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吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

吉田 忠則

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

◇主な著書
見えざる隣人』(日本経済新聞出版社) 2009
農は甦る』(日本経済新聞出版社) 2012

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

ニッポン農業生き残りのヒント

トマト栽培を10年で黒字化、カゴメの未来工場

2018年10月19日(金)

 農業を取材していると、いまも「アグリテック」などの言葉に抵抗感を抱く人が少なくないように思う。気持ちがわかるのは、現実の農家の多くはこれまで通りの農作業をこつこつこなし、日本の食料を支えているからだ。だが、新しい技術が生まれ、不連続な変化が起きようとしていると思わざるを得ないときがある。そんな農場が山梨県北杜市に登場した。

 農場の名前は「明野菜園」。1.9ヘクタールの環境制御型の栽培施設で、2014年12月に稼働した。運営しているのは、地元の農業法人のアグリマインド(藤巻公史社長)だ。栽培技術はカゴメが提供した。カゴメブランドのトマトはすでに全国のスーパーの生鮮コーナーで大きな存在感を誇っているが、その競争力を飛躍的に高める可能性を秘めた農場だ。

 最大の強みは、突出した生産性にある。栽培しているのは付加価値の高い高リコピントマトで、2018年の生産量は1平方メートル当たり70~75キログラムに達する見通し。同じトマトを一般の施設で作った場合、10キログラムに満たないことが普通なのと比べると、この施設の驚異的な収量が浮き彫りになる。もし他の種類のトマトを作れば、収量はもっと増える。

 高収量の秘訣は、二酸化炭素(CO2)の濃度のコントロールにある。既存の施設でも、植物の光合成を促進するために二酸化炭素を補給するのは一般的。だが、これまでの施設はハウスの温度や湿度を調節するため、天窓を頻繁に開け閉めしていた。そのため、いくら二酸化炭素を供給しても、外気が大量に流入し、濃度を一定に保つことが難しかった。

 これに対し、北杜市の施設は長方形の農場の一辺に設けたコントロールユニットの中で、二酸化炭素の濃度や温度などをベストの状態に近づけた空気を作り、施設内に供給する。空気を調整するこの空間を、「コリドー(廊下)」と呼ぶ。施設本体の空気の調節を天窓の開閉に頼らないため、虫が施設に入り込むリスクが小さい。当然、農薬の使用もぎりぎりまで抑えることができる。

 現場の様子を紹介しよう。コリドーに入ると、施設内を走る86本のビニールパイプの開口部がずらりと並んでいる。床から細いプラスチックのパイプがたくさん立っていて、二酸化炭素が噴き出ている。「吸ってみていいですか」と聞くと、「死にます」と言われた。この高濃度の二酸化炭素をコリドーで外気と混ぜ、最適な空気を作る。それをビニールパイプで施設に送り込む。

最適な空気を供給するビニールパイプ(山梨県北杜市)

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