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“空振り三振”した部下に贈る言葉

ライトノベル累計6000万部の編集者、ストレートエッジ 三木一馬社長・前編

2016年5月9日(月)

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三木:仰る通りでして、みんなの趣味の変化がもう本当に早くて、イラストのトレンドについても同様ですね。たとえば半年前に有効的だった手段が、今はもう全然使えなかったりとか、結構肌で感じるところです。

 昔なら、カバーイラストはヒロインを1人立たせて、その背景を白くしてキャラ重視で印象を高めるイラストが流行ったんですけれども、今はすこし変わっていますね。どちらかといえば、作品の「背景」をちゃんと伝える、世界観を描いたものが多くなっています。作品の内容以上にイラストについては、はやり廃りがすごくあると感じていて、なので、常に「半年先にみんなを魅了するものは何だろう」ということに気をつけています。

――へえ! でもライトノベルは3カ月前後で同じシリーズの新刊が出ますから、続いていくと、その半年を何度も何度もまたぎますよね。

三木:だいたい3~4巻くらいまでいくと、そのシリーズがヒットしているか、軌道にのっているかというのがわかってきます。もうそれ以降は、「イラストを一目みて買う」という層はあまり増えませんから、カバーイラストは作品性を意識した、「遊びが入った構図」を考えていきますね。僕の担当作で、「このカバーは冒険してるな」と感じたなら、たいてい5巻以降だと思います(笑)。やはり3巻目までは、内容はもちろん頑張りますが、「イラストの力で、新規の人を引っ張ろう」と考えています。

3巻目の壁、そして過当競争の壁

――3巻目がひとつの壁になるんですか。

三木:あくまで僕の感覚ですが、巻数で言うとそのぐらいですね。3巻目が出るのはたいてい、1巻目が出てから8カ月から12カ月目ぐらいなんですよ。そこを耐えきれるということは、1年を乗り切ったということですから、レーベルを知っている人のほとんどはそのシリーズを認知し始めます。

――確かに。「4」まで来ると、「おっ、ちょっと読んでみようかな」と思うかもしれないですね。

三木:「これ、今、面白いらしいよ」と言われたら、1巻から買って追い付こうと思ってくれる人もいるだろうし、その辺がひとつのターニングポイントなのかなと。

――ところで、ライトノベルの業界は、出版点数増、売り上げ減という、日本企業の陥っているスパイラルに嵌まっているとうかがいました。

三木:はい、新規参入によって業界全体が活性化しているならいいんですが、全体が疲弊していっているような状態ですので、もっともっと盛り上げていきたいと心から思っています。

――電撃文庫も、シェアはナンバーワンながら、前年比ではマイナスになったと。

三木:基本的には、電子書籍の売上げ分もあるので、数字そのままのマイナスではないのですが、どちらにせよ、もっともっと盛り上げていかなければ! と思ってます。

――数年前、三木さんの前任の方にお伺いしたとき、「うちが強いのは、中堅クラスのシリーズのボリュームがものすごく分厚いこと」とおっしゃっていたのが、印象に残っています。今、状況は変わっているようですが。

三木:そうです。5~6年前に電撃文庫の中核を支えていた作家さん達と読者さんが成熟されて、上のゾーンにいってしまっています。本当は、その開いた場所に、どんどん新人さんがのぼってきてほしいんですが、今は計算通りにはいっていません。そこを育てるべく頑張っています。

 いわゆるライトノベル業界は今、本当に深刻な状況だと思っています。この状況打開こそが自分の、そして業界にいる編集者全員の至上命題だと思います。

――コンテンツが増えて、業界全体が縮むのは、なぜなんでしょう。

物理学科出身でも「ここにいていい」

三木:これは僕の個人的な意見ですが、例えばスマホゲームですと、「クリック3回以内に、ユーザーを褒めなければならない」という噂があるんです。つまり、それくらい、腰を据えてじっとそのコンテンツに向き合ってくれる方が少なくなってきているんです。言い換えると読者の皆様が「選ぶ努力」をもうしてくださらないんですよね、与えられるランキングを追い掛ける傾向が、より顕著になっていると思うんです。

――選ぶのが大変だから、「売れている本がより売れる」状況ですね。過当競争、売れ線の類似品の激増、最近、どこの市場でも見られる傾向かもしれません。ところで三木さんは、いわゆる“ライトノベル”の編集担当として累計6000万部を世に出したということですが、ライトノベルをやりたくてメディアワークス(現KADOKAWA)に入られたわけじゃないというのも、本(『面白ければなんでもあり』)を読ませていただいて、意外でした。

三木:そうですね、すみません、物理学科出身で、ライトノベルのことはまったく知らなかったので。

――物理学科でしたか。

三木:何も知らずに入ってきて、ふてぶてしかったかもしれませんが(笑)、振り返ってみますと、まあ、自分は扱いづらい社員だったろうなとは思います。

――どんなところが。

三木:前編集長の回顧録から引用するなら、やることはやるんですけど嫌そうにしているのが露骨に見えるんだそうです。「三木くん、●●先生の『××』シリーズを読むのがそんなに嫌?」「ええっ、嫌じゃないです!」みたいなやりとりが結構ありました。

――ああ、それはいけませんね…。

三木:あ、本当は嫌じゃないんですよ!? でもそう見えてしまうところは、「ふてぶてしかった」のだと思います。まぁたしかに、愛想いい見た目はしていませんので……。

コメント3件コメント/レビュー

ラノベの編集に限らない、本質的な言葉にあふれている。
「全力を尽くした上での失敗から人は成長する」「ただの努力が成功に結びつくわけではない」
いい意味で裏切られました。(2016/05/11 23:52)

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「“空振り三振”した部下に贈る言葉」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ラノベの編集に限らない、本質的な言葉にあふれている。
「全力を尽くした上での失敗から人は成長する」「ただの努力が成功に結びつくわけではない」
いい意味で裏切られました。(2016/05/11 23:52)

三木一馬さんの名前を日経ビジネスで読む事になろうとは…いいぞ、もっとやれ!(2016/05/09 10:25)

NBOでライトノベルの話とは!!と思ったらYさんでしたか(笑)
完全に色物と化していますね(褒め言葉です)
私が中高生の頃は、フォーチュンクエストやロードス島戦記など、云わばラノベの走りを読み漁ったものですが、最近のモノにはトンと疎くなっていました。
たまに広告などで目にすると、「タイトルが長くなってるなぁ」、とか「ジャケ買い狙いなのか」などと思っていましたが、裏側には編集者の奮闘があったのですね。
ラノベも少子高齢化で読者層が減る一方、コンテンツとしての消費が早くなり、その寿命も短くなっている気もしますが、良いものは良いと認められるハズです。本屋などに立ち寄った時にお勧めの一冊でも手に取ってみようかと思いました。
独り言ですが、裏側の人間にスポットを丁寧にあててくださるY氏に、GW明けのダラけた雰囲気を一喝してもらった気がします・・・気合を入れて打席に立ってきましょう!(2016/05/09 09:56)

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