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「百貨店周辺の店舗と協力して、街をオムニチャネル化する」 ――J.フロント リテイリングが明かした新事業構想
「モバイル&ソーシャルWEEK 2014」報告(3)

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  • 2014年7月25日 金曜日
  • 中村 勇介

 「オムニチャネルの実現により創出されたビジネスモデルが、百貨店にとって次世代の業態となる」――。

 日経BP社主催のデジタルマーケティングの総合イベント「モバイル&ソーシャルWEEK 2014」の2日目の基調講演でJ. フロント リテイリング(JFR)の山本良一社長は、オムニチャネルが開く未来を、冒頭の表現で描いてみせた。同社は昨年から、百貨店事業の大丸松坂屋百貨店や商業施設事業のパルコにおいて、オムニチャネルの実現に向けて、様々な取り組みを展開してきた。

J. フロント リテイリングの山本良一社長

 まだ、道半ばではあるものの、「これまで百貨店に来店してもらいにくかった、30~40代のお客さんの利用が非常に増えた」(山本社長)などの成果が出ている。3月からは社長直下のグループ横断型の組織「グループIT新規事業開発室」を設置。2014~16年度の中期経営計画において、「リアル店舗の強みを活かしたオムニチャネル・リテイリングの推進」を重点的に取り組む施策の1つに掲げ、オムニチャネル化を強力に推進していく方針だ。

 JFRがオムニチャネルを推進する大きな理由は消費者の変化だ。山本社長は、3つの消費志向の変化を挙げる。ブランド志向から、ブランドを問わず自分にとって必要な商品を厳選する「バリュー消費」、ファストファッションが人気を集めるなど「ファッションのカジュアル化と低価格化」、そしてネットを活用して自由に情報取得や消費をする「消費者の情報化」だ。

 「バリュー消費」と「ファッションのカジュアル化と低価格化」という2つの変化に対応するために、雑貨販売事業の東急ハンズや、ゲーム「ポケットモンスター」のグッズ専門店「ポケモンセンター」を自社店舗に取り入れるなど、幅広い顧客層の来店を目指した店舗の再開発を進めた。その結果、「2013年度は営業利益(418億1600万円)、経常利益(405億200万円)、純利益(315億6800万円)のすべてにおいて、JFR設立以降、最高を達成」(山本社長)した。

 そして、次に挑むのが「消費者の情報化」への対応、すなわちオムニチャネルの実現だ。スマートフォンを使い、ネットと店舗を自由に行き来して買い物を楽しむような消費者が増えている。だが、こうした消費行動に「百貨店は対応できていない」と山本社長は言う。

店舗事業が抱える3つの制約

 その理由として大きいのは、百貨店などの店舗事業が抱える3つの制約だ。時間や場所にとらわれず商売ができるEC(電子商取引)事業者に対して、店舗事業は「時間」と「距離」という2つの制約がある。そして3つ目が、依然として実店舗が販売チャネルの中心という「チャネル」の制約だ。この制約によって、「販売機会、顧客との接点の損失が加速している」と、山本社長の危機感は強い。

 こうした機会損失を防ぐためにも、オムニチャネル化は喫緊の課題になっている。
 
 例えば、アパレル大手のワールドと取り組んでいるのが「クリック&コレクト」と「エンドレスアイル」という2つの施策だ。クリック&コレクトは大丸松坂屋百貨店のECサイトで商品を購入した場合に、自宅か店舗のいずれかで商品を受け取れるサービスだ。一方のエンドレスアイルは、店舗で顧客の求める商品の色やサイズが無かった場合に、販売員がECサイト上の在庫を調べて購入できるようにする施策で、販売機会の損失を防ぐのが狙いだ。

 ネットと店舗を連携させて自由に商品を購入できるようにするだけではなく、ITを活用した店舗の利便性向上にも努める。「店舗の奥にカード読み取り機がある場合、クレジットカードを販売員に預けることを不安に思われている可能性もある」(山本社長)。

 そこで、モバイルデバイスを使った決済サービスの導入によって、目の前でカードを読み取れるようにする。あるいはネットを介した事前決済をできるようにするなど、決済手段を顧客が選択できるようにして、不安を解消する必要があるという。このように、顧客の望むサービスを提供して、「百貨店の強みであるホスピタリティーを高める」ことも、顧客拡大には重要だと山本社長は考えている。

 自社の店舗とECサイトをシームレスに利用できるようにするだけではなく、店舗周辺にある他社の店舗などとも協力関係を築く、「街のオムニチャネル化」(山本社長)という構想も明かした。例えば、松坂屋上野店は2017年度にパルコ、シネマコンプレックス(複合映画館)と連携した複合ビルに生まれ変わる。これに合わせて、ネット上にバーチャルなコミュニティーを設けて、周辺情報を提供するなどして、街の活性化を目指す。

 最後に山本社長は、「これまで百貨店が事業を継続できたのは、顧客ニーズの変化に対応して、さまざまな変革をしてきたからだ。これからも顧客の求めるサービスに限りなく近づけるべく、トライ・アンド・エラーを繰り返して、JFR流のオムニチャネルの確立を目指す」と、百貨店事業の変革に強い意志を示して講演を締めくくった。

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