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その援助でアフリカを救うか、東北を救うべきか?

平野克己・アジア経済研究所上席主任研究員と考える「アフリカビジネス」(最終回)

2014年1月16日(木)

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池上:平野さん、正直なところ、「アフリカのこれから」ってどうなるんでしょう? 

平野:ずばり、来ましたね(笑)

池上:はい。消費市場が爆発するだけで、経済が成長する、という流れには限界がありますよね。一方、これまでの話からすると、アジアのように製造業が先進国から移転して開花する、というのも難しそうですし……。

平野:おっしゃる通りです。私は、「アフリカの経済の将来はどうなるんでしょうか?」と聞かれたら、あえて「楽観的な見通しをするのは、気をつけたほうがいいですよ」と答えています。

池上:気をつけた方がいい……つまり、結構やばいかもしれない、と。

平野 克己
アジア経済研究所上席主任研究員(写真:大槻純一、以下同)

平野:一部の楽観論は、アフリカはこれまで成長の牽引力となった資源ビジネスの伸びがどこかで止まったとしても、人口増による内需の拡大が経済成長を支え続ける、という意見です。この意見、かなり怪しいですね。資源ビジネスでアフリカに流れ込んでくるカネと、国内消費で喚起されるビジネスで動くカネとではケタが違いますから。

池上:石油だ天然ガスだ白金だ鉄鉱石だ、という、資源ビジネスの規模はすさまじく大きいですものね。いくらアフリカの内需が成長していようとも、資源ビジネスの規模を代替できるわけではない、ということですか。

平野:いまアフリカは、原油と鉱産物で総輸出の7割を稼いでいます。およそ4500億ドルです。資源高でその輸出収入が伸び続けた。その外貨収入で大量の商品を輸入し、それが消費爆発を支えている。資源ブームが終われば、それができなくなります。

 それともう1つ、アフリカには深刻な問題が残っている。食糧問題です。

池上:現在10億人。さらに増え続けるアフリカの人口を支えるだけの食糧を、アフリカ大陸では自給できない、という前回の話ですね。たしかにアフリカは、アジアやヨーロッパ、アメリカと異なり、コメや小麦やトウモロコシ、大豆など主要穀物を大量生産できる農業地帯がありません。

平野:その通りです。サハラ砂漠以南の、いわゆる「サブサハラ」のアフリカ49カ国の食糧生産量は、農村の自給分と、あと15%の人口しか賄えないのです。なのに、都市人口は40%ある。つまり総人口の25%は輸入か援助で食糧を得ているのです。

食糧問題解決無き人口増はデメリットでしかない

平野:砂漠地帯の北アフリカはサブサハラ以上に食糧依存度が高い。アフリカ大陸全体では年間7000万トンの穀物を海外から輸入していて、地域別にみれば世界最大です。世界最大の穀物輸入国はわが国日本であり、その日本を中心に、最大地域はながく東アジアでしたが、2009年にアフリカは東アジアの輸入量を超えてしまった。アフリカ農業の問題は、いまやわれわれ東アジアの穀物調達にも影響する問題になりました。

池上:しかも、人口が増えているから、穀物輸入量は伸び続けていますね。誰がアフリカの人々を養うのか。これは大問題です。

平野:アフリカ開発最大の課題は今でも食糧問題であり、穀物の自給体制を確立することです。農業革命を成就できない限り、アフリカは食糧を輸入に頼らざるをえないし、貧困問題も解決しないので、社会の不安定性は解消されません。GDPは低いのに人件費は高い、という前回お話したアフリカの弱点は、解決しないのです。

池上:食糧問題が解決しない限り、巨大な人口、増え続ける人口は、メリットではなく、デメリットになりますね。でも、人口が増えることがアフリカの魅力なんだと、BRICsを命名した米国のエコノミストが言っていました。ナイジェリアがアフリカの成長株なのも人口が多いからと言われています。

平野:ついこのあいだまで、アフリカの貧困問題の原因は人口爆発だと言われていたのです。食糧問題を抜きにして「アフリカの魅力は巨大な人口だ」と喧伝するのは、私からすると、過去の議論をほったらかしにする無責任な議論か、あるいは“ためにする”論です。

池上:なぜ、名うてのエコノミストが素人考えのような意見を世界に発信するのでしょう?

平野:私の推測はこうです。アフリカビジネスの最前線で動いているお金は投資マネー、エクイティファンドなんです。金融機関などがエクイティで資金を集めてアフリカに投資しているんですね。資金が集まらないと話が始まりません。だから彼らは必死で資金を集めている。そこで、アフリカは投資に最適の場所ですよ、というメッセージを発信することで、投資マネーが集まりやすいようにしている。

池上:つまり、「ポジショントーク」なんですね。

平野:私にはそう見えるのです。

コメント7件コメント/レビュー

アフリカを救う? 何から? 何のために? アフリカの資源をうまく入手できればそれで問題ないでしょう。(2014/01/18)

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「その援助でアフリカを救うか、東北を救うべきか?」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

アフリカを救う? 何から? 何のために? アフリカの資源をうまく入手できればそれで問題ないでしょう。(2014/01/18)

日本の国益からの戦略と同時に、世界の貧困撲滅とか紛争解決のために、日本がちょっとした寄付を行い続けることは、日本の国としての品格を高める上でも不可欠だろうと思います。本来は、平野氏が述べているように、アフリカへの支援をやめてしまえというような「1かゼロか」ではないのに、どうしても、庶民レベルの議論になると、「1かゼロか」になりがちなのが残念です。(2014/01/17)

(2/2)第二に、『貧困層への援助という考え方は断固として排除する』。貧困層が多く、困窮度合いがひどい国ほど多くの援助が得られるとしよう。自分がその国の統治層だったら、貧困層を減らすために努力するだろうか?それとも、増やすために努力するだろうか?・・・当然後者なのだ。これは単なる思考実験ではない。アフリカで実際に起きたことであり、金儲けがらみばかりで卑しいと人道趣味者から非難されていた日本による東南アジア開発援助では“実際に起きなかった”ことなのだ。第三に、『援助は、発展中の国ほど多く得られるようにする』。2と逆に、国内をうまく統治し開発を進めるほどに多くの援助が得られるようにすることは、その国の統治層に対して発展と国内安定を進めさせる最高の動機付けとなる。「発展中」が「成熟」になれば、援助を削減すればいいが、それまでは、自国を上手に発展コースに載せられた指導者にこそ報いるようにするべきである。そして、援助の規模を大きくでき、返済資金を確保するためにも国内を発展させなければならないという動機づけになる面から、有利子援助はもっと評価されていいと考える。繰り返しになるが、被援助国が自律的に教育・治安・医療・インフラを高い水準で維持できるようになる手助けをする、それこそが最上の人道援助なのだ。(三諸)(2014/01/17)

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