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南雲 朋美(なぐも・ともみ)

地域コンサルタント

南雲 朋美

広島県生まれ。高校卒業後、外資系メーカーでマーケティングなどに従事。退社後、慶応義塾大学総合政策学部に進学。卒業後、星野リゾートに入社。広報・ブランディング担当を約8年間務め、温泉旅館「界」ブランドの立ち上げなどを行う。同社退職後も、外部委託として新規案件のプロデューサーを務める。2014年から現在の活動をスタート。慶応義塾大学と首都大学東京で非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

実践マーケティング×伝統工芸

有田焼、器が飽和市場ならどこで勝負?

2018年12月11日(火)

(前回はこちら)

約2万人の人口の有田町に毎年100万人以上訪れる陶器市

 有田焼の産地の心に触れた私は窯元、デザイナーと商品づくりを本格化させました。しかし、ある窯元では新しい型を買うなどの投資が難しい状況であり、お金をかけずに製品をアップデートする必要がありました。

 考えた末にたどり着いたのが、前提となっているターゲットを変えることです。

 この窯元では創業以来、ほぼ一貫して料理を盛りつける器を作ってきました。しかし、この市場は既に飽和状態であり、しかも少しずつ縮小しています。だからこそ、思い切ってこの前提をはずしてみたのです。

 浮かび上がったのが「縁起物」です。

 もちろん、焼き物で作った縁起物はこれまでにあります。しかし、有田では依然として焼き物の大半が料理を盛り付ける器であり、それ以外の製品が意外なくらい少ないのです。だからこそ、有田焼と縁起物という組み合わせにはチャンスがあると見込みました。

 縁起物へのチャレンジについて「ただの思い付きではないか」と思う人がいるかも知れません。しかし、実はそうではありません。

 洋食器はほとんどが丸い形ですが、和食器の多くはそうではありません。中には縁起が良い「扇型」や「瓢箪型」をしているものがあるし、描かれるのも「松」や「鶴」などおめでたいものがたくさんあります。だからそもそも、縁起物との相性はいいのです。

 磁器の歴史に詳しい窯元の経営者によると、これは磁器の歩んできた道のりと重なっているとのこと。すなわち、日本で磁器が誕生した時代の食料事情は必ずしもよいものではなかった、それでも、当時の職人は、食事は貧しくても、楽しい時間を過ごしてもらおうと器で縁起をかついだということです。こうした歩みと縁起物は重なるととらえました。

 縁起物を選んだのには別の理由もあります。料理を盛り付ける器の場合、ある程度の枚数がそろえば、購入の必然性はなくなります。それに比べると縁起物は、金運、縁結び、健康、長寿などさまざまな方向があり、シリーズで展開できる可能性があります。

 こうして方向を定めた上で、縁起物の第一弾は、この窯元がずっと大切にしてきた「右向きの鯛」の型を活用することにしました。

 知的財産権に明るいデザイナーが中心となって、特徴となる部分で意匠権を取得。型は大小様々16種類があり、代々伝わってきたストーリーも含めて伝えることによって、商品の魅力を高める発想です。

これまでのデザインの鯛の器

 色や模様は縁起物というコンセプトに合わせて見直すことにしました。その際、これまで和の要素が強く洋風の空間に合わない面があったのを改める、有田という地域性や窯元に備わっている伝統、歴史などを反映する、などの方向性を打ち出しました。

 ただし、それだけで商品づくりが完結するはずはなく、試行錯誤を繰り返しました。正直に言えば意図がしっかり伝わらないために、何度か険悪な雰囲気になったこともあります。それでもコンセプトづくりをしっかり進めたことで目指す方向は一致していたし、有田に拠点を移したことで、私もいろいろなことがわかるようになりました。お互いに「言いやすい間柄」になったことが製品作りにおいてプラスに働いたと思います。

 完成した「招福鯛シリーズ」は縁起物の置物として飾れるほか、アクセサリー入れやはし置きとしても使えるし、皿として料理を盛ることも可能です。

新たに生まれた「招福鯛シリーズ」(写真:梶謙製磁社)

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