北村 豊

北村 豊

中国鑑測家

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 昨年12月末に40年と9カ月勤めた会社を退職して無職の年金生活者となりましたが、幸せなことに健康で気力も充実。論語は「30にして立つ」ですが、今や“六十三而立(63にして立つ)”と思い定めて、中国鑑測家と名乗って文筆業に打って出ました。中国・キタムラリポートは2006年4月の日経ビジネスオンラインのスタート時点から連載を始めたもので、すでに丸7年が過ぎ、今年4月からは8年目に突入しますが、さらなる充実を目指します。

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」 弟子の尼僧が中国仏教協会会長をセクハラ告発

その背後に習近平の影響?

  • 2018年08月10日(金)
セクハラで告発された中国仏教界の最高指導者・学誠(前から2列目中、写真:ロイター/アフロ)

 8月1日、中国国民を仰天させる実名告発がネット上に流出した。それは北京市“海淀区”にある951年創建の古刹、“龍泉寺”の住職である“釈学誠”が、多数の“尼姑(尼僧)”に性的暴行を加えたばかりか、巨額の使途不明金があり、寺内の建築物の多くが違法建築であるという内容の告発であった。ネット上に流出した告発文は、A4用紙で95ページもの分量で、理路整然と証拠を揃えていて学術論文と言って良い程の物だった。その告発文の表紙には“重大状況滙報(重大状況報告)”(以下「報告」)と表題が書かれ、以下の内容が記載されていた。

 尊敬する“領導(指導者)”:
 こんにちは。北京・龍泉寺の“都監(監察事務の責任者)”である“釈賢佳”と“釈賢啓”の2人は、ここに謹んで貴方と政府関係部門に対して、北京・龍泉寺の住職である釈学誠の不法行為に関する詳細を報告致します。釈学誠の不法行為の背後には巨大な社会危機が隠れていることを我々は発見しました。

 釈賢佳、俗名:“劉新佳”、身分証明書番号:11010819751207899X、携帯電話番号:18910337253。2003年に“清華大学”工学博士号を取得、2004年に北京・龍泉寺で得度して出家。2018年1月まで釈学誠の“侍者(秘書)”、北京・龍泉寺の都監などを歴任し、龍泉寺内の“戒律”作法事務の責任を負っていた。

 釈賢啓、俗名:“杜啓新”、身分証明書番号:11022519701224242417、携帯電話番号:13960275035。2000年に清華大学工学博士号を取得、2006年に北京・龍泉寺で得度して出家。2018年1月まで北京・龍泉寺の執事、“監院(事務長)”、都監などの役職を歴任。現在は福建省“泉州市水春県”にある“普済寺”の住職。

 上記からも分かるように釈学誠に対する告発は、2人の尼僧が自分の実名を明かし、逃げも隠れもしない形で行ったものだった。但し、釈賢啓がメディアに語ったところによれば、報告の表紙に「尊敬する指導者」宛てと書いてあるように、報告は仏教界で尊敬を集める一部の“大徳(高僧)”宛てに提出したもので、まだ社会へ公開するつもりはなかったという。従い、報告が一体どこからネット上に流出したのか分からないと、釈賢啓は首を傾げている。とは言え、この実名告発はネットを通じて公開され、中国社会の注目を集めているおり、釈学誠の悪行に対する追及の「賽は投げられた」のである。

    著者プロフィール

    北村 豊

    北村 豊(きたむら・ゆたか)

    中国鑑測家

    1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員。

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