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先頭を走れ!「工学部2号館」

【建物編1】省エネビルの第一歩。機器・設備、全部ネット接続

2010年8月27日(金)

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 そんな松本工学部長が江崎教授に工学部2号館の省エネの相談をしたのは、江崎教授がある学術会議に呼ばれて行った講演を偶然聞いていたからである。その講演とは、「ITを使ってビル内にある機器をネットワーク化し統合的に管理すれば、省エネが図れる」というものだった。

 松本工学部長の一言に、江崎教授は答えた。「単なる学内の省エネ対策ではつまらない。産学連携で推進する研究開発プロジェクトとして取り組みたい」――。

ビルの「オープンシステム化」が不可欠

 江崎教授にはある考えがあった。ビルの省エネは、今後、大きなビジネスにつながる可能性を秘めている。しかし、そのためには、ビルの「オープンシステム化」が不可欠だ。

 ビルのオープンシステム化とは、照明器具やエアコンなどの空調機器、センサー、情報処理機器などビル内のありとあらゆる設備の制御に関する仕様を標準化し、ネットワークで相互接続できるようにしようというものだ。それにより、きめ細かい制御ができるようになり、ビル全体の省エネ化につながる。

 また、例えば、照明器具とエアコン、コンピューターが相互接続できるようになれば、照明器具のオンオフやエアコンの温度設定が、手元のパソコンからできるようになる。ソフトウエアを更新してパソコンの機能を向上させるように、交換なしでビル内の設備をバージョンアップできるかもしれない。加えて、ネットワークを介して制御できるので、遠隔操作も可能となる。日本国内の本社ビルから、海外の事業所のエアコンを制御するといったこともできるようになる。

 現在、ビルにおけるエネルギー消費を制御する仕組みは、「BEMS(ビルエネルギー管理システム)」と呼ばれており、グリーンITという観点から最も期待が寄せられているものの1つとなっている。

 しかし、残念ながら、思うように進んでいないのが現状だ。

公的資金は一切入っていない

 江崎教授は語る。「オープンシステム化すると、さまざまな企業が参入してくる可能性が高まるため、皆、どうしても嫌がってしまう。しかし、ビルのオープンシステム化は、今後、避けることができない」

 ビルをオープンシステム化し、機器同士を相互接続するには、企業間に存在する利害関係の壁を取っ払う必要がある。日本が今後、アジアを中心に大きな市場が見込まれているグリーンITビジネスにおいて、国際競争力を付け、世界規模で力強くビジネス展開をしていくには、さまざまな産業分野の企業や団体が同じテーブルにつき、一丸となって取り組まなければならない。そして、そのための旗振り役は、中立な立場にある大学が適任だ―。

 かくして、プロジェクトは始まった。

 江崎教授はプロジェクト発足当初から、30社の参加を狙っていた。そして、自らトップセールスをして回った。

 同プロジェクトは、参加組織から提供される費用だけでまかなっている。公的資金は一切入れていない。その方が、皆が必死になるので、より大きな成果が得られると、江崎教授は考えたからだ。

 現在のプロジェクトへの参加費は年間80万円だ。しかし、この2年間は年間500万円、300万円、100万円という3つの選択肢しか用意しなかった。2008年といえば、リーマンショックの直後。各企業や団体はきっと決死の覚悟だったに違いない。プロジェクトを率いる江崎教授としても、是が非でも成果を出す必要があった。しかし、結果的には、江崎教授の思惑通りとなった。

43億×43億×43億×43億

 「プロジェクトは、私の研究の延長線上でもある。ビルを管理・制御する機器のデータを、IPv6を使って相互接続するネットワークの構築に取り組んでいる」

デモをする江崎教授

 江崎教授は日本におけるインターネット普及の立役者であり、次世代の通信方式IPv6(インターネット・プロトコル・バージョン6)研究の第一人者である。

 現在、インターネット・プロトコル(通信規約)は32ビットで表すIPv4方式が主流だ。そのため、2の32乗の約43億個しかアドレスを付けられず、2011年にはアドレスが枯渇してしまう見通しだ。そこで、今後、導入される予定になっているのが、IPv6方式である。

 IPv6は128ビットで表すため、2の128乗、つまり43億×43億×43億×43億ものアドレスを取ることができる。ほとんど無限とも呼べる膨大な数だ。

 これにより、地球上に存在する様々なものにIPアドレスを付与し、ネットワークに接続することも可能になる。結果、これまでにはなかったような様々なことができるようになると考えられている。いわゆるユビキタス社会の本格到来である。中でも近年、特に期待されているのが、社会の仕組みの省エネ化だ。

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「先頭を走れ!「工学部2号館」」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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