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無印流のネット・店舗連携が奏功
ネットストアの年商、3年で3倍に
【組織改革】良品計画 「無印良品ネットストア」

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  • 2007年8月22日 水曜日
  • 小林 直樹

電子商取引(EC)サイト「無印良品ネットストア」の売上高が3年で3倍増。最大店舗の有楽町店を抜いた。
実店舗でネットストアを積極的に告知し、商品情報やクーポンを配信したことで双方の売り上げが伸びた。
ネット上では消費者参加型の商品開発企画コーナーも常設。「無印ファン」を地道に育てている。

 「無印良品」ブランドで衣料品や生活雑貨、食品などを製造・販売する良品計画。同社の電子商取引(EC)サイト「無印商品ネットストア」が絶好調だ。2007年2月期の売り上げは50億円を突破。3年連続で前年比40%を超える伸びを見せている。2006年3月には、最大の旗艦店である東京・有楽町店の月商を上回った。

 躍進のきっかけは何だったのか。宣伝販促室e-マーケティング担当の川名常海課長は、「実店舗の集客のために目玉商品情報を載せたメールマガジンや期間限定のクーポンを積極的に配信するようになって、ネットストアの売り上げも伸びた」と語る。実のところ、ネットストア強化策というよりは、実店舗の集客・売り上げ増のためにネットを利用しようと取り組んだ戦略が、結果としてネットストアの急成長にもつながった格好だ。

対立しがちな実店舗とネットストアが協力し、集客・売り上げ増に成功
「良品計画」

実店舗とネットが競争から協調へ

 ネットストアは2000年9月の開店から3年間は伸び悩んだ。全社的にも業績が低迷し、無印良品のブランドパワーが落ちていた時期と重なる。

 当時のネットストアは、200以上ある店舗の中の一つという位置づけにすぎず、例えば有楽町店が町田店の宣伝をしないのと同様、実店舗とネットストアの間に連携はほとんどなかった。「来店客とネットストア訪問客は別の人」と考えていたためだ。

 2003 年になって、その前提が覆された。ネットストア訪問者のアクセス動向を調べると、品ぞろえや機能のチェック、店舗の場所の確認など、店舗に行く前の下調べに利用するケースが増えていることが分かったのだ。

 来店客とネット訪問客がイコールで、双方を行き来しているのなら、運営面で連携すればもっと店舗への集客が期待できる…。この仮説に基づいて、良品計画は2003 年秋からネットストアの位置づけを見直し、実店舗と互いに協力し合う体制に変えた()。

図 良品計画が実施したネット・店舗連携の概要
MUJI.net

 具体的には、(1)来店客にネットストアの存在を告知することで、無料の会員制サービス「MUJI.net」の会員に登録してもらう、(2)会員に商品カタログやセール情報などを載せたメールマガジン、期間限定クーポンを配信して来店を促すという戦略だ。まず実店舗で、店頭チラシやカタログを使ってネットストアを積極的に告知するようにした。

クーポン配信で20万人以上が来店

 「お客がネット購入に流れたら来店客が減る」と不安視する声もあったが、懸念は杞憂(きゆう)に終わった。ネットストアの店頭告知で急増したMUJI.net会員は、実店舗のセール情報のニーズが高く、現在でもネットストア購入未経験者が会員の6割以上を占める。「現在の会員数は約120万人。年4回の『無印良品週間キャンペーン』で全品10%オフのクーポンを会員に送ると、10日間の期間中にのべ20万人以上が来店してクーポンを利用する」(川名氏)。

 この取り組みが奏功し、全社の売上高が上昇に転じた。2002~2004年の売上高は、対前年比で5.3%減~3.7%増と停滞したが、2005年以降は6.3%増~9.2%増と好調だ(いずれも2月期)。ネットストアも、実店舗客が多数訪れて一部がネット購入したことで売り上げが急増した。

 ネットストアが実店舗の販売促進も兼ねることで、MUJI.net会員を共通の顧客基盤として、来店頻度アップとネットストアの新規顧客開拓を同時に実現できたことが成功の要因だ。ネット会員制サービスの活用が、売れる仕組みづくりのカギだった。

消費者参加型で優良顧客を育成

 無印ブランドの向上にもネットは一役買っている。無印良品サイトの「ネットコミュニティー」で、消費者が商品開発に参加する企画を常設。アンケートで商品コンセプトや素材、デザインなどを決め、購入予約が一定数を超えたら商品化する。

 実際にここからヒット商品が登場しており、「持ち運びできる灯り」「体にフィットするソファ」「壁棚」は累計60億円を売り上げた。2006年8月に商品化された、着け心地がよくて形が崩れにくい「ワイヤレスブラ」もクチコミで人気が広がっている。今後は無印良品ファンが発する情報がより一層売り上げ増加に貢献しそうだ。

川名 常海氏

川名 常海氏
良品計画
宣伝販促室 e-マーケティング担当課長

今後の課題は、「無印のある生活」の体感マーケティング。仮想空間「セカンドライフ」がその場になりうるかどうか注目している。



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