歌を歌う児童合唱団があるんですよ。10人くらいの」と佐藤さん。

「三浦半島というと、神奈川の横須賀のあたりでしたっけ?」

「まだむこう、城ヶ島のあるほう」

 「ああ」とうなずきながら、このときのわたしは地理がつかめていなかった。

「日本でいちばん小さい児童合唱団なんですけどね。これが、いいんですよ」

 と、佐藤さんが眼鏡のツルをちょいと持ち上げ、フフと笑った。おすすめ話をするときのしぐさだ。

 子供たちの歌声はよそにはないものだという。

「東京で聴く機会はないんですか?」

「いまのところ、ないみたい」

 ナマ音を聴くには行くしかない、と佐藤さんは誘ってくる。そこでしか見れない。しかし、出かけて行く価値はある。東京からだと片道2~3時間で行けるし、三浦大根やマグロを土産に買って帰るとか、いっそ農家の手伝いをして汗を流すのもいいと、佐藤さんのプランは膨らんでいく。

「農家の手伝いって?」

「援農ですよ。みんなでバスに乗って、行き帰りに歌う。いいと思わない?」

 こんな話題になったのは、店にたどり着くまでの道すがら、「このごろ、みんなで歌うということがなくなりましたよね。昔は、学校の遠足のときとか、人が集まればみんなで歌ったじゃない。みんなで歌うのって、気持ちがよくて。カラオケとかで歌うのとはちがうんだよね」と佐藤さんが話していたからだった。わたしもうなずいていた。

さほど乗り気でもなかったんだけど

 そして、腰を落ち着けて、タイミングを見計らったかのように、「いま気になっているのが」と切り出してきたのだった。

「白秋の『城ヶ島の雨』を歌う子供たちなんですよ」

 童謡をレパートリーにする児童合唱団というならめずらしくもないだろうが、北原白秋の「城ヶ島の雨」といわれると、そそられる。むずかしいよなあ歌うのはと思いながら、チラシを眺めていた。

 「人口が減少していく港町の、10人規模の合唱団でね」。話しながら、佐藤さんはしきりにカバンの奥を探している。「CDがあったんだけどなぁ」。

 チラシを裏返すと、市場でマグロを船から下ろす漁師さんたちのモノクロ写真があり、かもめ児童合唱団と白秋との繋がり、初めてのCDについて、原稿用紙一枚くらいの説明が載っていた。どうやら自費でつくられたインディーズ盤らしいが、チラシには訴えかけてくるものがあった。

 結局、カバンの中にCDはなく、佐藤さんは、送るからという。この時点では、それでも、佐藤さんがいうんだから、おもしろいかもなぁぐらいにわたしは思っていた。つまり、さほど乗り気なわけではなかった。

コメント2件コメント/レビュー

とても興味深く読ませていただきました。コメントというより質問になりますが、コラム中の動画では「もじもじクン」のシーンは含まれていないようでした。YouTubeでも検索しましたが、マント姿はありましたが、やはりもじもじシーンは含まれていないようでした。コラムを読むとやはりもじもじシーンを見てみたくなるのですが、どこかで見れないものでしょうか。よろしくお願い致します。日経アメリカ/西村(2009/09/18)

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いただいたコメント

とても興味深く読ませていただきました。コメントというより質問になりますが、コラム中の動画では「もじもじクン」のシーンは含まれていないようでした。YouTubeでも検索しましたが、マント姿はありましたが、やはりもじもじシーンは含まれていないようでした。コラムを読むとやはりもじもじシーンを見てみたくなるのですが、どこかで見れないものでしょうか。よろしくお願い致します。日経アメリカ/西村(2009/09/18)

プロモーションビデオを観ました。よくあるアカデミックな児童合唱団とは明らかに違う魅力に溢れていて、素晴らしいなあと思いました。私の地元にも児童合唱団があり定期公演がありますが、子供たちの表情(笑顔)が、この子達のように魅力的ではないと感じます。「アカデミックな教育を」と喜んでいるのは、子供たちではなくて親なのかもしれませんね。子供本来の明るさを大切にされているこの合唱団は三浦市の宝物だと思います。いつか生で観てみたいと思いました。笑えて、不覚にも泣けました。(都内在住・一児の母)   (2009/09/18)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官