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インフラ輸出、日本は本当に負けたのか

無謀な受注こそ「敗北」

  • 秋場 大輔

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2011年2月9日(水)

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 原子力発電プラントや高速鉄道といった社会インフラを主に新興国へ輸出しようという動きが活発化している。特にこの1年あまりは、世界中の大型プロジェクトがメディアを通じて紹介され、その中で日本企業連合がどのような立ち位置にあるかが盛んに報じられている感がある。

 さてその報道だが、日本企業連合が受注を獲得すれば“勝ち”、他国の企業に奪われれば“負け”と伝えられるのが大概のパターン。しかし、受注競争の最前線にいる当事者の受け止め方が、この世間の評価と正反対というケースが少なからずある。

破格の超長期保証で受注した韓国

 韓国企業連合が受注したアラブ首長国連邦(UAE)での原子力発電所プロジェクトはその1つ。2009年末に実施された入札では日本、フランス、韓国の企業連合が参加、日仏の一騎打ちという下馬評をよそに韓国企業連合が落札した。これをきっかけに、官民が連携してインフラ輸出を図らなければならないという国内世論が急速に高まった。日本勢にとってはいわくつきの案件だ。

 「UAEの原発プロジェクト入札前後で韓国勢の様子が違う」と日本の原発関係者は言う。トルコが黒海沿岸のシノプで建設を予定している原発プロジェクトは当初、韓国企業連合が受注するべく交渉が進められていたが暗礁に乗り上げた。その後、トルコ政府は交渉相手を「オールジャパン」に切り替えた。

 さらに韓国勢はヨルダンで予定されている原発プロジェクトへの参加も断念。「UAEを取った時の勢いがない」(同)。

 UAEプロジェクトの入札価格は日仏の各320億ドルに対し、韓国勢は200億ドルだったと言われる。1兆円近い安値を提案したことに加え、60年間にわたって原発の運転を保証するという条件が韓国勢落札の決め手になったと言われる。だが、ここにきて「破格の条件を提示し過ぎたとの思いから、トルコやヨルダンでは慎重な姿勢を保つようにしているのではないか」と大手プラントメーカー幹部は分析する。

 原発関係者が「特に破格」というのが60年間という運転保証だ。原発の実用炉を世界で初めて完成させたのは1954年の旧ソ連と言われる。もっとも現在、世界の主流である軽水炉型原発となるとやや時代が下り、加圧水型(PWR)は1957年、沸騰水型(BWR)は1960年がそれぞれ運転開始の年。ちなみに日本は1963年に茨城県東海村で発電したのが最初だ。

 つまり世界中の原発で60年間運転し続けたプラントはない。その後の技術の進展を勘案したとしても、60年という保証期間中に原発プラントを更新する可能性すらあるわけで、冷静に考えれば韓国勢はUAEにかなり思い切った長期保証を約束してしまったと言える。

 「UAEでは確かに韓国勢が受注した。しかし破格の条件だったこと、その後のトルコやヨルダンでは日本勢が交渉を有利に進めていることを考えると、『UAEで日本勢は負けた』と言われるのはどうも納得が出来ない。総合的に見れば勝っているのではないか」(電力会社幹部)

コメント14件コメント/レビュー

これまで日本勢はさんざん海外プロジェクトで煮え湯を飲まされてきましたから、その分、経験は溜まったと思います。今のBRICSは世界中からチヤホヤされて付け上がってますから、冷静に採算を見極めることが必要でしょう。TT(2011/02/14)

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いただいたコメント

これまで日本勢はさんざん海外プロジェクトで煮え湯を飲まされてきましたから、その分、経験は溜まったと思います。今のBRICSは世界中からチヤホヤされて付け上がってますから、冷静に採算を見極めることが必要でしょう。TT(2011/02/14)

韓国の異例の破格保証は韓国メディアで取り上げられ、私は第一報をそちらで読みましたが、こういった「裏」をちゃんと報道して下さることは、報道の基本と思います。一流紙に置いては感情的・情緒的勝利など、報道の価値が無いのですから、利と理の観点での報道をこれからも望みます。(2011/02/14)

 M&Aやインフラなどの投資案件にや、必ず「ババ」が存在します。オランダのABNアムロ銀行を巡るM&A合戦では、「勝者」であったはずのRBSが破綻・国有化の道を辿ったのに対して「敗者」だったはずのバークレイズが逆にその買収資金を転用して破綻したリーマン・ブラザーズを格安で買収して躍進を遂げたように、「相手にババをつかませる」のも重要な競争戦略です。 ババをつかまされた相手はその処理が終わるまで他の案件ではハンデを背負う(人的資源から資金まで拘束されているため)ので、たとえば原発については次の大型案件ではフリーハンドを持っている日仏の一騎打ちとなるのではないでしょうか?(2011/02/14)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官