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1に資金繰り、2も3も資金繰り

毎日そのことばかり考えるのが経営者

  • 渡邉 美樹

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2011年12月26日(月)

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ガラス張り経営で信用を得る

 私はすべてガラス張りの経営をしました。売り上げ、利益の使い道は、私の生活費8万円を引いて、人件費や水道光熱費、お取引業者様への支払いもすべて銀行通帳に記載しました。つまり、この通帳の中で説明のできないお金が一切ないのです。

 この8万円以外は、何に使っているか全て通帳を見れば分かります。それを毎日毎日繰り返しました。売上も1円残らずレシートとまったく同じ金額がそこに入ります。

 そして、毎月その通帳全部とその1カ月の損益計算書を銀行の支店長に見せました。私は信用を作りたかったのです。そんなことを続けていたら、当時の大手銀行では例のない居酒屋に融資を実行したのです。その銀行では創業以来初めてのことでした。これがワタミに対して信用をいただけた証です。ありがたかったですね。

 ただし、簡単ではありません。信用を築いた上に、2号店の精細な事業計画を作り、リサーチをして誰もが納得できるような「儲かるストーリー」を見せました。さらに、私は融資金額分の生命保険に入りました。受け取り人は銀行ではありませんが、生命保険の写しを支店長に出し、事実上「ダメだったら死んで返します」という意思表示ですね。それでやっと2号店の融資が出ました。

融資課長に人間性を否定された

 その後、銀行との関係は段々良くなっていきました。4号店を出した時に、5号店目は2000万円の融資枠がある、と銀行に言われていました。「信用枠」というものでしょう。あなたの会社はいつでもこれだけ使ってくださいということです。

 でも、4号店目で大失敗をしてしまいました。そして2000万円を借りに行ったところ、銀行の支店長は居留守を使って会ってくれない。最終的に私は朝、銀行の前で支店長を待ち伏せて、どうにか中へ通していただけた。

 ところが、支店長は現れず、融資課長から「あなたは支店長が居留守を使っているのが分からないのか」と言われた。でも、もう会社がピンチなので、「あの時に約束した2000万円を貸してください」とお願いするしかない。ところが、融資課長は「あれはあなたの会社が調子良い時の話でしょう。今にも倒産しそうな会社に誰がお金を貸すんですか」と言うのです。これには大変驚きました。

 私が「だけど、それは約束でしょう。その2000万円があれば立て直せるのです。その2000万円を信じて私は経営していたんです」と言っても、「あれはあの時の話だ」と言うだけです。そして極め付きの言葉は「あなたはしょせん3店舗の経営者の器なんだ。あなたの事業計画うんぬんの問題ではない。あなたの人間の器ではお金を貸せない」でした。

 私は経営者生活が27年半になります。その間、あれほどの屈辱を味わったことはありませんでした。事業計画とか経営技術などではなく、人間性を否定されて本当に悔しかった。

 その悔しさと同時に、会社が倒産してしまうという焦りでいっぱいでした。ですが、本当に幸運なことに、お取引業者である酒屋さんが2000万円の現金を持って助けてくれたんです。「これで何とかしろ。あなたはこんなところで潰れる男じゃない」と。

日本製粉から40%の出資を得て信用を補完

 こうして、何とか苦境を切り抜けました。でもそれからも経営難は続きます。

 銀行は1銀行ごとに1店舗分しか融資してくれません。つまり、それぞれの銀行は1店舗分の1億円の借金返済が終わるまでは次を貸してくれない。そうすると、投資を回収する5年間が過ぎなければ次の融資が受けられないのです。

 そこで、別の銀行に出向いて1店舗分を借りる。また次の銀行に行って1店舗分借りる…。それも3つ4つの銀行が続くと限界になります。複数の他行で借りているので、全体としては「ちょっと借り過ぎている」と判断されてしまうわけです。

 そこで私は日本製粉に出資を求めました。つまり、今の私の資本では3つの銀行、つまり3店舗分が限界だからです。だから信用のある会社に、こちらを信用してもらえば良いじゃないかと考えた。「大手の会社がついている会社」になりました。

コメント6件コメント/レビュー

記事に対しては、大変な苦労と努力をなさったのですねとしか言えないですが、取引先がお金を貸してくれた、出資してくれた、というのは、ビジネスプランの出来栄えの良さなどではなく、社長自身の人格を信じてのものでしょう。銀行はともかく、取引相手からは信じてもらえた。一方で、銀行が融資の約束を断るときに人格否定をしたというのも、ひとつの見識です。生命保険で借金を返すという人は、結局のところ自分が死んだ後の後始末を考えていないのです。本人は事業と自分の命を一体のものだと思っているから、事業が破綻すれば、それは自分の死と同義だし、死を選ぶ予定だということは、つまり破綻した事業を再建をするつもりはないと自白しているようなもの。後始末は銀行がかぶれと。ところで、コメントにある、今年、ユッケの食中毒で多数の死者を出した焼肉屋は、2014年にJASDACに上場を予定していました。もし上場後にあの事故が起きていたら、どうなったでしょうか。(2011/12/30)

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いただいたコメント

記事に対しては、大変な苦労と努力をなさったのですねとしか言えないですが、取引先がお金を貸してくれた、出資してくれた、というのは、ビジネスプランの出来栄えの良さなどではなく、社長自身の人格を信じてのものでしょう。銀行はともかく、取引相手からは信じてもらえた。一方で、銀行が融資の約束を断るときに人格否定をしたというのも、ひとつの見識です。生命保険で借金を返すという人は、結局のところ自分が死んだ後の後始末を考えていないのです。本人は事業と自分の命を一体のものだと思っているから、事業が破綻すれば、それは自分の死と同義だし、死を選ぶ予定だということは、つまり破綻した事業を再建をするつもりはないと自白しているようなもの。後始末は銀行がかぶれと。ところで、コメントにある、今年、ユッケの食中毒で多数の死者を出した焼肉屋は、2014年にJASDACに上場を予定していました。もし上場後にあの事故が起きていたら、どうなったでしょうか。(2011/12/30)

厳しいですね。まさに人間を試されているんですね。信用の大切さとそれを生み出す苦労への理解が深まったように思います。それとともに僕が尊敬する「創業経営者が持つ責任感」の源泉の一つが分かりました。(2011/12/27)

典型的な危険愛好者の事例で驚きました。創業時に自分で開業資金を貯めて、事業を始めて「銀行より高い金利でお金を借りない」という所は、誰もが納得できるでしょうが、それ以降の借金により事業を拡大する手法は、いわゆるレバレッジを効かせる行為であり、失敗すれば破滅という限界までの投資という事になるのでしょう。そこまで踏み切れるかどうかが経営者の決断になるのでしょうが、成功するも失敗するも紙一重の部分も少なくないと思います。失敗した経営者の場合は、普通、表に出てきませんが、今年、ユッケで失敗した会社の若い経営者も、創業時は渡邉氏と同じような感覚で事業を開始したのだと思います。考え方自体は誰もが同じような思いで始めても、事業がうまく軌道に乗るかどうかは不確実な部分が多いので、多くの人がサラリーマンのまま躊躇してしまうのでしょう。ただ、資金繰りに関しては、コラムにある銀行の言い分は極めてまともであり、もしもあなたが、お金を貸す側でしかも人から預かっているお金を貸す立場であったら、当然に融資はしないのではないでしょうか。万が一にも失敗して、人様から預かっている大切なお金を返せなくなった場合は、責任の取りようがないからです。大きな事業をやる場合、銀行借入は必須となるでしょうが、「失敗したから借金は返せません」では済まないのあり、もしも倒産したら、無い袖は振れないというのを充分理解しているのは、借りる側の経営者よりも貸す側の銀行だと思います。経営者が失敗して借金を返せなくなっても、一蓮托生でしかたがないと思ってもらえるような株式上場が、最終的には正当な資金調達の方法でしょうが、その道は遠いと思わざるを得ません。なぜなら、そこまでたどり着くには、渡邉氏のように資金援助してもらえるような人徳あるいは協力者が必要であり、銀行や国は当てにできないからです。(2011/12/27)

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