• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

日本の民主主義には「仁」の精神がなくなってしまった?

渋沢栄一を経てグローバル化した『論語』の旅をたどる〈5〉

  • 守屋 淳

バックナンバー

[1/5ページ]

2010年7月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 渋沢栄一は、設立にかかわった会社が約470社あり、主な所だけを挙げていっても、次のようになります。抄紙会社(のちの王子製紙)、東京海上保険会社(のちの東京海上火災)、日本郵船、東京電灯会社(のちの東京電力)、日本瓦斯会社(のちの東京ガス)、帝国ホテル、札幌麦酒会社(のちのサッポロビール)、日本鉄道会社(のちのJR)…。

 さらに、かかわった社会事業は600団体前後あるともいわれ、やはり有名どころを挙げると次のようになります。東京商法会議所(のちの東京商工会議所の前身)や、東京株式取引所(のちの東京証券取引所の前身)、東京市養育院、東京慈恵会、日本赤十字社、聖路加国際病院、一橋大学、神戸大学、早稲田大学、二松学舎大学…。

 知れば知るほど、近代屈指の偉人の一人だと思い知らされる活躍ぶりですが、しかし、その割に一般的な知名度はいま一つな面があります。

 たとえば筆者が、さる大企業の研修にうかがったさい、こんな経験をしました。渋沢栄一関連のネタを挟みつつ『論語』関連の講義をして、終わった後に懇親会に出席すると、出席者の一人からこう言われたのです。

 「いやー、渋沢栄一ってはじめて聞きましたが、すごい人なんですね」

 よくよく話をうかがうと、その人は理系畑を歩んでいて、そもそも歴史にほとんど興味がなかったとのこと。確かに、立場を変えて考えてみれば、こちらだって理系の知識は「サイン、コサイン、タンジェントって何だっけ」と思ってしまう程度の理解力しかないので、どっこいどっこいの話なのかもしれませんが…。

 しかし、それにしても活躍の度合いに比べて、知名度が低過ぎると思えてならないわけです。一体なぜこうなってしまうのか…。

 まず考えられるのは、その名前が冠せられる象徴的、かつ派手な団体や事象に乏しいことがあります。坂本龍馬といえば、「海援隊」に「薩長同盟の仲介」。吉田松陰といえば「松下村塾」。岩崎弥太郎といえば「三菱グループ」。福沢諭吉といえば「学問ノスゝメ」に「慶応義塾」。では、渋沢栄一といえば、「第一国立銀行?」「東京市養育院?」……どうにも渋いし、現在では残っていない名前ばかりなんですね。

一つのストーリーに収まりにくい活躍をしたせい

 それともう一つはテレビドラマ、特に大河ドラマで取り上げられていないことが、知名度の低さにつながっているという説もあります。実はこれには大きな理由がありまして――筆者自身も渋沢栄一記念財団の方々に、その理由を教えて頂いたのですが――一言でいえば、

 「あまりに多方面に活躍し過ぎていて、伝記を作成しようとしても収拾がつかなかった」

 ということになるようです。

 実は渋沢栄一には『雨夜譚』(岩波文庫)という自叙伝があるのですが、しかし、これは栄一が大蔵省を辞める時点で終わっていて、肝心の実業人となってからの活躍が記されていないのです。続編を作る動きもあったようですが、残念ながら、完成には至りませんでした。

 では、単に資料を駆使して作ればいいじゃないか、という話になるのですが、ここにかかわってくるのが、冒頭に挙げた話。栄一がかかわった企業の数は、約470社。社会団体は600前後。他にもアメリカや中国への親善活動、タゴール、孫文、蒋介石、グラント大統領との交友…。当然、その過程でかかわった人物や事柄、事件は、とんでもない数に膨れ上がっていくわけです。

コメント1件コメント/レビュー

仰る通りだと思います。戦前の日本には貧しくて学校へ進めない子供に対して地域の恵まれた家が学費を出し学校へ進めたり、地域の地主がお金を出したり、自分の土地を担保にお金を借り橋や道路を作るということが多々ありました。その理由も損得では無く、能力のある者が機会を得ないのは社会の損害、或いは社会が良くなることが自分の利益であるとの考えからでした。翻って現在の社会は同でしょうか?他人の利益まで私しようという卑しい輩ばかりが、特に企業家、会社経営者、役人、政治家といった指導的立場に立つ人間の中になんと多いことか。いくらアメリカの戦後政策として戦前派全て暗黒で全て悪という教育を続けてきたとしても日本人の劣化は目に余るものがある。最近では権利のみを教え義務には全く触れないとが多い。そろそろ日本人の美徳を取り戻さないと完全に手遅れになる。(2010/07/16)

オススメ情報

「明治の男に学ぶ中国古典」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

仰る通りだと思います。戦前の日本には貧しくて学校へ進めない子供に対して地域の恵まれた家が学費を出し学校へ進めたり、地域の地主がお金を出したり、自分の土地を担保にお金を借り橋や道路を作るということが多々ありました。その理由も損得では無く、能力のある者が機会を得ないのは社会の損害、或いは社会が良くなることが自分の利益であるとの考えからでした。翻って現在の社会は同でしょうか?他人の利益まで私しようという卑しい輩ばかりが、特に企業家、会社経営者、役人、政治家といった指導的立場に立つ人間の中になんと多いことか。いくらアメリカの戦後政策として戦前派全て暗黒で全て悪という教育を続けてきたとしても日本人の劣化は目に余るものがある。最近では権利のみを教え義務には全く触れないとが多い。そろそろ日本人の美徳を取り戻さないと完全に手遅れになる。(2010/07/16)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

妥当な内容の商品ばかりが並んでも、 お客様は喜んでくれない。

大倉 忠司 鳥貴族社長