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1億円を借りれば、「ダイソン」を作れる

ジェームズ・ダイソン氏が若手社会人や学生と対話

2018年5月25日(金)

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「オープンイノベーションがうまくいくなんて、私は聞いたことがない」

 英ダイソン創業者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏は、社外のリソースを活用してイノベーションを起こそうという発想に疑問を投げかけた。

 日経ビジネスは、新たなコードレス掃除機「ダイソン サイクロンV10」の発表にあわせて来日したダイソン氏と、学生や若手社会人(大企業に勤める若手会社員の有志団体One Japanに所属)との対話イベントを3月20日に実施。「イノベーションで社会課題解決へ(Solving the problems others ignore)」をテーマに、社会起業を目指す学生や新規事業の創出などを目指す若手社会人からの質問に、ダイソン氏が答えた。

 モデレーターはイノベーション研究の第一人者である、法政大学大学院教授・一橋大学特任教授の米倉誠一郎氏が務めた。

 ダイソン氏は対話イベントで、イノベーションにおける自身の哲学や組織運営の手法、専門家ではなく新卒のエンジニアの採用を重視する理由などを存分に語った。一方、学生や若手社会人は、ダイソン流のイノベーションに対する疑問を率直にぶつけると同時に、日々の活動で直面している悩みなどをダイソン氏に聞いた。

【お知らせ】
日経ビジネスは今後も、こうした読者参加型の企画を随時、実施していきます。
記事の最後に、日経ビジネスが新たに始めるプロジェクト「オープン編集会議」に参加するメンバーを公募しています。
ご応募、お待ちしております。

(本文中の年齢はイベント開催当時)

米倉誠一郎(法政大学大学院教授・一橋大学特任教授):サー・ジェームズ。今日は時間をいただきありがとうございます。製品発表会では、あなたの製品にかける情熱に大変感銘しました。3年ほど前にお会いした時、「マーケティングやビジネス戦略といったもので解決できる社会課題はほとんどない」とお話になっていたことが、とても印象に残っています。ジェームズは常に、科学と技術の重要性を強調していますが、昨今の世間の風潮をどう思いますか。特に、若い人は科学技術よりも、マーケティングとか金融とか、そういう分野に行きたがります。

ジェームズ・ダイソン(英ダイソン創業者・チーフエンジニア):その通りで、まさに最も重要な質問を投げかけてくれましたね。

 学校に通い始めた子供たちは当初、テクノロジーにとても興味を抱くものです。しかし、14歳ごろになると何らかの理由で、大学に進学しなければならないというプレッシャーにさらされてしまいます。そして残念なことに、エンジニアになるなとも言われるのです。もしエンジニアになったら工場で働く羽目になる、だからもっと尊敬される銀行家とか弁護士になれとね。

 これはものすごく残念なことです。なぜなら、技術を開発したり、エンジニアリングをしたり、デザインをしたり、製品を作ったりすること以上に、クリエイティブなことはないからです。

米倉:小さい頃は科学や実験などに興味を持っていたとしても、だんだんマーケティングをやりたいとか、銀行マンになりたいとか、思うようになる。でも、それじゃダメだということですね。

 それともう一つ、私が驚いたのは、掃除機に搭載されているモーターです。この150~200年も前に発明されたモーターでさえ、今もイノベーションを起こす余地がある。どうやって、そのイノベーションの余地を見つけるのですか。

ダイソン:それは実は簡単なことです。私たちはかつて、大きくて重いモーターを使っていました。しかも、あまり効率が良くなく、問題を抱えていたのです。

 私はモーターについて何も知りませんでした。そこで大学を出たばかりのエンジニアを集めた非常に若いチームをつくり、新しいモーターの技術を開発することにしたのです。新しいモーターを完成させるまでに、10年を費やしました。

 最初はそのモーターをハンドドライヤーに入れたんですよ。ハンドドライヤーはどちらかと言えば、大きかったですからね。掃除機に入れるには、モーターをより小型化する必要がありました。

 しかし、そうしたチャレンジは、我々にとってはいつものことです。

 例えば、私が自分の掃除機に使うためにサイクロン技術を開発したとき、試作機を毎日2つほど自分だけで作っていました。その数は5年間で5000個、正確には5127個にもなりました。それほど試作機を作って、やっと正しく動くようになったのです。

 そうしたことは、今でもやっています。もちろん、コンピューターを使った設計・デザインも役に立ちますが、今も膨大な数の試作機を作っています。技術の開発には、時間がかかるものなんですよ。

コメント3件コメント/レビュー

日本の銀行でこのようなベンチャー的な企業にお金を貸す(貸せる能力のある)銀行はありません。日本の銀行は社長個人資産を含めた土地などの不動産を担保にしない限り金は貸しませんから日本では無理な話ですね。(2018/05/28 08:13)

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「1億円を借りれば、「ダイソン」を作れる」の著者

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

日本の銀行でこのようなベンチャー的な企業にお金を貸す(貸せる能力のある)銀行はありません。日本の銀行は社長個人資産を含めた土地などの不動産を担保にしない限り金は貸しませんから日本では無理な話ですね。(2018/05/28 08:13)

イノベーションや発明という知的創造という分野は、通常企業の短期的なスパンで結果を出せという中じゃ出てこないものだと思います。
過去の偉人達だって、ダイソン氏のように常に自分の手で何かしているときに偶然見つけてみたり、あるときふと思いついた(に至るには、日々の相当な試行錯誤がある)というエピソードは沢山ある。集めて、さあ考えろ、いついつまでに何件目標な、でも他の仕事はいつも通りやれ、では出てくるわけがない。出てきたって大したことない。(2018/05/25 09:17)

この人はすごい。

なかなかこんな風にはできないし、こんな風には生きられない。本当に尊いことだと思う。少しでも長生きして、良い製品を世の中に生み出し続けてほしい。(2018/05/25 01:24)

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