久保 俊介

久保 俊介

日経トップリーダー記者

ベンチャー最前線 写真プリントから温泉施設へ

万葉の湯、現像プロセスを湯の交換ノウハウに応用し成功

  • 2018年07月24日(火)

市場消滅という地殻変動が20年ほど前に起きたDPE(写真の現像・焼き付け・引き伸ばし)と呼ばれる写真のプリント市場。ピンチの中、DPE店チェーンは、どう対応して生き残ってきたのか。今回紹介する万葉倶楽部は、周囲の反対を押し切ってDPE事業とは畑違いの都市型温浴施設に進出。周到な準備をしたことで、着実に事業を拡大している。

日本ジャンボーとして集中ラボ方式を確立し、クリーニング店やタバコ店などの取次店を開拓。1991年には店頭(現ジャスダック)市場に株式を上場。96年9月期の売上高は約160億円、取次店は最大約6万店まで拡大した。写真は1960年代の日本ジャンボーの直営取次店

 全くの異業種に進出し、DPE事業の落ち込みをカバーした会社もある。都市型温浴施設「万葉の湯」を各地に9店舗展開する、万葉倶楽部(神奈川県小田原市)だ。

 会長の高橋弘は自ら育て上げたDPE事業に見切りを付け、約20年前に新規事業として温浴施設事業を開始。現在では、温浴事業がグループ全体の売り上げの8割を占めるまでに様変わりしている。

 高橋はDPE事業の草分け的存在だ。1960年に日本ジャンボーを設立。店頭で顧客から預かったフィルムを現像所に集めて一括処理する「集中ラボ方式」を他社に先駆けて確立した。写真事業に関係ないクリーニング店やタバコ店などを取次店として開拓する方法で業績を一気に伸ばした。

「最後はトップの覚悟があるかどうか」と語る高橋。本社には歴代のカメラとフィルムが飾ってある(写真:菊池一郎)

 だが、店頭で写真を現像できるミニラボ機の出現を見て、90年代半ばには「集中ラボ方式の事業展開では限界が来る」と分析。新規事業を模索し始めた。

自ら生んだ事業を見切る

 通常、新しい事業モデルを自ら確立して会社を発展させた創業者は、その成功体験にとらわれ、なかなか見切れないもの。しかし、高橋の場合、市場の変化の先を読み、体力のあるうちに次の一手を打つ冷静さがあった。

    著者プロフィール

    久保 俊介

    久保 俊介(くぼ・しゅんすけ)

    日経トップリーダー記者

    1999年早稲田大学第一文学部卒業後、日経BP社入社。日経ベンチャー(現日経トップリーダー)編集部で、中小企業の取材に携わる。2004年医療と介護の経営情報誌「日経ヘルスケア」に配属。2013年から日経トップリーダー編集部で、再び中小企業経営に関する記事を執筆。

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