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小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

◇主な著書
場末の文体論』(日経BP) 2013
もっと地雷を踏む勇気~わが炎上の日々』(技術評論社) 2012
小田嶋隆のコラム道』(ミシマ社) 2012

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明

「みんなで乗り越えた猛暑五輪」の思い出

2018年8月10日(金)

 この2日ほど、関東地方では台風の影響なのか、久しぶりに涼しい風が吹いている。

 おかげで、半月ばかり稼働しっぱなしだったエアコンに休息を与えることができた。
 気象庁によれば、台風が通り過ぎると、また猛暑がやってくるらしい。

 私自身は、梅雨が明けてからこっち、不要不急の外出を控えているので、さほど暑い思いはしていない。

 なので、
 「暑いですね」
 と言われた時には、
 「暑いのは無駄に頑張るからですよ」
 と、心の中でそう答えることにしている。

 心の中で言うのは、口に出してそう言うとカドが立つからだ。
 頑張っている人間を揶揄してはいけない。あたりまえの話だ。
 このあたりまえのことを悟るのに、私は、60年の時日を費やさねばならなかった。バカな人生だった。
 ともあれ、頑張っていない人間にとって夏は暑くない。これは大切なポイントだ。ぜひ、今後の生き方の参考にしてほしい。

 不要不急の用事をまるごと省くと、われら凡人の人生は、たちまちのうちに色あせ、立ち行かなくなる。
 というのも、われらが楽しんでいる娯楽の多くは、不要不急の活動に伴って生じるあぶくのようなものだからだ。

 たとえばの話、不要不急の外出を控えて自室に閉じこもっている私の日常は、甲子園の高校野球とMLBの大谷翔平選手出場試合を代わる代わるに視聴することでかろうじて持ちこたえているテの、はかない営みに過ぎない。

 もし、この時期に「不要不急だから」「野外での日中の運動は危険だから」という理由で野球が中止されたら、私は水を失ったサカナのように苦しむことになるだろう。

 ということはつまり、私が不要不急の外出を自粛し、なおかつ退屈を免れるためには、高校球児の諸君が炎天下の甲子園球場で汗にまみれてくれていないとならないわけで、言い換えれば、この世界から不要不急の活動をオミットしたら、少なからぬ穀潰しが退屈のあまり不要不急の愚行に自ら身を投じるに違いないということだ。

 今回は、オリンピックの話をしようと思っていた。
 当初の目論見では、「不要不急」という線で五輪不要論を展開するつもりでいたのだが、この論点はどうやら書き起こすまでもなくスジが良くない。

 理由は、私自身がスポーツ観戦オタクだからだ。

 つい先月まではW杯三昧のサッカー漬けで、この一週間ほどは打って変わって朝から野球まみれの日常を送っている。その、余暇時間の大半をスポーツ番組視聴に費やしているテレビ端末人間が、どの口でオリンピックを「不要不急」などと言えたものだろうか。

 ただ、どうせ始まってしまったら夢中になって観戦することがわかりきっているのだとしても、そのこととは別に、わざわざ五輪を東京に呼ぶ必要がないということは、この際、明確に主張しておきたい。

 世界中のどこの都市で五輪が開催されていようが、きょうび、おもだった競技はなんらかの形でテレビ中継される。とすれば、基本的に液晶観戦者である私のような半可オタクにとって、競技がどこで行われているのかは些末な問題に過ぎない。してみると、わざわざ世界中から選手団を招いて、莫大な予算を費やしてまでご近所で開催する必要はない。

 このほか、東京で五輪を開催してほしくない理由をひとつひとつ列挙していけば、それだけで当欄のページは埋まるだろう。

 が、今回、それはしないでおく。
 あまりにもわかりきった話でもあれば、私自身いくつかの媒体でさんざん繰り返してきた内容でもあるからだ。ついでに申せば、このテの話は、わかっている人には退屈で、賛成できない人にとっては単に不愉快なだけで、つまるところ不要不急なのだ。

 で、ちょっと角度を変えて、当稿では、五輪の地元開催を待望している人たちが、どうしてそう考えるのかについて、私なりに寄り添って考えてみることにする。

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官