世界鳥瞰

視界不良のドイツ政治

2018年11月8日(木)

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ドイツでは好景気にもかかわらず与党が地方選で大敗を続け、メルケル首相はCDU党首引退の意向を表明した。難民受け入れの決定で崩れたドイツ政治のバランスは、同首相が引退しても元には戻らないだろう。変わりつつある国際秩序の中、ドイツ国民が「今の好景気は長く続かない」と感じている点も関係している。

 「英国民がかつてこれほど幸せだったことはなかった」──1957年、英国首相だったハロルド・マクミラン氏のこの言葉を、多くの人々は間違って記憶している。当時、好景気だった英国について、同首相が誇らしげに語った発言の主語は、実は限定されていた。「率直に言わせてもらおう。ほとんどの英国民がかつてこれほど幸せだったことはなかった」が本来は正しい。

2000年からキリスト教民主同盟(CDU)の党首としてドイツ政治を支えてきたメルケル首相は、党首引退を表明した(写真=AFP/アフロ)

 しかも、その後に「一部の人間はあまりにも幸せすぎて、これが本当ではないのではと疑い始めている」という一文が続いていたのを覚えている者はほぼいない。この言葉は「この幸せはもう続かないのではないか」と言い換えてもいいだろう。

 幸せすぎるだけに、もう続かない。疑いに満ちた成功──。もし今、マクミラン氏が生きていれば、現在のドイツの趨勢をきっと、このように理解しただろう。

 筆者は先日、あるベテラン政治家が、ドイツがこれほど繁栄したことはかつてなかったとコメントするのを聞いた。それにもかかわらず、アンゲラ・メルケル首相率いる連立政権の支持率は低く、国民の間にはいら立ちが募り、政治はばらばらに分裂した。ドイツ国民は自分たちの幸福をなかなか認められなかったのだ。

 企業経営者の間からも同様のもがきが見えている。高い値段を付けられる高品質な製品が売りのドイツは、毎年巨額の経常黒字を生み出している。シュツットガルトなどの街を歩けば、そうした製品によってもたらされた富に圧倒される。だが企業のトップは、安全策を取る企業文化のせいで技術革新が進まず、リスクを取れないと不満を漏らす。過剰な規制の影響もある。技術の未来は機械学習やAI(人工知能)などデジタルの世界にある。これらの技術は遠からず米国と中国によって牛耳られるものとなるかもしれない。

日経ビジネス2018年11月12日号 130~131ページより

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