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中川 雅之(なかがわ・まさゆき)

日本経済新聞記者

中川 雅之

2006年神戸大学文学部卒業、同年日本経済新聞社に入社。「消費産業部」に配属され、流通・サービス業などを担当。08年から10年は「デジタル報道部(現電子報道部)」を兼務し、日経新聞の「電子版」の立ち上げに携わる。12年から日経BPの日経ビジネス編集部に出向。15年4月から日本経済新聞企業報道部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

再録

登山家・栗城史多 挑戦の軌跡、世界に響け

2018年5月22日(火)

 5月21日、栗城史多さんの所属事務所は、同氏のフェースブックページ「栗城史多 "SHARE THE DREAM” (Nobukazu Kuriki "Sharing the Dream")」において「エベレストで下山途中の栗城が遺体となり発見されました」と発表しました。謹んでお悔やみ申し上げ、2013年3月11日号『日経ビジネス』の記事を再録いたします。

エベレストに4度挑み、跳ね返されてきた。手の指は9本、凍傷で失いかけている。それでも登る。頂をつかむその姿を、皆に届けるまで。

(写真:的野 弘路)

 「彼は登山家なのだろうか」

 日本を代表する女性登山家、谷口けいは、栗城史多に対してそんな思いを抱いている。谷口は栗城と対談したり、食事に行ったりと、公私にわたって交流がある。だが、同じことを生業にしているはずの谷口には、今年31歳になる栗城を言い表す適切な言葉が思い浮かばない。

 栗城は大学3年生の時に北米最高峰のマッキンリー(標高6194m)に登頂、その後、7大陸最高峰のうち6つの山を登っている。8000mを超える山もヒマラヤ山脈のダウラギリ、マナスル、チョ・オユーを制覇。一般の感覚で言えば、登山家との呼称に不思議はないように思える。それでも、谷口はその表現に違和感を禁じ得ない。

 「登山家に定義などない。だから他人が彼を登山家と呼ぶことも、彼自身が登山家を名乗ることも、おかしいとは言わない。だが外から見ていると、彼にとっては山を登ること自体より、その行為を人に見せることが重要なのではないかと思う」

 栗城の登山スタイルには、世界の多くの登山家と明らかに異なる特徴がある。それはインターネットを通じ、登山中の映像をリアルタイムで配信しようとしていることだ。

 2009年5月。栗城はダウラギリの山頂近くでカメラを回していた。標高は8000mを超える。平地の3分の1とされる薄い酸素に、呼吸は全力疾走した直後のように激しい。「岩だらけ…だね…。雪がないんだ」。カメラに話す実況は、合間に息継ぎが入り途切れ途切れだ。

 8167mの山頂にたどり着くと、カメラを岩場に固定し、その前で無線を握った。「こちら栗城です、BC(ベースキャンプ)、取れますか」。込み上げる達成感に、思わず声が上ずる。「2時、ちょうどに、頂上に着きました。正直、登れるなんて、思いませんでした」。

 辺りに人は誰もいない。快晴で風も少なく、感極まって発する言葉はたちまち大自然の静けさの中に消える。眼下には大半の人が一度も直接目にすることなく、一生を終える絶景が広がる。栗城のカメラを通じて、多くの人がその光景を目にする。

 標高8000mの高地は、休憩しても体力の回復が望めない「デス・ゾーン(死の領域)」だ。「1本の乾電池も重く感じる」という過酷な環境で、通常は少しでも荷物を軽くしようと努める。そんな世界に栗城は、重さ1.3kgの配信用機材を持ち込む。それがどれほどのリスクになるかを承知で、重い荷物を肩にかける。

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