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核開発のジレンマに陥った北朝鮮

北の「停戦協定白紙化」は国内を押さえる危機演出

2013年3月15日(金)

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 北朝鮮が5日、「休戦協定の白紙化」を宣言した。一方、米韓も最大級の軍事演習「キーリゾルブ」を11日から始めた。対抗して、北朝鮮も大規模演習を行う。――こうした状況を受けて、朝鮮半島は「一触即発の緊張状態」にある、との主張や分析がある。

 だが、不測の事態や偶発的な戦争が起きる可能性は、限りなくゼロに近い。北朝鮮には、軍事紛争を起こす力はない。北朝鮮は国内を引き締め、金正恩体制を強化するために「戦争の危機」を演出している。米国との対話作戦は、2次的な目的にすぎない。

 北朝鮮は、なぜ核開発を続けるのか。最大の理由は、石油がないうえ、通常兵器が劣化しているので、体制が崩壊しかねないからだ。北朝鮮は、石油を一滴も生産できない。中国やロシアからの輸入に頼っている。

 北朝鮮が軍事行動をするには、少なくとも年間で300万トンの軍事用の石油が必要だ。さらに、中国やロシアが無制限に石油を供給する保障がないと戦争はできない。湾岸戦争で多国籍軍は1000万トンを超える石油を使用したと言われる。

 ところが、北朝鮮が昨年輸入できたのは、中国からの原油50万トンと、ロシアや東南アジアから集めた20万トンの石油製品しかない。全て合わせて、わずか70万トンだ。このうち、軍事用に使えるガソリンや軽油、ジェット燃料は最大で40万トンでしかない。40万トンでは、演習もまともにできない。日本の自衛隊は、年間150万トンの石油を消費している。40万トンがいかに少ない量であるかわかるだろう。

米韓軍事演習を「口実」と捉える

 北朝鮮は1993年に「核拡散防止条約(NPT)」から脱退した際に、米韓軍事演習の中止も求めた。なぜ、北朝鮮は米韓演習にそれほど神経を使うのか。理由は簡単で、虎の子の「備蓄石油」を失うからだ。

 北朝鮮は、米韓軍事演習を「口実」にして、米韓軍が北朝鮮に攻め込むと考えている。だから、米韓の演習に対して、同じ規模の演習を行い対抗する。その結果、多量の石油を消費する。備蓄用の石油も使わざるをえず、北朝鮮の通常戦力は「無力化」してしまう。

 韓国軍と米軍は、北朝鮮軍の石油が不足している状況を理解している。だから、北朝鮮軍の石油を大量消費させる軍事演習を展開する。このため、米韓軍事演習が終わると、北朝鮮軍の行動が極端に低下する。戦闘機は飛ばず、戦車や軍用車も動かなくなる。米韓軍事演習が終わると、北朝鮮の軍事挑発の可能性は激減する。

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「核開発のジレンマに陥った北朝鮮」の著者

重村 智計

重村 智計(しげむら・としみつ)

東京通信大学教授 早大名誉教授 韓国同徳女子大客員教授

1945生まれ早大法卒。79年毎日新聞ソウル特派員、89年同ワシントン特派員。この間、韓国高麗大、米スタンフォード大留学。北朝鮮に傾斜する日本の朝鮮問題報道を変えた記者の一人。金芝河釈放、ベン・ジョンソンのドーピングなど多くの特ダネ報道。著書は「日韓友好の罪人たち」(風土デザイン研究所)など多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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