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あの人の酒席に付き合うかどうかの判断基準

元アル中と下戸が語る、酒と依存とお仕事と【後】

2018年3月30日(金)

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(前編から読む

Y:『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』を読んで、下戸の私に面白かったというか、興味深かったのが、「アルコールは本来たいして面白くもない人間関係を演劇化する」という指摘なんです(P.116)。

小田嶋:Yさんは飲まないんでしたっけ。

Y:それなりに好きですが、量は全然いけません。そして、自分ひとりでバーに行く人の気持ちがよく分からなかったりします。

小田嶋:ああ、居ますね。

Y:お酒を飲むためにわざわざああいう空間が用意されているのはなぜなのか。そもそも独り酒というのがすごく苦手で、自意識が過剰なんでしょうけど、身の置きどころがなくなっちゃうんですね。しかもお酒に強くもないから、薄くなった水割りをいつまでも舐めているという。で「バーに行く人って何が楽しいんでしょう?」と。

小田嶋:バーに独りで行って独りで飲む人間というのは、ひとつ考えられるのはアルコールを摂取している人間ですよね。ガソリンを入れるみたいな。

Y:ええ、でも、だったら部屋で飲んでいても同じなわけですよね。わざわざバーで飲むというのは、もしかしたら「独り、お酒を飲んでいる自分」を演じるという、演劇的な楽しみがあるのかな? と、これを読んで思ったわけです。

小田嶋:外から見たら別にかっこよくもないけど(笑)。アルコール依存症ではないとしたら、酒を自宅ではなく、外で飲む意味って、カウンターの内側に居る人、見知らぬお客さんも含めて、やっぱり他人との関係の中にあるんですよ。

Y:何らかの関係性、コミュニティーと、お酒は切り離せない。

小田嶋:ええ。だから、酒を含んだコミュニティーに依存している人たちというのは、コミュニティー依存でもあるわけですよ。だけど、酒そのものに対して依存している人間は、独りであれ5人であれ10人であれ、あるいは旅行中であれ勤務中であれ、酒がないといけないという人たちです。

 アルコールそのものへの依存ではない大半の人は、独りで飲んでいるようで、マスターとの会話とか、他の人のやりとりが目当てだったりすると思うんだけどね。例えば「酔ったから言いますけど」とか、普段とは違う“酔っ払った自分”というキャラを作ることができるじゃないですか。そうすると、バカバカしい会話でも平気で入っていけたりする。仕事上の言いにくい話もできたりする。

Y:うーん。自分は酒が弱いんで、酔うこと自体を警戒するから、「酔っ払ったから言いますけれど」という便利なキャラになれないんですよね。仕事の飲みは、小田嶋さんはこなしていたほうですか。

「飲めないと仕事にならない」

小田嶋:1985年くらいかな、会社を辞めて、TBSラジオのアルバイトをしながらライター仕事もやって、「放送作家になろうか、どうしようか」、と思っていたころは、TBSの人とやたらとタダ酒を飲みまくって、お酒を覚えたという部分はあるといえばあります。

Y:なるほど。バブル前夜の1980年代。

小田嶋:そう。放送局周辺なんて打ち合わせと言っちゃえば伝票が切れちゃうわけだから、してみると放送作家との打ち合わせというのは、ディレクターにとっては一番飲む材料になるわけで、だから私はよく何だかんだと彼らと飲み歩いていたわけですよ。

 でもそのころの酒はまだまだ楽しい酒ではあったんですけどね。いよいよやばくなったのは独りで飲むようになってからの話なんだけど、でも飲む機会があれば必ず逃さず飲むというふうになっていったのは、そのタダ酒の機会と、しかもそのタダ酒が仕事につながっていたわけですよ。

Y:はー。

小田嶋:今の出版界はそうでもないけど、昔は「編集者は飲めないと仕事にならないよ」と言われていた時代があったでしょう。編集者もそうだし、放送作家、ディレクター周辺も、仕事というとだいたい飲みに行って、そこでやんややんややっているうちに話がまとまって、よし、それじゃこの線で行きましょう、えっと、どの線だったっけみたいなやつですよ(笑)。

Y:ああ。でも、そういう場がないとコミュニケーションが取れない時代でもありましたね。

小田嶋:そう。当時は携帯もメールもなかったから、編集者と書き手というのは、大作家じゃなくても、単なるパシリのライターみたいな俺でも、「とにかく会って密に話をする」という習慣だったんですよ。原稿を渡す、渡さないもそうだし、直す、直さないとかタイトルをどうしようかとかということをいちいちやっていたんですよ。それぐらい仕事を、まあ、つまらない手間をかけてやっていたわけですよ。

コメント7件コメント/レビュー

コメントを読んでると、この人ちゃんとインタビュー読んだのかしら、と思われるコメントもありましたけど、裏を返せば本編を差し置いてまでも訴えたい自分の酒に対する信念、主張があるということですよね。酒は呑んでも呑まなくてもヒトを雄弁にする。
酒席の貸し借りの話がありましたが、自分は父と子くらいに離れた方にかわいがられた時に「俺も昔、先輩に奢られた事を君にやってるだけ。君も後輩が出来たらやってあげれば良い。俺に借りを返す必要はない」と言われて気が楽になった経験があります。参考までに。(2018/04/01 09:28)

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「あの人の酒席に付き合うかどうかの判断基準」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

コメントを読んでると、この人ちゃんとインタビュー読んだのかしら、と思われるコメントもありましたけど、裏を返せば本編を差し置いてまでも訴えたい自分の酒に対する信念、主張があるということですよね。酒は呑んでも呑まなくてもヒトを雄弁にする。
酒席の貸し借りの話がありましたが、自分は父と子くらいに離れた方にかわいがられた時に「俺も昔、先輩に奢られた事を君にやってるだけ。君も後輩が出来たらやってあげれば良い。俺に借りを返す必要はない」と言われて気が楽になった経験があります。参考までに。(2018/04/01 09:28)

安倍政権が誕生して以降、オダジマさんの文章からすっかり遠ざかっていましたが、
(だってつまんないんだもん)
10~20年前ぐらいの、自分が良く読んでた頃の(自分の好きな)オダジマさんの感じが
良く出ていてよかったです。

安倍政権とゴシップが絡まないオダジマさんの文章はとても良いですね。
ホント、こういうの、たまにでいいからのやってくださいよ。
一般的に答えの出にくい人生の諸問題について、あーでもないこーでもないと
一切時事ネタを絡ませずに書いてもらいたいです。
オダジマさんの超絶屁理屈思考と亜空間レトリックを純粋に楽しめるので。

Y氏との絡みもいいですね。
こういうクセの強い人にぶつけるのに最適な編集者だと思います。(2018/03/31 16:35)

>飲み会に出なかったので「あいつ人嫌いだ」くらいに言われましたからね。お茶なら喜んで付き合うのに。

大いに共感しました。私も常々「飲み会やだな~、お茶会してスイーツじゃ駄目なのか」と入社以来思っていました。Y氏より年嵩の男子ですが(笑)。(2018/03/30 16:26)

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