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今の経営者はなぜ「月」の夢しか抱けないのか

大塚英志氏が語るセゾングループと堤清二(前編)

  • 日経ビジネス編集部

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2018年10月23日(火)

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 無印良品、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、ロフト、そして外食チェーンの吉野家――。堤清二氏が一代でつくり上げた「セゾングループ」という企業集団を構成していたこれらの企業は、今なお色あせることはない。

 日本人の生活意識や買い物スタイルが大きな転換期を迎える今、改めて堤氏とセゾングループがかつて目指していた地平や、彼らが放っていた独特のエネルギーを知ることは、未来の日本と生活のあり方を考える上で、大きなヒントとなるはずだ。そんな思いを込めて2018年9月に発売されたのが『セゾン 堤清二が見た未来』だ。

 本連載では、堤氏と彼の生み出したセゾングループが、日本の小売業、サービス業、情報産業、さらには幅広い文化活動に与えた影響について、当時を知る歴史の「証人」たちに語ってもらう。

 連載第5回目に登場するのは、国際日本文化研究センター教授の大塚英志氏。堤清二氏は経営者でありながら、社会の未来を予見し、消費や生活のあり方を変えようとした。堤氏を支えたのはどんな思想だったのか。大塚英志氏に聞いた(今回はその前編)。

国際日本文化研究センター教授の大塚英志氏(写真/的野弘路)

1980年代の消費におけるセゾングループは、どのような位置付けだったのでしょうか。

大塚英志氏(以下、大塚):当時のセゾングループはよくも悪くも、(大量消費社会では商品やサービスの質や実用的な価値よりも、ブランドなどの記号的な価値が重視されるという)ボードリヤールの文化記号論との整合性が高すぎました。そのことに対する共感と違和感が、僕の中には一貫してありました。

 僕は西武新宿線の沿線で育ちました。西友があって、西武鉄道があってという、堤兄弟のつくった環境で育った戦後生まれの子供でした。

 1980年代の初頭、大学の4年間だけ筑波に行って戻ってきた時、東京の風景ががらりと変わっていて驚いた記憶があります。その困惑が、僕が消費社会論を書くきっかけにもなりました。

 僕の学生時代に流行っていたのが、構造主義的な文化記号論です。(文化人類学者である)山口昌男の記号論から端を発した、のちの「ニューアカ (ニューアカデミズム)」のルーツになっていくものです。筑波で本の中で夢中になったその理屈が、東京に戻ってくると妙にリアルにそこにある。そう感じましたね。

消費が街を大きく変えたわけですね。

大塚:僕が筑波にいた大学生時代、同じ年代で、かつて西武線沿線の小学校に通ったはずの田中康夫は、『なんとなく、クリスタル』で文芸賞をとりました。小説の中には、僕の知っている場所もたくさん出てきました。長野から東京に出た田中康夫と、ずっとそこで育った僕では、東京の見え方がずいぶん違うのだな、と筑波で思った記憶があります。

 でも大学卒業後に東京に戻ってみると「なるほど、本にあるような東京がもう一つあるのか」と感じました。

 西武線沿線は、戦後の日本がつくり上げた1億総中流化の現場です。

 僕の父親は満州からの引き上げ者で、結構貧しかった。あの頃は小学校の家庭調査で「あなたのうちは上流か中流か下流か」と聞いていました。それで大体、うちの母親は「中の下」と答えていて、それでも見栄を張っていると僕は思っていました。

 それが僕が高校生になった頃には、母親が「中の中」と書いたことがあったんです。思えばそれが、うちのような家庭にまで中流幻想が及んだ瞬間だったのです。

コメント14件コメント/レビュー

文学の重要性、想像力を勉強して磨くべきである、など、もっと普及して欲しい考えです。現代人は教養の大切さを知らない。

困ったことに、こういう話は、分かる人には分かるが、分かって欲しい人には分からない、ということになっています。もっと説得力のある説明は出来ないものだろうか、と自分でも考えていますが、良い考えは見つかりません。(2018/10/24 17:20)

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いただいたコメント

文学の重要性、想像力を勉強して磨くべきである、など、もっと普及して欲しい考えです。現代人は教養の大切さを知らない。

困ったことに、こういう話は、分かる人には分かるが、分かって欲しい人には分からない、ということになっています。もっと説得力のある説明は出来ないものだろうか、と自分でも考えていますが、良い考えは見つかりません。(2018/10/24 17:20)

> 「普通選挙で正しい判断をできるような価値基準を自分で学んでいける
>『個人』を大量につくらないと、この国では近代国家を実現できない」

これはどの国でも同じですよね。

「. . . を自分で学んでいける」個人が大多数を占めなければ民主主義は機能しないのですが、どの国も成功していません。アメリカは「個人」の国ですが、「 . . . を自分で学んでいける」人を大量に作ることは出来ていないので、ああいうことになってしまっています。(2018/10/24 16:53)

中国と左翼、リベラルと左翼の混同など、現政権が支持されるのもさもありなんという無教養ぶりをさらけ出しているコメントばかりです。アメリカですら資本論の観点が再評価されようとしているのに。(2018/10/24 12:45)

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