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「トヨタがソーシャルゲームを提供、クルマの楽しさ知ってもらう」
トヨタマーケティングジャパン、トヨタモーターセールス&マーケティング社長 高田坦史氏インタビュー

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  • 2010年12月21日 火曜日
  • 杉山 俊幸

トヨタマーケティングジャパン、トヨタモーターセールス&マーケティング社長 高田坦史氏

トヨタマーケティングジャパン、トヨタモーターセールス&マーケティング社長 高田坦史氏

 若年層を中心とした「クルマ離れ」に対して、トヨタ自動車はソーシャルゲーム市場に参入し、ゲームをしながらクルマに擬似的に接し、その楽しさを感じてもらう戦略に打って出ることが本誌取材で明らかになった。それを販売回復にどうつなげていくのか。狙いをトヨタのマーケティング関連子会社、トヨタマーケティングジャパンの高田坦史社長に詳細に聞いた。まずは、自動車販売を取り巻くマクロ環境から語り始める。

Q 2010年も年の瀬となりました。短期的には業績面で浮沈の激しかったこの2年ですが、2011年をどう展望しますか。

A 2008年半ばから顕在化した金融危機は、世界の自動車市場を急激に縮小させ、リーマンショックを経て2009年1~3月まで我々は底なしの恐怖を味わいました。国内市場は補助金などの景気対策で一息つき、今年9月の打ち切りで自動車販売が反落するなど動きは激しいが、いったいどこが「平時の水準」なのか見極めないといけません。現在の実勢は底であった2009年1~3月の延長線上にあり、つまりまだ大変厳しい状況が続いているとの認識です。

 マーケティングのツールとしてケータイの活用が注目されていますが、自動車業界にとってケータイの存在は痛し痒し。クルマの1つの効用が移動することだとすれば、ケータイの圧倒的な進歩と普及でニューヨークにいる知人とあたかも隣の部屋にいるような感覚で話ができる。移動するニーズが減っているのです。

 そして問題なのは、子供を持っている世代が色々な要因でクルマ離れをしているから、その子供たちは自動車に接する機会すらなくなっているということなんです。

Q そうした長期的な課題に、打つ手はあるのでしょうか。

A まだ公表していませんが、2011年年初に展開していく施策の1つとして、トヨタはソーシャルネットワークゲームを活用した新しいブランドアクションを考えているんです。これは単にプロモーション用のゲームを作り、遊んでもらうことが目的ではありません。ソーシャルネットゲームというカルチャーの中でクルマの新しい体験をしてもらい、若者やゲームマニアの間で共有してもらう機会づくりを目的としています。クルマを売るためのプロモーションではなく、クルマそのものへの関心とクルマ文化の活性化に集中した戦略にトライするフェーズに移行していきます。

 クルマは移動するという効用のほかに、カッコイイと自己満足したり、知人に見せびらかしたり、ステータスシンボルだったり、色んなエンジョイの仕方があるはずなんです。いま若者にいきなり現実のクルマ体験をしてくれ、といってもハードルが高すぎます。でも、ソーシャルネットゲームというメディアがステージであれば気軽にクルマの楽しさを再発見してもらえる、と考えました。

「B to C」から「C with C」の発想に転換

Q 具体的に、誰がゲームを作るのですか。

A クルマの楽しさを実感できるようなソーシャルネットゲームのアイデアを募集するアワードを考えています。いまの生活者はメーカーから与えられた企画にはなかなか乗ってきてはくれません。これからは「B to C」から「C with C」の発想に転換することが重要です。つまり、クルマの楽しさを生活者に啓発するのではなく、生活者による生活者のためのクルマの楽しみ方をトヨタがプロデュースするという発想です。

 まずはトヨタが、日本が世界に誇るクリエイティブな才能を持ったゲームファンを対象に、クルマを楽しむためのゲームアイデアを公募します。そして優秀なアイデアを第三者と厳正な審査の上で選出し、トヨタが開発をサポートすることでサービスインします。こうした過程を経ることで、トヨタのファンになってくれたらいいなと思いますね。

Q 出来上がったゲームを、利用者はどこで楽しむのですか。

A 公募するのはソーシャルネットゲームの原案です。ゲーム制作会社の参画も、個人の才能を生かしたアイデア応募も、参加資格は問いません。だから、それぞれの得意なゲーム領域も違えば、プラットフォームも違うと思います。だからこそ面白い。優秀なアイデアがどのプラットフォームとマッチングするのか、アイデアの適性を見て遊んでいただくための場所も変えたいと思います。ただし、今のソーシャルネットゲームの動向を見ると、SNS、「iPhone」などのスマートフォン、ケータイWebなどのアプリとして接してもらう可能性が高いですね。

Q 「Twitter」などソーシャルメディアを使ってトヨタやトヨタ車に接してもらう方法もあります。

A マーケティングツールとしてのネット活用の長期的なブランド効果は、まだ十分に評価できていません。それは当社に限らないことでしょう。もちろん短期的な集客やバイラル、そして顧客リテンションのツールとしては絶大な可能性が認められています。ただし、ネットメディアを介した長期的なブランド効果や今回のようなクルマ文化の育成などへの効用はまだこれからの領域であると考えています。今回のゲーム活動も将来的にどのくらいの若者がクルマファンになってもらえるのか、その継続性やトラッキングが必要だと思っています。2011年は、各企業ともに試行錯誤を繰り返しながら、まだ定まっていないその効果を見定めていく年になるんでしょうね。

Q 具体的にどう評価していくのでしょう。

A これもまだ公表していないのですが、実は今、私が社長をしているトヨタマーケティングジャパンとそれを統括するトヨタモーターセールス&マーケティングが運営元となって、トヨタの販売店に参加してもらって、“クローズドなSNS”を検討しているところなんです。

Q どんなものですか。

A メーカー(トヨタ自動車)に対して意見や質問があれば、それを忌憚なく言ってもらう。販売店のスタッフ同士で意見を戦わせてもらうことなどを考えています。ソーシャルメディアに取り組むなら、きちんとした運営をやっていかないと。炎上とかのネガティブな問題への対応だけではなく、どんな運営をすれば活気あるプラットフォームになり、参加者する皆さんがスムーズに発言し合える場になるかを考える必要があります。運営のノウハウを蓄積すべく練習中です。

Q トヨタと販売店の間では、馴れ合いになって練習にならない恐れはないですか。

A いやいや。今度の新車は今ひとつだな、とか辛辣な意見を期待しています。クローズドSNSの上で、互いに熱い議論したって構わない。メーカーにとって一番大切なことは、いい商品を作ること。そのためにはマーケットを知らないとできません。その顧客に一番近いところにいるのは販売店です。その意見を聞くのに1つずつやっていくより、ネットを使えば効率的にできるはずです。

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