佐伯 真也

佐伯 真也

日経ビジネス記者

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 最近、仕事で使うノートパソコンを買い換えました。厚さが約16mm、重さが約1Kgのいわゆる「Ultrabook」と呼ばれる製品。HDD(ハードディスク駆動装置)ではなく半導体メモリーを用いたSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)が記憶装置として使われているので、動作も軽快。仕事では、5年以上前に発売された機種を無理しながら使っていたため、業務効率は雲泥の差といえるほど高まりました。

 一つだけ慣れない点を挙げるとするなら、OS(基本ソフト)が米マイクロソフトの「ウィンドウズ8」であること。これまでの「7」から一新されたUI(ユーザーインタフェース)は確かに格好良い。スマートフォンのような直感的なタッチ操作を基本とするUIは、業務以外での用途では快適です。

 一方で、業務用として使うと、昔ながらのUIに慣れした筆者にとっては戸惑うこともしばしば。慣れの問題だと指摘されればその通りですが、同じような経験をしている読者の方も多いのではないでしょうか。

 もっとも、UIを一新したマイクロソフトにとって、過去の成功体験をある程度捨てるのは折り込み済みでしょう。同社が今後、業務用パソコンの分野で、どのように7から8への移行を進めていくのか、注目しています。

企業研究 将棋で鍛えたAIで、世界を変えるヒーローズ

ゲームで磨いたAIを活用して企業向けサービスへ

  • 2018年09月21日(金)

AI(人工知能)を活用した将棋ゲームを開発して、競争の激しい分野で圧倒的な支持を集める。磨いてきた技術の応用分野を企業向けビジネスにも拡大。人手不足などの解決を目指す。

(日経ビジネス2018年7月23日号より転載)

AIで対局を解析
「将棋ウォーズ」では、AI(人工知能)を活用して、対局時にユーザーが指したさまざまな手の良しあしを評価する
タブレット版の「将棋ウォーズ」を手にするHEROZの林隆弘CEO(左)と高橋知裕COO(写真=加藤 康)

 新作が続々と投入され、勝者と敗者の入れ替わりが激しいスマートフォン(スマホ)向けゲーム。競争が厳しい分野で、子供からシニアまで幅広い年齢層から圧倒的な支持を得ている将棋ゲームがある。

 「将棋ウォーズ」。HEROZ(ヒーローズ)が2012年5月に開始したオンライン将棋ゲームだ。対局は1日3局まで無料で、月額600円を支払えば、無制限に対局できる。アプリのダウンロード数は今年6月末時点で460万回を突破した。対局数は1日当たり約25万局に達し、1秒間に3局の対戦が組まれている計算になる。

 「単なるスマホゲームのヒットにすぎない」と思う読者の方もいるだろう。だが、躍進をけん引するのは、将来、世の中を大きく変えるかもしれない先端的なAI(人工知能)技術だ。

上達できる仕組みを盛り込む

 「将棋ウォーズには、対局を重ねることで将棋が上達する仕組みを盛り込んでいる」。HEROZの林隆弘CEO(最高経営責任者)はこう説明する。具体的には、対局中にプレーヤーが手詰まりになった際に、AIが代わりに最善の手を指してくれる。対局後に、プレーヤーが指したさまざまな手をAIが評価し、どうすれば勝利に近づけたかをアドバイスしてくれる機能もある。

 競争力の源泉は、従業員約40人の3分の2を占める技術者だ。その7割はAIアルゴリズムの開発者で、将棋の有段者も10人以上いる。AIと将棋に精通する技術者が「他社にはまねできない将棋ゲームを生み出した」(林CEO)。開発力は折り紙付きで、同社の技術者が開発したAI「Ponanza(ポナンザ)」は、13年にプロ棋士を破り、17年には佐藤天彦名人にも勝利している。

将棋AIの「Ponanza(ポナンザ)」は、17年に佐藤天彦名人との対局に勝利(写真=時事)

 将棋ゲームだけではなく、企業向けのビジネス分野でもAI技術を活用する。人手不足などを解決するために、さまざまな業界でAIの導入が加速している。これを商機ととらえて、「将棋ゲームで培った技術を横展開する」(高橋知裕COO=最高執行責任者)考えだ。

 実際、引き合いは強い。例えば、竹中工務店と組み、建築物の構造設計におけるAIの活用を目指している。竹中工務店が過去10年間に手掛けた数百件の構造設計データをAIで解析し、設計を支援する。HEROZはマネックス証券とも協業。投資家の売買の傾向をAIで解析し、投資スキルを向上させることを支援するサービスを提供する。

 この他、ソフトウエア検査のデジタルハーツホールディングス、ゲーム大手のバンダイナムコエンターテインメントやコーエーテクモゲームスとも提携。HEROZが協業する企業は数十社に増えており、企業がAIを活用する際の“駆け込み寺”となりつつある。

 HEROZを共同創業した林CEOと高橋COOは、共に早稲田大学卒でNECに入社した同期。「最初から将来の起業を決めていた」(林CEO)という。

 起業したのは09年4月。日本でも米アップルの「iPhone」が普及し始め、IT業界の勢力図が大きく変わろうとしていたが、リーマンショック後で資金調達の環境は決して良くはなかった。

    著者プロフィール

    佐伯 真也

    佐伯 真也(さえき・しんや)

    日経ビジネス記者

    家電メーカーで技術者として約4年間勤務した後、2007年6月に日経BP社に入社。専門誌・日経エレクトロニクスで、デジタル家電やディスプレーなどの最新技術動向を中心に記事を執筆。13年1月から日経ビジネス編集部で家電や電子部品業界を担当。15年4月から日本経済新聞社証券部へ出向し、ITや鉄道、紙パルプ業界を取材。17年4月に日経ビジネス編集部に復帰し、重電を中心に電機業界全体を担当。

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