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御立 尚資(みたち・たかし)

ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー

御立 尚資

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。
日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。
国連WFP協会 理事、京都大学客員教授、複数の企業の社外取締役・NPOの理事も務めている。

■ボストン コンサルティング グループ ウェブページ

◇主な著書
使う力 知識とスキルを結果につなげる』(日本経済新聞出版社) 2013
変化の時代、変わる力 続・経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社) 2011
戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社) 2003

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」

顧客は、「買い手」から「サポーター」へ

2018年9月10日(月)

(写真=PIXTA)

 モノやサービス自体を売り込もうとするのではなく、それを提供する上での「自分たちの価値観」を明確に伝え、共感してくれる人たちにサポーター(という名の顧客)になってもらう。そういう姿勢のビジネスが増えてきていることを、ひしひしと感じる。

 最近行ったストックホルムのレストラン。ここは、写真美術館の中にある比較的カジュアルなレストランなのだが、単なる美術館併設レストランではなく、わざわざこのレストランに食べにくる人たちが数多くいる有名店だ。店の中心部はオープンキッチンで、数多くの調理スタッフが忙しく立ち働いている。清潔で整頓されたキッチンは、カウンター越しに顧客側から丸見えだ。

 そのカウンターの上部に、自分たちの価値観、あるいは目指すところが手書きで掲げられている。曰く「よりグリーンで持続可能な食事こそが、未来に素敵な後味を残す」、「創造性の欠如が、フードウエイスト(食べ残しや、使われず無駄になる食材の部分)を生む。言い訳無用」といった具合だ。できる限り地元産の食材を使った、野菜の多いヘルシーな料理が並ぶのだが、その背景にある自分たちの思いを、目につく場所にはっきりと謳っている。

 これは、顧客の側にも、無駄な食べ残しなどをして欲しくない、という意思表示でもある。実際、各テーブルには、どうしても残してしまった場合のために、持ち帰り用の紙製の箱が用意されている。ここまでされると、これはあざといとか、気に入らない、と言う顧客もいるだろうが、「それはそれでよし。できれば、賛同してくださる方々中心に、ビジネスをしていきたい」と本気で思っているのが伝わってくる。

価値観を打ち出し、顧客はサポーター

 また、何を目指しているかを顧客に宣言することで、働き手に対しても、自分たち自身を律する基本ビジョンが明確に伝わるはずだ。普段の仕事の中で、個々に求められることが明らかになり、食材の無駄を減らすメニューの工夫、あるいは提供する量の小型化などが首尾一貫して、仕事の中に組み込まれるだろう。さらに言うと、もっと違った方向に美食の方向性を求めたい人たちは、ここで長くは働かないだろうし、価値観を共有する人が残っていくことになる。

 こういった「必要以上に工業化しない」「持続可能性を具体的な形でビジネスに組み込む」という考え方のフードビジネスは、ポートランドでも見かけたし、東京や京都など日本各地でも、出てきている。

 ただ、この「価値観を打ち出し、顧客をそのサポーターと位置付ける」やり方は、持続可能性以外の価値観についても適用可能だし、事業領域もフードビジネスには限らない。

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ジェレミー・ハンター 米国クレアモント大学経営大学院准教授