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岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト
武蔵野大学 国際総合研究所 フェロー

岡部 直明

1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社に入社、東京本社編集局産業部、経済部記者、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹、コラムニストを歴任。早稲田大学大学院客員教授、明治大学国際総合研究所フェローをつとめる。2018年より現職。「ベーシック日本経済入門<第4版>」(日本経済新聞出版社)、「応酬 ─ 円ドルの政治力学」(同)などのほか以下の著書・編著がある。

◇主な著書
ドルへの挑戦 ─ Gゼロ時代の通貨興亡』(日本経済新聞出版社)
主役なき世界 ─ グローバル連鎖危機とさまよう日本』(日本経済新聞出版社)
EUは危機を超えられるか ─ 統合と分裂の相克』(編著、NTT出版)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

岡部直明「主役なき世界」を読む

リーマン・ショック10年(下)資本主義が危うい

2018年9月12日(水)

(写真=ロイター/アフロ)

 リーマン・ショック10年後の世界は、強権政治と独占経営によって、資本主義が揺らいでいる。トランプ米大統領による保護主義・排外主義と習近平中国国家主席による国家資本主義の「強権対立」は、米中間の覇権争いに発展した。

 デジタル革命を先導するアマゾンなど米国のIT(情報技術)5強は独占の弊害が目立ってきた。問題はそれが格差拡大とポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭によって、民主主義の危機に連鎖しているところにある。金融危機はいつ再燃してもおかしくないが、この複合危機の根はもっと深い。自由な市場と民主的な政治を前提にしてきた戦後の世界システムの危機である。

次はトランプショックか

 リーマン・ショックの後遺症がまず表れたのは2010年からのユーロ危機だった。PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)というありがたくない呼び名の国々が、危機に見舞われた。

 とりわけギリシャ危機は深刻だった。欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカ支援体制のもとで苦しい改革を進め、ようやく最近、危機から脱したが、成長力は乏しくまだ難題が残る。ポピュリスト政権下のイタリアには銀行不安がなおくすぶる。

ギリシャ危機は深刻だった。2014年4月1日、ユーロ圏財務相会合でギリシャ追加融資を承認。アテネでは、抗議する人々が議会に押し寄せた(写真=AP/アフロ)

 リーマン・ショックに対応した金融緩和から各国が出口に向かうのは当然だが、その余波も見逃がせない。先頭を行く米連邦準備理事会(FRB)の利上げで、対外債務を抱えた新興国からの資本流出が相次いでいる。とりわけアルゼンチンやトルコは大幅な通貨安に直面している。新興国危機が危機の火種になっている。

 しかし、次の金融危機が起きるとすれば、ユーロ圏や新興国発ではないだろう。やはり震源地は米国になるはずだ。それも今度はトランプショックの恐れがある。

貿易戦争に金融政策・為替介入

 リーマンショックの反省から、ボルカー元FRB議長を中心に金融規制「ボルカー・ルール」がまとめられた。しかし、トランプ大統領はこの金融規制の緩和を打ち出した。反ウォール街を売りにしていたはずなのに、ウォール街寄りを鮮明にしている。出口戦略に実績があった当時のイエレンFRB議長をあえて交代させたのは、大統領の金融規制緩和に抵抗したせいかもしれない。トランプ流の金融規制緩和は、金融資本主義の肥大化を加速する可能性がある。それは潜在的危機の温床になりかねない。

 もうひとつの危険は、パウエルFRB議長が進めている利上げ路線に、「低金利好き」のトランプ大統領が介入して、本来あるべき利上げが見送られてしまうことだ。パウエル議長が政治圧力に抵抗しきれないと、再びバブルの発生と崩壊につながりかねない。

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