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松浦 龍夫(まつうら・たつお)

日経ビジネス編集記者

松浦 龍夫

2002年同志社大学商学部を卒業、同年日経BP社入社。日経コンピュータや日経ニューメディアでIT・通信を担当し、2012年に日本経済新聞社へ出向。2015年4月から日経ビジネス記者。現在は電気・ガス、ガソリンなどエネルギー分野を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

記者の眼

黒字廃業する近江商人、継ぎませんか?

2018年11月21日(水)

 「黒字やのに、廃業する会社が地域で増えてるんやわ」――。先日、関西のある中小企業経営者に取材したときに出てきたコメントだ。その地域とは、「三方よし」の近江商人で有名な滋賀県東近江市。最近では、長く事業を営んできた日本有数の黒板メーカーが、業績は好調なのに会社をたたんでしまったと嘆く。

 事業継承の厳しさを裏付けるデータがある。中小企業庁の調査によると、2017年に廃業した企業の約半数が黒字廃業であり、その大半が社員50人未満の小規模事業者だった。「黒字廃業」を選択する企業は、正社員のなり手がいない人手不足、または後継ぎ不在のいずれかの事情に当てはまることが多いという。

 東京商工リサーチが10月に発表した調査によると、2018年1~9月の人手不足による倒産は299件と、過去最多のペースで増加していることがわかる。リクルートワークス研究所が19年卒を対象とした調査を見ると、300人未満の中小企業の大卒求人倍率は約10倍、つまり1人に10社が押し寄せるほどの採用難となっている。

 後継者不足についても深刻で、帝国データバンクが17年11月に発表した「後継者問題に関する企業の実態調査」によると、国内企業の3社に2社が「後継者がいない」と回答している。

「あとつぎさん」探します

 このような状況下で、中小企業が自力で後継ぎを探すことは困難を極める。社員が数人単位の組織では、安心して事業を任せられる人材が社内にいるとは限らないからだ。最近は事業承継を地元銀行やベンチャーキャピタルがサポートするケースもあるが、手間がかかる割に仲介料も高くはない地方の小さな企業の案件はなかなか支援されないという。

 「商売上手で知られる近江商人も人材難には勝てないのか……」と感じた取材から3カ月後、冒頭の経営者から「11月にみんなで東京に出て後継ぎを探すことにしたんや」と連絡が来た。

 イベントは東近江市が企画し、11月9、10日の2日間、東京駅そばの貸会議室で開催した。「黒字廃業」の危機に瀕している同市の企業8社が参加してブースを設け、個別相談に応じた。東近江市の担当者は「このように地方の経営者自らが上京して後継ぎを探すイベントは聞いたことがない」と話す。

 私も会場に足を運んでみると、各社のブースで経営者と後継ぎ希望者が真剣な面持ちで面談を行い、テレビや新聞社の取材も入るにぎわいを見せていることに驚いた。東近江市によると、2日間で42組50人が来場したという。市の担当者は、「目標の40人を大幅に上回った。告知をあまりしていないのに関心の高さに驚いた」と語る。

11月9日に開催された東近江市の後継ぎイベントの様子

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